【アカペラスタイル】『金沢アカペラ・タウン2023』2万人がアカペラを楽しんだ2日間の模様をレポート!
2023年8月26日(土)〜27日(日)@金沢市内各所
取材・文・撮影:藤井 徹(Vocal Magazine Web)
2023年8月26日(土)と27日(日)の2日間、石川県金沢市にて12回目を数える日本最大級のアカペライベント『金沢アカペラ・タウン2023』が開催された。
北海道から九州まで全国の有力グループが出演し、のべ2万人の観客を集めて大いに盛り上がった。
『Vocal Magazine Web』内にある『アカペラスタイル』編集部が、このイベントを取材したので、その模様をレポートしていこう。
金沢アカペラ・タウンの見どころ①
市内各所で行なわれているストリートライブ!
『金沢アカペラ・タウン』では、両日7会場でのストリートライブが展開されており、各会場で20バンドほどが約10分のステージを行なう。バンドは1日2ステージを異なる場所で演奏することになっているのだが、各会場の特色がそれぞれ異なっているため、演奏する側も観る側も違った会場の雰囲気を味わうことができる。
A:金沢駅もてなしドーム
金沢駅兼六園口(東口)の鼓門真下にステージを設置。金沢観光の玄関口であり、外国人を含めた観光客、地元の方々が多く集まる。
B:東別院山門前
横安江町商店街の一角に位置するお寺前でのステージ。全会場の中で最も歴史の趣を感じさせる。地元商店街近隣のお客さんが多かった。
C:近江町いちば館広場
新鮮な魚介類、美味しい海鮮丼を求めて早朝から賑わいを見せる、金沢市民の台所。参加バンドも数多く訪れたようで、MCにもよく登場していた。
D:金沢市役所庁舎前広場
市民が描き上げる「白いキャンパス」をコンセプトとした広場。ファイナルステージ(27日)の会場で『金沢アカペラ・タウン』のメインステージでもある。
D’:金沢市第二本庁舎
27日のみの会場で、空調の効いた屋内ステージ。ガラスを大きく採り入れているので、向かい側の緑が色鮮やか。
E:香林坊アトリオ広場
金沢市を代表する繁華街「香林坊」の商業施設「香林坊アトリオ」入り口に設けられたステージ。買い物客が足を止めて聴き入る姿が多く見られた。
F:片町きらら広場
こちらも繁華街「片町」にあり、大通りに面した商業施設の入り口に設けられたステージ。常に多くのオーディエンスがいる人気の会場だった。
G:金沢学生のまち市民交流館
大正時代に建てられた町家を改修した建物で、街なかに学生を呼び込み賑わいを創出する目的で金沢市が設置。畳の大部屋でのアカペラが良い味を出していた。
H:堅町広場
多くの個性的なショップが立ち並ぶ「竪町商店街」を抜けた先にある広場の小さなステージ。メイン通りから少し離れているが、目当てのバンドを聴きに訪れる人も多かった。
金沢アカペラ・タウンの見どころ②
勝ち抜きトーナメント形式の『金沢アカペラ・コンクール2023』
初日のメインイベントは、石川県文教会館ホールで開催された『金沢アカペラ・コンクール2023』だ。厳しい審査を通過した8グループによる勝ち抜きトーナメント方式で行なわれ、金賞・銀賞に選ばれた2グループが、最終日にメインステージの舞台に立てるというもの。
満員のお客さんと5人の審査委員の前で、一発勝負のパフォーマンスをするのだが、さすがに伝統のコンクールだけあって、出演グループのレベルが高く、1回戦から好勝負が繰り広げられた。
【出場グループ】
ヤコブのはしご
JACK
Apple City
GNARLY
BLUE BULLET
Primrose
Quintet5
日曜日のバカンス
決勝後の審査時間には、ゲストグループ、Nagie Laneのライブが繰り広げられた。広いステージを効果的に使ったフォーメーション、息の合ったダンスなどはさすがで、会場はオールスタンディングで大いに盛り上がる。我らがbaratti(v.p.)も、キレキレのパーカスとダンスを披露してくれた。出演グループも客席や舞台袖からその様子を見て、刺激を受けたのではないだろうか。
Nagie Lane
ゲストライブのあとは、いよいよ決勝の結果が発表された。激戦を勝ち抜き、見事に金賞に輝いたのは、東京の社会人アカペラサークル、オトナリ所属の6人組、日曜日のバカンス。銀賞は新潟大学アカペラサークルMUSEのOBと現役で結成された5人組、Quintet5(クインテッツ)。2グループは翌日のファイナルステージへの出演が決まった。
また、各賞も発表され、表彰と記念品が審査委員から授与された。
【ベストアレンジメント賞】GNARLY
【ベストボーカリスト賞】土田 怜奈(日曜日のバカンス)
【ベストベーシスト賞】Chuah Hao Min(Quintet5)
【ベストパーカッショニスト賞】伊藤 早亜努(Quintet5)
それでは、金賞と銀賞を受賞した2グループの受賞コメントを紹介しよう。
Quintet5
