【インタビュー】鈴華ゆう子(和楽器バンド)、さらなる雅な表現へ。「和」と「自分たちらしさ」を再確立した自信作『I vs I』を語る

2023.07.28

取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)

和楽器バンドが約3年ぶりのオリジナルアルバム『I vs I』を発売する。

本作のテーマは“戦い”。アニメ『範馬刃牙』野人戦争編オープニングテーマ「The Beast」、ゲームアプリ『真 戦国炎舞-KIZNA-』オープニングテーマ「宵ノ花」を始めとしたタイアップ8曲に新曲を加えた全13曲が収録され、自己を見つめる戦いと、そのあと辿り着いた世界が描かれている。音にこだわり抜き、原点とも言える“和”、そしてよりパワーアップした“和楽器バンドらしさ”の最新形が詰まった渾身の一枚だ。

Vocal Magazine Webにはヴォーカルの鈴華ゆう子が登場。自身も『I vs I』だったと語るアルバム完成までの出来事や、作詞作曲を手がけた楽曲を中心に今作での音楽表現について語ってもらった。

“歳を重ねる美しさ“。より説得力のある「和」の表現を高めていきたい

──Vocal Magazine Webのインタビューには『ボカロ三昧2』リリース以来のご登場となります。声出しありのライブ活動も再開されたそうですね。ライブで久しぶりにお客さんと会う楽しみがあったかと思います。

鈴華 そうですね。6月に声出し解禁のFCライブを東京・大阪で2公演ずつ行なったのですが、やっていること自体は3年前の声出しありのライブと同じはずなのに、同じものには感じなかったんですね。この3年間声出しできなかった中での今回の解禁で、「あ、こんなに良いものだったんだな」って前以上に特別なものに感じています。

──今作『I vs I』が完成するまでの期間は鈴華さんにとってどんな時間でしたか?

鈴華 オリジナルアルバムは3年ぶりですが、間にデビューの『ボカロ三昧』に続く『ボカロ三昧2』の発売を挟んでいて。でも、映画でもなんでも“2”って怖いじゃないですか(笑)。昔のボーカロイドは和楽器の音が打ち込みで入っていたり和風ボカロも流行っていたので、それを生でやったら面白いよねって比較的カバーしやすい流れもありましたが、最近のトレンドはとにかく“速い、高音、デジタルサウンド”。それをやるのは我々にとってかなり挑戦だったんです。でもウチのバンドメンバーは影なる努力家が揃っていて、全員がレベルアップして、生のライブでもサラリとやりのけました。すごく成長があっての今回のアルバムだったので、3年間で精神面も技術面もかなり鍛えられたなと感じています。

──「歌も非常に難しかった」と前回インタビューでおっしゃっていましたね。

鈴華 そうなんです。原キー指定がある場合もあったので、ボーカロイドが歌っている高いキー、リード曲の「フォニイ」はまさにそうだったんですけど、私の中であまり主にしなかったキーをメインで歌っていくところで幅を広げるきっかけになりました。また、精神面では長期療養を取らなければならない期間もあったので、それこそ自分自身の『I vs I』があって。みなさんにどう映っているかはわからないですけど、私自身はそれを経る前と今とでは確実に違うなと、そういう感覚がありますね。

──お休みの期間で新たに気づいたことがあったのでしょうか?

鈴華 振り返ると、デビューしてから駆け足でゆっくりする時間もなくて、これは強制的に休まないとこのままいくな……と思っていたところでの休養となりました。最初は自分がいない中でもバンドの活動を続けてくれている他のメンバーへの負担を考えると申し訳なくて不安になりましたけど、少し立ち止まる日々の中で、自分にとって必要なものと不必要なものの選別が明確になっていきました。空いてる時間だから学んだり勉強したり、いっぱい曲作ったりしようとも思いましたが、身体が思うようにいかないときは、無理やり頑張るよりしっかり休むという大事さに気づきました。

──精神的にいろいろなことに向き合う時間だったのですね。

鈴華 はい。そして休みが明けた途端、パーン!と弾けたように仕事をしています(笑)。ただ復帰直後は体力が完全に落ちていて……でもステージは決まっているという中で焦り、産後3ヵ月でパーソナルジムにお願いしに行きました。そしたら「来たことないです、そんな人」ってはじめは断られちゃって(笑)。でもなんとか理解していただいて、歩行訓練レベルから始めていきました。やるしかない!という戦いでもあったので。

──それは本当にすごいです……!

鈴華 あと今までココは見せたくないな、コンプレックスだから隠したいなと思っていたこともたくさんあったんですけど、ありのままの自分でこれからも年齢を重ねていくのは当然だし、歳を重ねる美しさって言うんですかね。実際に出産を経て、その経験値からでしか出せないモノというか、同じ「和」のことをやっていても、若いときより説得力がある表現ができると思うので、そのあたりをしっかり高めていきたいなという気づきなんかもありました。

──大きな経験を乗り越えた鈴華さんが生み出す音楽がこれからも楽しみです。

鈴華 ありがとうございます。

>>次ページは【即興から生まれた「そして、まほろば」の超ハイトーンヴォイス】

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