【ヴォイストレーナーインタビュー】パリなかやま(平成流し組合 代表/東京)

取材・文:藤井 徹 撮影:ヨシダホヅミ
取材協力:でんらく(恵比寿横丁)

Vocal Magazine Webでは、全国各地の優秀なヴォイストレーナーさんを講師に迎え、2022年より「歌スク」というオンラインレッスンのサービスを展開してきました。残念ながら「歌スク」のレッスンサービスは2024年3月で終了となりますが、これまで同様にVocal Magazine Web誌上で歌や発声のノウハウを教えていただける先生として、さまざまな形でご協力いただく予定です。

読者の皆さんの中にも「歌を習いたい」、「声を良くしたい」とスクールを探している方は多いと思います。その際に、ぜひ「歌スク」の先生の素晴らしさを知っていただきたいと思い、各先生のインタビューやプロフィールを掲載させていただきます。読むだけでも役に立ちますし、トレーナー選びの参考にもお役立てください。

今回登場いただくのは、平成流し組合の代表を務め、レパートリー2,000曲以上を誇る現役「流し」としても活躍中の、パリなかやま先生です。

講師プロフィール

パリなかやま

平成流し組合 代表

パリなかやま_01

歌謡曲からJ-POPまでレパートリーは2,000曲超! 平成流し組合の代表を務める「歌唱のプロ」からその極意を学べるチャンス!

中3でX JAPANのコピーバンドを組んで音楽活動を開始。その後、ギターの弾き語りへ移行して70年代ロックや日本のシティポップなどに傾倒していく。ホテルマンや営業マンとして働きながら、28歳の時にユニット“コーヒーカラー”でメジャーデビュー。2008年に東京・亀戸横丁でギター流しを初体験。翌年より恵比寿横丁で本格参入を果たし、2014年に「平成流し組合」を設立して代表を務める。レパートリーは昭和から平成にかけての歌謡曲・演歌からJ-POP、洋楽まで含め2,000曲ほど。同時にヴォイストレーニングの研究にも余念がなく、勉強会などにも積極的に参加している。

ジャンルJ-POP、ロック、R&B、演歌、洋楽、クラシック、歌謡曲
好きなアーティストスピッツ、安全地帯、井上陽水、スティーヴィー・ワンダー、宇多田ヒカル、松任谷由実、山下達郎、アンドレア・ボチェッリ、エディット・ピアフ、ちあきなおみ
趣味読書、大相撲観戦、エスニック料理探訪、猫じゃらし

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講師からのメッセージ

 あなたにとって歌はカンタンですか。チカラも入れずヒョイと歌えてしまう人がいます。そこには大きく2つ要素があります。「自在に声が出る」ことと「自在に音楽を奏でる」ことです。楽器と音楽です。これを自分の身体だけで行ないます。歌は「2イン1」なのです。
 音楽はアナタの好みの表現で作りあげるものだと思います。ですから当ボイトレは、第一段階の「声を自在にする」を声の楽器化を専門にします。身体で覚えるコツの世界です。ミックスヴォイス、ベルティング、クラシック発声、すべて兼ねられる発声のヒントを、たくさん用意してお待ちしています。


\「先生に習いたい!」とご興味を持った方へ/


講師インタビュー

流しは楽しいし、お金にもなる。さらに修行にもなる。

──音楽、歌を始めたきっかけは?

パリなかやま 中3のときにクラスメイトと「バンドやろうぜ」みたいなことを言い合って始めました。当時はX JAPANが人気で、みんなまず「ギターとドラムをやりたい」と。で、ヴォーカルTOSHIさんのところが空いてたんで、私がやることになった感じでしたね。バンドはロックから入ったんですけども、そこからブルースとかソウルミュージックとかいろいろ掘り下げていって。あとは日本の古い音楽っていうんですかね、シティポップスとか70年代ロックなんかもすごく好きで聴くようになりました。そのうち弾き語りで自分の曲を発表して、デモテープをレコード会社に送ったりライブハウスに出たりしながら、インディーズで活動していったって感じですかね。

──メジャーデビューされたのは、おいくつぐらいですか?

