【インタビュー】TOMOO、新作で改めて感じた歌の広がり。“今の歳だから出た感情だったなって”

2023.04.12

取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)

TOMOOが、メジャー4作目となる新曲「夢はさめても」をリリースした。
この曲は2023年4月5日スタートのテレビ東京系水ドラ25『ソロ活女子のススメ3』のオープニングテーマに決定しており、TOMOO がドラマタイアップを担当するのは初となる。

切実な気持ちを歌いつつ曲調は明るいギャップをあえて作ったと語る通り、ポップなサウンドの上で、“人と人との関係の岐路”を歌い、次第に声に感情が満ち溢れていく展開がドラマチックな1曲。

Vocal Magazine Web1年ぶりの登場となる彼女に、新曲での音楽表現を始め、歌に対する今の気持ちや、ヴォーカリストとしての喉ケアなどを聞いてみた。

ラフさって頑張って作るのが難しいから、一番何もしない状態でこそ出るモノもあるんだろうなって

──Vocal Magazine Webには「酔ひもせず/グッドラック」のリリースインタビュー以来1年ぶりの登場になります。当時、ワンマンライブ(『TOMOO one-man live“YOU YOU”』)を終えメジャーデビューを控える中、「もっと豊かにいろいろな表現をしていける道のりの今は途中だ」とお話されていました。あれから1年、その道のりはどんなふうに広がっていますか?

TOMOO あのあと夏にワンマンがひとつあって、年末〜年明けにもツアーがあって、(今まで)ライブでやったことがなかった編成の、例えばホーンセクションの皆さんと一緒にやることが増えてきたり。リリースした曲も、メジャーデビュー曲「オセロ」で(「酔ひもせず/グッドラック」の編曲と)同じmabanua さん、そのあと「17」でトオミヨウさん、そして「Cinderella」と新曲「夢はさめても」では高木祥太さんとご一緒して。自分が簡易的にデモを作る中で想像できる範疇を超えたアレンジをそれぞれの皆さんからいただいたり、力をお借りして作品を出してこれたなと思ってます。

やっぱり2、3年前のもっと小規模で自力みたいな感じで音源作りをしていたときよりも、格段にいろんな楽器の人に入ってもらっていて、それはある意味1年前に言っていた「豊かに表現できているな」の一部ですよね。初めましての方にアレンジしていただいたことも、ライブで新しく出会って一緒に演奏する機会が増えたことも、振り返るといろんな場面においてそうだったなと実感しますね。

──デビュー発表時に「自分の歌がそれを聴いた人の喜びになることを知った」というコメントがありましたが、その感覚の変化やより手応えを感じたことはありますか?

TOMOO やっぱりいろんな場所で耳にしてもらえる機会が増えたので、リアクションは感じてます。あとライブに来てくれたっていうことが、そもそも作品が届いているからこそだと思うんです。ライブのステージから見た景色が変わったことは、ある意味、作品を発表したリアクションをもらえている一番直接的な実感だなと思いました。今までワンマンしたことないところで開催したときに、「本当に来てくれるのかな」って最初は思ったんですけど、「ハイ、開演!」と幕が上がったときに「うわぁ、いてくれてる!」と実感したり。

──歌に向き合う気持ちは変化していますか?

TOMOO ちょっとずつ自由になってるような気はしますね。レコーディングを重ねて、例えばディレクションで、自分が「うーん……」と思ったテイクでも、「今の良かったじゃん!」とか「こういうふうに歌ってみるのはどう?」と言ってもらう経験を通して、だんだん変わってくるんですよね。歌い方がめっちゃ変わったとは思わないんですけど、軸は変わらない中で「ちょっとこれもアリかも」という広がりは増えたような気がします。もしかしたら年齢とかもあるかもしれないです。こういう大人っぽい歌い方もいいかなぁとか、そういう細かい表現の“自由さ”が作品を経るごとにちょっとだけ増えているような……。あくまで自分の中の感覚ですけどね。

──歌に対して心が開放的になってきてるんですね。

TOMOO それもあるかもしれないです。ライブにしろ音源に吹き込む歌にしろ、回数をあまり重ねてないうちって“ちゃんとしなきゃ”みたいな意識が強いというか。性格上、正解がひとつあってそこをあまり外れないように“ちゃんとうまくやりたい”みたいな気持ちになっちゃうこともあるんです(笑)。

