【アカペラ】アカペラ発声のコツ、ボイストレーナーに聞いてみました!(講師:伊藤俊輔)

「どうしたらアカペラがうまくなるんだろう?」と日々悩むアカペラーの皆さん、こんにちは。ハモリの練習も大事ですが、基本はやはり「歌」なので、個々の「発声」そのものを見直すことで、グッとバンドがレベルアップするんです。

今回は、京都アカペラサークルCrazyClefのOBで、2022年から40以上の大学サークルに無償で発声相談会を行なってきたボイストレーナーの伊藤俊輔先生に、代表的な学生アカペラーの悩みに答えてもらいました。

『アカペラスタイル』主催のコンテストイベント、『Acappella Style Challenge 2023』WEST STAGE(2024年1月13日@KOBE BOT HALL)の審査員も務めていただく伊藤先生へのインタビューを通して、発声のスキルアップを目指してみましょう。

※本記事は『アカペラスタイル』からの転載となります。

やっぱり声の響きが豊かな人がハモると、ものすごく綺麗なハーモニーが生まれるんですよ。

無理やり高い声を出そうとして、何度も喉を壊してしまって……

──伊藤先生はアカペラ出身のボイストレーナーということで、まずはアカペラを始めたきっかけについて聞かせてください。

伊藤 初めてアカペラに触れたのは高校2年生のとき(2000年)で、合唱部の友人からゴスペラーズを一緒に歌ってほしいと言われたのがきっかけです。本格的に始めたのは、京都大学のアカペラサークル、CrazyClefに入ってからですね。

──ボイストレーニングを始めたのはいつからなんですか?

伊藤 1回生の夏頃ですね。実は大学でアカペラを始めたときは、地声の最高音はF#4、裏声がまったく出せないという状態で、まともに歌える曲がほとんどなかったんですよね。それで何とか高い声を出したいと考えて、無理やり地声の最高音を出し続けていたら何度も喉を壊してしまって……。最終的には、最低音から3半音分しか声が出なくなって、病院の先生に「このままだと一生歌えなくなるよ」と宣告されちゃって。歌が大好きだったので、この言葉は本当にショックでした。その出来事がきっかけでボイトレに通い始めました。

──発声指導はいつから始めたんですか?

伊藤 2回生からです。ボイトレに通いだしてから、面白いように声が出るようになって、それを見ていたサークル員が、「自分にも教えてほしい」って。それからサークル外にもだんだん呼ばれるようになり、アカペラ業界ではかれこれ20年弱、発声指導を続けてますね。

──そう言えば今、学生アカペラサークルに無料で発声相談会をやっていると聞いたんですが、どうしてそんな活動を?

伊藤 新型コロナウイルスが流行して、もちろんアカペラ業界もストップしました。アカペラとウイルスはかなり相性が悪いので、「正直アカペラ終わったかも」と沈んでいたんです。でも、そんな状況でもいつか活動できると信じてアカペラを始めようという学生がいることを知って。もう、なんていうか感謝しかないなって。それで自分でできる感謝を伝える活動として、無料の発声相談会を始めました。

──発声相談会ではどんな質問が出るんですか?

伊藤 2022年の10月から始めて、最終的に41サークル実施しましたが、どこのサークルでもだいたい似たような質問が来るので、よくある質問を3つ紹介しますね。

発声相談会のよくある質問

①高い声の出し方

 ひとつ目が、やはり「高い声の出し方」です。
 いわゆるミックスボイスの出し方を教えてということなんですが、いつも回答していたのは、いきなり力強い声を出そうとしないこと。いきなり力強いミックスボイスを出そうとすると、たいがい地声の張り上げになってしまうんですよ。そして、最悪の場合、ポリープや声帯結節などの病気になる危険性もある。ポイントは、まずは小さな声でいいので、地声と裏声のバランスを取りながら繋げる。そしてバランスが取れた状態で徐々に大きくしていくことです。

②ハモリやすい声の出し方

 ふたつ目に多いのが、「ハモりやすい声の出し方」です。
 この質問には、一体感を出すには何を揃えれば良いかを回答しています。具体的には、唇の形状、下顎の開き方、舌の形状や位置、軟口蓋の高さ、喉仏の位置、声帯の接触具合が揃えるべきポイントになります。よくある間違いとして、個々人の声を目立たなくさせるために、声を鼻に流すという手段を取る学生が多いのですが、それだと高い周波数の響きがカットされて豊かな響きにならないので注意が必要です。