伊藤早亜努(v.p.) 僕らは新潟大学MUSEの現役とOBの混成バンドで、僕は卒業して他大学の大学院に通っていて、他のメンバーは現役生です。僕らはおもにPentatonixのコピーをやっていて、結成して2年くらいですね。
Chuah Hao Min(bass) (伊藤が)卒業してからあまり5人で一緒にやる機会がなくて。こういうイベントを通じて、また5人集まってアカペラできたらいいな、楽しいなと思ってコンクールに応募しました。ただ楽しく歌おうという気持ちで……もちろん頑張ったんですけど、みんなもうまかったし、でも準優勝はやっぱり嬉しいですね。
伊藤 このバンドで最初から演奏していた「I Need your Love」は1曲目に絶対やろうと思ってました。1回戦突破して嬉しかったから、2回戦は楽しもうと思って一番楽しい「Cant Hold Us」をやって、観客と一緒に楽しくやって終わろうって(笑)。負けても勝っても悔いの残らないようにと思ってやったら、ありがたいことに勝たせていただいて……という感じですね。
森川皓太(Lead、3rd Chorus) 決勝は緊張はあまりしてなくて、本当に「ただ楽しく」っていうのを第一に考えてました。自分たちにもそうだし「観客の方に向けて」っていうのをすごく意識していたので、それは最後まで貫けたかなと。
伊藤 金沢のコンクールは、すごいお客さんが温かかったです。皆さん本当に手拍子とかもしてくださるし、楽しげな表情をしてくださるのが、すごく嬉しくて。やってるこっちはすごく楽しかったです。
蛇口栞里(Lead、Top Chorus) 本当に楽しむことしか考えてなかったので、緊張もしなかったし、あんまり「勝ち進もう」みたいな気持ちがなかったので、正直「あ、通っていいんかな?」みたいな(笑)。でも、たくさんの曲をステージでできて幸運だったなと思います。
冨田いくみ(Lead、2nd Chorus) たくさんのうまいバンドの方たちと交流もできたし、そういう面でも多くの刺激をいただきました。もっと頑張りたいなっていう気持ちにも繋がってますし、すごい貴重な体験だったなと思います。
森川 ありがたいことに、今日は街を歩いてくる中で声をかけてくださる方とかいて、そういうのはすごい嬉しいです。
日曜日のバカンス
ずっきー(v.p.) 僕らは東京の社会人アカペラサークル、オトナリに所属しているバンドで、今年の11月で結成2年になります。もともと全員が東北地方の大学出身なんですが、結成当時、この中で誰が関東に来ているかも知らずに、たまたま社会人野球をふたり(ふわ、ずっきー)が同じチームでやっていて、練習試合の帰り道に「久々に一緒にアカペラやろうよ」って声をかけたのがきっかけです。メンバーは、できれば全員東北地方にいた人で、今関東に来ている人で組みたいと。そこで心当たりがある人を集めてこのメンバーになった感じです。
ふわ(bass) 僕と朝が秋田大学、かにくとしゅうせーが弘前大学、ともかとずっきーが山形大学です。普段の練習は均すと2週間に1回くらいで、出演するライブに向けてやっています。
朝(Lead) 私たちは『金沢アカペラ・タウン』に出させていただくのは初めてだったのですが、けっこうお客さんに地元の方が多い印象です。他のイベントとかだと、アカペラーっていうか、「アカペラ好きな人」が多いですけど、金沢は「街全体がすごい盛り上がってるな」って思いました。
ともか(Top Chorus) 今日歩いてるときにお姉さま、おばさま、お兄さんとかに「(昨日のコンクール)良かったよ!」と声を掛けてもらえたりして、その雰囲気が素敵だなって。
ずっきー 昨日のコンクールは、1回戦5分間、2回戦5分間、決勝が10分間と、いちおう全部進んだ体で、最初はこの曲、次はこの曲という構成は考えてはいきました。出来栄えとしては、いいときもあれば、悪いときまあったかなと。
ふわ 反省点もありつつ、でも楽しんで演奏させていただきました。
しゅうせー(3rd Chorus) ライブハウスでやることはあっても、なかなかホールで歌う機会ってないので、気持ちよく歌えましたね。
朝 すごく楽しかったですね。みんなも温かかったですし。コンクールは1曲(ずつ演奏する)っていうのがすごい緊張感があって、やっぱりコンテストってなると全然違うなって思いました。
ふわ 出る前はメチャメチャ緊張して、お互いに背中を叩き合いながら……みたいな。でも、ひとたびステージに立つとお客さんの歓声も聞こえましたし、反応を返してくれる方も多かったので、すごくやりやすくて温かいステージだったという印象です。
かにく(2nd Chorus) そうですね……そんな感じです(笑)。
ともか コンクール後に出演者同士の会話にも関われて、学生のみんなから、「どうしたらいいんですか?」みたいに聞かれたりしました(笑)。
かにく 本当に良い経験になったなと思いますね。個人としてもグループとしても。