──自分の中で歌い回しの正解、失敗といった区分けがあるのでしょうか。

TOMOO “こうあるべきなはず”みたいな。ライブでの歌も、その日によってコンディションも違うし、状態が違うと同じように歌いたくてもそうならない日がある。そのときに、自分の中の良いモデルというか、このニュアンスの声を出せてる感じが良くて、それ以外はちょっとこう……減点じゃないですけど。人に評価されているという意味じゃなくて、(自分の中で)ちょい残念というか(笑)。理想の100%があるとして、これは80%、これは70%みたいに感じてしまうとだんだん窮屈になっていくと思うんですけど、だったらちょっとはみ出す感じで、違うアプローチでも良いんじゃない?って。レコーディングの歌い回しも、もともと想定していたものじゃなくても、これはアリと思える。経験が増えることによって、そういうのが気持ち面でほぐれてきたかもって思います。

──ここ数年はいろんな声の試行錯誤をしているとお聞きしましたが、この1年多彩な作品をリリースする中で、声の研究も続けていますか?

TOMOO 実験と検証を繰り返し……みたいな研究は特にしていないんですけど(笑)、例えばレコーディングを迎えるまでに“今回はこういう感じでいきたい”といった声のキャラクターを決めて作品ごとにやったというのはありましたね。でも終わったあと、意識し過ぎるとこうなるなぁとも思ったり(笑)。全部肯定的には捉えてるんですけどね。なので長い目で見て、一応うっすら研究中って感じです。

──ちなみにボイトレは通っていますか?

TOMOO 今はたまに行ってます。最後に行ったのはレコーディング前で、自力でやってるけど、ちょっとフォームが崩れてないか見てほしいなと相談しに行った感じだったかな。

──ご自身ではどんなトレーニングをしていますか?

TOMOO 基本的に次にレコーディングする曲、次にライブでやる曲っていうのをその期間ごとに練習してる感じです。でも特殊なことはしてなくて。携帯のボイスメモとかを使いつつ、聴いてまたちょっと反省して、みたいな方法が基本的なやり方ですかね。

──先日のYouTube Liveをリアルタイムで視聴したのですが、最近はリリースやライブだけでなくYouTubeの配信も積極的に行なっていますね。

TOMOO ありがとうございます。あの日は眠かったやつですね(笑)。眠かったというか「春眠」というテーマで開催して。

──穏やかな世界観が素敵でした。テーマや披露する曲はどういうふうに決めてるんですか?

TOMOO YouTube Liveは基本、“季節や旬を押さえたい”という感じです。未音源楽曲がぼちぼちあるんですけど、そういう曲をやるときは特に季節に合わせています。3月っぽい、2月っぽい、初夏っぽいみたいな。あと選曲は、視聴者の方からコメントで「あれ聴きたい!」と言われたらワンコーラスでチャーッと歌ったりはするんですけど、基本的に“この日はこの季節だからこの曲を用意しよう”と大体決めて準備してます。

──ステージドリンクは台湾の「凍頂烏龍茶」とのことでしたが、愛用のドリンクですか?

TOMOO ステージドリンクとしてはライブ会場では絶対水だけにしてるんですけど、遊べるのはおうちだけということで、YouTube Liveは良いかなと(笑)。夏は炭酸飲んだり、この間の寒いときはチョコレートの匂いがするお茶を飲んだりとか、ちょっとゆるくしたくて。

──お部屋ならではの温かい音の響きも印象的でしたが、音はどんなふうに拾ってるんですか?

TOMOO カメラを立てられるスタンドに携帯をカシャッとセットして、自分の顔の高さくらいの位置でピアノの向こうに置いて、普通に横から携帯で配信してます(笑)。マイクとか集音する何かの機材を携帯に付属させたりはしていなくて、ダイレクトで。そのまま配信してるから、前はWi-Fiの問題とかでけっこう音が途切れちゃったりしたんですけど、今は有線LANを使ってギリギリできています(笑)。

──あえて何も使わない録り方をしてるんですか?

TOMOO そうですね。ちゃんとスタジオでやる配信ライブにしろ、ライブ会場での生ライブにしろ、どうしても“マイクの制約”が絶対あるなと思っていて。やっぱり意識がけっこう変わるんですよね。マイクが目の前にあるっていう感覚もそうですし、さらに自分の横にカメラを置いたってなると、意識がふたつに分散するというか。自分の中、自分の目の前、そして自分のカメラの横。ホントはあんまり何も意識しないで歌いたいっていうのがあるんです。なので家の配信ライブはそれぞれの会場とは違った良さを出せたらいいなと思っていて。なんかラフさって頑張って作るのが難しいから、一番何もしない状態でこそ出るモノもあるんだろうなと思って、今もそのやり方でやってます。

>>次ページは新曲「夢はさめても」での音楽表現を深堀り!

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