パリ 28歳のときですね。Coffee Colorっていうユニットでした。僕がヴォーカルで、ピアニストの女性と2人組ですね。

──パリさんは音楽活動と並行して、ホテルマンのお仕事もされていたそうですね。

パリ はい。メジャーデビューをする前の20代はいろんな仕事してて、ホテルマンもやりましたね。あとはフルタイムの正社員で営業職をやったり。ただ、メジャーデビューして5年くらいは、そのお給料とか印税とかいろんなもので生きていたんですけども、ヒットが連発していかないと契約が続かないわけですよね。先細りになっていく予感はかなりしてて。だから焦って曲を出すわけなんですけど、でもやっぱり全体にCDも売れなくなっていき、レコード会社としても掛けられる予算が減ったりもする。社員の人がどんどんいなくなっちゃったりするのを見て、これは非常に将来が危ういなと。どうしようかと思ってた時に、たまたま亀戸の酒場から「流しを探してる」という話が回り回って僕のところに来まして。まあ、流しってものはよくわかってなかったんですけども、トライしてみようと2008年に流しを初体験することになったんですね。

──紹介していただいたお店に行って?

パリ 話を持ってきた音楽業界の先輩が作曲家の人なんですけど、その人と2人組で流しデビューですね。そのときは歌うだけ。その人が伴奏してくれる形で、見よう見まねで流しユニットをやったって感じですね。

──そこから流しの魅力にはまっていったんですか?

パリ そうですね。まずやっていて非常に楽しいし、お金にもなる。さらに修行にもなるしということで気に入ってやっていたんですけども、珍しいもので、いろんな酒場から誘いが来るんですよね。「こっちでもやってほしい」とか。そういう時に身体ひとつなんで行けないから、仲間の音楽家で興味ありそうな人に「ちょっとやってみない?」と誘って。実際に僕のやってる様子を見に来てもらって少しずつ仲間が増えてきたんですよね。ふたり、3人、4人になってきて。そんな感じで現場をシェアする形でやってたんですけども、何か現場を巡って揉め事みたいなことかが起こるようになって……。「ここは俺の場所だ」とか。みんな普通に棚ぼたでもらっただけの場所なんだけど、そういうことが起こり始めたんで、本格的に管理しようということで、2014年に「平成流し組合」っていうグループを作り、いろいろルールも決めました。

──今はどのぐらいの流しの方が在籍しているんですか?

パリ 今は63人になっています。あらかじめ提携している横丁とか酒場とか、その街ごとで10店舗とか20店舗が固まってて、そこを回らせてもらうという形ですね。

──平成流し組合の代表として、いろんなメディアに出たり本も出版されたりしていく中で、流しになりたいという希望者は増えてきていますか?

パリ そうですね、増えてますよね。どんどん蓄積してるというか。今いるメンバーがそれぞれの町で流しをやってることで、それを見たお客さんで入ってくる人もいたりします。それから、それぞれの流しの人間関係の中でやりたい人が出てくるっていうこともありますし。だから、必ずしも僕がメディアに出ることだけではなくて広がっているなと思いますね。流しは老若男女なんですよ。若い人は20代前半で、上は還暦を過ぎています。流し歴は一番長い人で10年ぐらいやってますね。

自分に内向きで歌うか、外向きで歌うかで声が激変する。

──パリさんご自身はトレーナーをされていたわけではないけれど、いろんなところでトレーニングを受けて研究されてきたそうですね。

パリ CDを作ってメジャーデビューするときに、僕は特別恵まれたシンガーではなかったので、「まず君はボイトレ行かないとダメだ」と言われて、初めて行ったんです。それまでヴォイストレーニングってものがあるのかっていうことも知らなかったですから。そうして習っていくうちに、「こんなに効率の良いやり方があるんだ。秘密があるんだ」と。いわゆる最初っから歌える天才じゃなくても歌が上達していくステップがあるんだなってことは、知って驚きのことでしたね。それで少しレコード会社とか事務所からも「良くなってきた」とか、おだてられながらCD出していったわけなんですけど、その中で自分でも「(ボイトレは)面白いな、興味深いな」と思ったんです。まあ、流しになってからっていうのは、今度マイクがない生音環境なんで、やっぱり普通にレコーディングとかライブとかするだけのヴォイストレーニングでは何か足りないなっていうことを感じて、そこからまたいろんなところへ習いに行ったりして、勉強していった感じですね。

──ボイトレを始めてからの発声の師匠というか、この発声が自分のベースとなっているものは?

パリ 今は、一番古いベルカント唱法っていうのがあって、100年ぐらい前にイタリアでみんなが使っていたメソッドと言われてますけど、そういうタイプのやつですかね。

──それは、どこが自分としては感銘を受けたんでしょうか?