③合唱発声からアカペラ発声にできない

 3つ目が、「合唱発声からアカペラ発声にできない」というお悩みです。
 僕も元々合唱出身なので、1回生の頃は先輩からよく、合唱みたいな歌い方だねって言われて悩んでました。これについては喉仏の位置を下げすぎないことと、唇の形状、声帯の接触具合が主なポイントになります。合唱の発声とアカペラの発声は、実はそこまで大きく違わないので、大きく変えるのではなく、各部位を少しずつ修正するのが大事ですね。

──アカペラにおけるボイストレーニングの重要性について教えてください。

伊藤 唇の形状や下顎の開き方などで、ある程度ハモリの精度を上げることは可能なのですが、それにも限界はあります。やっぱり声の響きが豊かな人がハモると、ものすごく綺麗なハーモニーが生まれるんですよ。そう考えると最後は発声だなって。もちろんリードボーカルも苦しそうな声だと聴いてられないですし。どうしても上手くハモれないとか、音域が狭くて歌えないとかいうことであれば、一度プロのレッスンを受けてみてほしいと思いますね。ボイトレに通うとものすごく上達が早くなりますから。自分の教室の宣伝になって恐縮ですが、特にうちの教室は、僕も、僕以外の講師も全員ベテランのアカペラーなので、よりアカペラに合ったアドバイスができると思います。

ジャンルごとの歌い方を学ぶ機会が必要だと思いますね

──ボーカルテクニックについてはどうですか?

伊藤 アカペラ業界の問題点として、リードボーカルが個人の技量に任されすぎているという点がありますね。よく言えば自由に歌わせてもらえる。でも悪く言えば放置という感じで。アカペラはあくまで演奏形態であって、音楽ジャンルではないので、本当はジャンルごとの歌い方を学ぶ機会が必要だと思いますね。

 それこそ私も所属してますけど、リットーミュージックさんの歌スクには、各ジャンルのトップ講師が集まっていますよね。みなさん一流講師なので、挙げればキリがないんですが、例えば、ポップスだったらゴスペラーズやLittle Glee MonsterのディレクションをされているMayu Wakisaka先生とか。ミュージカル系なら尾畑里美先生、ジャズならOlive先生、女子ロックならHyca先生、アイドル系なら現役アイドルをたくさん教えている詩菜先生とか。リードボーカルはそのジャンルの専門家でないと良いアドバイスが難しいので、自分が歌っている音楽ジャンルのトップ講師に学ぶのはとても良いと思います。今はオンラインで全国どこにいても一流の先生に習えるので、本当にいい時代になったなと思いますね。


プロフィール

伊藤俊輔(いとう・しゅんすけ)

 京都府出身。高校2年の秋から校内のグリークラブに参加する。京都大学法学部に進学後は京都アカペラサークルCrazyClefに所属。アカペラ一色の学生生活を送るが、自己流で無理な声の出し方をしていたこともあって喉を壊してしまう。京大病院で治療を受けたことを機に発声の猛勉強を開始。卒業後はサラリーマンをしながら関西を中心に全国のアカペラサークルへ赴いて発声の指導を行なう。2016年に京都府職員を辞して、「発声改善専門のボイストレーニング教室LogiVo」を開業。解剖学などの科学的根拠に基づいた論理的な指導が支持され、これまで70以上の企業・団体に対し、ボイストレーニング講座を実施。受講者は3,000人を超える。また、全国の大学アカペラサークルに向けてリモートでの「発声相談会」を無料で開催し、学生アカペラーから喜ばれている。

発声改善専門のボイストレーニング教室
LogiVo
無料体験レッスン受付中
https://logical-vocal.com/


関連記事

伊藤俊輔×同志社大学One Voices有志のアカペラ動画

 2022年に『Vocal Magazine Web』で行なったアカペラ企画、【家族や友人でチャレンジ! アカペラで歌う「クリスマス・イブ」】は、本書の著者かくたおあいのアレンジ譜をもとに同志社大学One Voicesの有志が挑んでくれたもの。

 1週間ほどの個人練習後、当日スタジオで初めて声を合わせるところから、伊藤に発声を学び、表現方法の指導を受けて4時間で一発撮りを行なうまでのドキュメントだ。「歌スク」ではレッスンの全貌を収録した1時間バージョンも販売しているので、そちらもぜひ!

プロ直伝! 自宅でできるボイストレーニング10選

最新情報

ヴォーカルや機材、ライブに関する最新情報をほぼ毎日更新!