パリ 昔のベルカントっていうのは、身体に力を入れなくて、意識とかをけっこう使うんですよね。集中力とか幸せな気持ちとか、オープンマインドな感じっていうんですかね。だから言葉になかなかならない部分なんだけども、それが実は肝で。日本人はすごく研究熱心で真面目に考える人が多いから、身体の理屈、筋肉の理屈、呼吸の仕組みとか、すごくシステマチックに考えて追求しちゃうんです。そうすると自分を見る、確認するということが起こって、なかなか「表現する」っていう感じになっていかないんですよね。でも、そここそが問題というか、古いベルカントで一番大事にしてるところで、「気にせずやれよ」っていうところがミソなんです。だから、メソッドっていうか、もう簡単に言えば、それを大っぴらにできればもう9割がた完成っていうことなんですよね。自分に内向きで歌うか、外向きで歌うかっていう違いなんですけど。それだけですごく声が激変しちゃうという事実を目の当たりにして、自分も体験してですね、これは簡単だし、皆さんに教える意味もあるなあと思いましたね。

──パリさんは発声の勉強会があると、いろんなところに参加されているそうですね。

パリ ヴォイストレーニングって、いろいろ用語があって、アメリカ的な用語では「チェストヴォイス」とか「ヘッドヴォイス」とか言うけど、日本語で言えばそれは「胸声」とか「頭声」とか、「裏声」とか言うわけです。これがイタリアに行くとまた何か違う呼び方であったりするんですけど、だから、それぞれの用語が何を指してんのっていうこととかを答え合わせしていくのはけっこう面白いんですよね、単純に(笑)。「ハリウッド式というものが、一体イタリアのやり方で言うと、どういうことに当たるのか?」とかね。それを統合していくのが面白いなっていう形で勉強してますね。

──これとこれは実は同じことを訴えてるんじゃないかと?

パリ そうですね。また「あ、このメソッドの、これが抜けたやつが、これなんだ」とか。そういう足し引き? 「これを重視しているのがこれなんだ」とかね。重視しているポイントが違っていたり、その結果、どういうみんなが歌い方になってるのかという意味で、メソッドの完成形である歌手の歌を聴くと、さらに先生の教えたいことがわかったりするんですよね。

心をオープンに楽しく歌うってことは間違いなく大事なこと。

──レッスンをしていくうえでの指導の基本姿勢は?

パリ まずは、その生徒さんが望む理想や希望をよく知って、その人が「今どういうふうに歌うのか」、「どういうことをやりたくて何に失敗してるのか」。そういうことをしっかり見て、そこに必要なノウハウを毎回授けられればなと思いますよね。

──そのために、今までいろんなところで得た知識とか経験が活きる?

パリ そうですね。だから最初に理想を聞くっていうことは大事で、それが僕の経験したことのない理想的なモデル、お手本だったとしたら、たぶん教えられないんですよ。それが僕の知ってる範疇のものであるってことは大事ですよね。そうじゃないと、お断りすることになっちゃいますから。

──なるほど。ちなみに教える、人に伝えるということで、一番大切にしていることは?

パリ その人の心情をよく聞くってことですね。何を今考えて、やって……結果どうなのかっていうことですね。それをよく聞くってことは大事にしてますね。

──得意なジャンルとか、生徒さんの年齢とか性別とかは? どんな人だったらパリさんと合いそうですか?

パリ どんな人でも合わせようとは思うんですけど、いろいろボイトレをやったりもしていて、何か自分の可能性をもっと求めてる、信じてる人? そういう方にいいかなと思ってますね。

──それは年齢問わず?

パリ はい。筋肉を使ってどうのこうのとか、姿勢が伸びてないとダメとか、そういう方法では全然ないので、まあ年齢は関係ないですよね。例えばイタリアでね、本当に90歳を超えてものすごい歌手っていうのもいたりもしますし、やっぱりそれができるっていうのは身体の自然な部分を使ってやってるものなんで、そういうやり方をお伝えしたいなと思ってます。

──こんな悩みを抱えているとか、こんな生徒さんの要望に応えるレッスンをしますというところは?

パリ 例えば何かひとつのものを習ってきたとか、習ったことがあるんだけど、何かうまくいかなかったとかね。僕もいろいろなものを巡ってきたので、そういう方には特に良い解決策がきっとあるんじゃないかなと思います。

──「流しになりたい」という人がいた場合、どういうトレーニングを?

パリ 僕が流しになってからのボイトレって、流しになる前のボイトレとちょっと違って、やっぱり生声がちゃんと響く、届くようなトレーニングなんですよね。ですから、まず流しになりたい人は、ベルカントであり、ベルティングみたいなものをやっていただくのがいいと思います。生声だけど「がなる」わけではなくて、うるさくない生声のボリュームというものを体得すると、流しでも「売れる」というか、いい感じでチップも出てきます(笑)。

──ありがとうございます。それでは最後に読者の皆さんへメッセージをください。

パリ はい。まずね、心をオープンに楽しく歌うってことは間違いなく大事なことですから、そこにフォーカスして、気持ちよくやっていきましょう。私と一緒に、ぜひレッスン、Come Here!


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