【インタビュー】TOMOO、新作で改めて感じた歌の広がり。“今の歳だから出た感情だったなって”

2023.04.12

取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)

“今の歳だから出た感情だったな”って2サビは思い出深い

──ここからは新曲について聞かせください、「夢はさめても」は人気ドラマシリーズ『ソロ活女子のススメ 3』のオープニングテーマ曲に決まっています。初のドラマタイアップを担当する気持ちはいかがですか?

TOMOO 率直に「いいんですか?!」って(笑)。ただお話が決まった状態では、もともと(作品の)ファンの方もいらっしゃるので、大丈夫かなって思っちゃった部分もあったんです。でもいざトレーラーを見て、実際のドラマ映像に自分の曲の一節が流れているのを聴いたら、自分の中ではしっくりきて、ウフフってなっちゃって(笑)。シーズン3もすごく面白そうですし、シンプルに“幸せだな、ありがたいな”と思いました。

──ドラマは主人公の五月女恵が“ソロ活”を通して自分ひとりの時間を楽しむ姿が見どころですが、TOMOOさんもソロ活をしますか?

TOMOO そうですね! もともとひとりでご飯食べに行ったりすることが多かったので、大学時代とかも食堂で明るくひとりでご飯食べてたんですよ。寂しいとかじゃなくて、同級生とすれ違えば手は振るんですけど、別に「今日もまたキムチ丼食べれて幸せ!」みたいな(笑)。健やかにひとりでご飯を食べたりする感覚ってもともとあったので、シーズン3自体を観る前からシンパシーは感じていました。

──そういったひとりの時間は音楽を作るうえでも大事な時間だったりしますか?

TOMOO また大学時代の話になっちゃうんですけど、授業がバラバラだったから食堂以外もけっこうひとりだったんですよ。みんなが授業を受けてそうな時間にカフェに行ってひとりで歌詞を書いたり。少し逸れてる感じというか、気持ちがクフフッてちょっとアガる。孤独にワクワクするのは確かに集中力が開く感じがありますね。

ここ数年はコロナ禍で家にこもって曲を作ることが多かったんですけど、最近になってまた外を歩き回ったり、ちょっと都心のほうに歌詞を書きたいためだけに行って、やっぱり良いなって思います。部屋で空気が沈殿してるところじゃなくて、“まわりに人がいるけど、自分はひとり”っていう状態で作るのいいなって数年越しに思い出していて。またそれを実感し始めたタイミングでこのドラマに関わらせていただくのは嬉しいです。

──曲調はホーンセクションの明るいサウンドが印象的なポップチューンです。アレンジは「Cinderella」に引き続きBREIMENの高木祥太さんということで、どんなやり取りをしましたか?

TOMOO 今回はそんなに細かく行って返してはしていなくて。そもそも数年前から「いつかアレンジしたい」と言ってくださっていて、「じゃあそのときが来たらお願いね」とうっすら約束みたいなものをしていたんです。何年も前から知ってもらってた曲だったので、逆に月日が経って「初めて知ったときの感じじゃないから、あんまりいろいろ加えたくないような気持ちもあるんだよね」という話をされて。でもなんだかんだでいろいろ加わってるんですけど(笑)。

──高木さんが知っていたのは弾き語りの状態ということですか?

TOMOO そうです。「弾き語りの状態を長らく知ってるから、ピアノは活かしたいな」っていうお話はあって。この曲は順当に考えると、例えばストリングスとかクラシカルな要素が加わって、ショーっぽいゴージャスなアレンジイメージも湧くような曲だと思うんです。でもそこはちょっと身軽にしたいとか、すごく整った真面目な感じよりも親しみやすさみたいなものがサウンドに欲しいとか、そういうざっくりしたイメージを話しました。「じゃあストリングスかホーンだったら今回はホーンにしよっか」という話になったり、打ち合わせのときにチャイティを飲みながら「シタール入れようかと思ってるんだけど、どう思う?」という話もノリでしましたね(笑)。

あと、この曲はけっこう切実な気持ちを歌いつつ曲調は明るいっていうギャップをあえて作ってるんですね。だけど明るさに振り切るんじゃなくて、最後はやっぱり切実な部分もわかるような箇所を作りたいっていう話もして今の形になったんです。なので、そんなに紆余曲折はしてないんですけど、20歳とか19歳ぐらいのときにこの曲を知ってもらって、そこから長い期間を経て大人になり、今の状態でこの感じをどう表現するかっていうところで形になったアレンジでした。

──歌詞からは《ばらばらに燃える ふたつの心臓は 重なってゆける 甘すぎた夢はさめても》という、冷静さと情熱の二極の側面があるようにも感じますが、主人公像はどんなものなのでしょうか?

TOMOO すごく少女のような感覚と、年齢を重ねた人みたいなものが同居してるイメージなんですよ。サビの《抱き合えるならば 骨まで抱きしめて》という歌詞も、言葉はキツいけど無邪気さゆえにそういう言葉を使えている感じかなって、今27歳になってみるとそう思います。そういうことをパーンと言えちゃう恐れのない性格にも感じるんだけど、やっぱり《夢はたちまちくずれた》って言ってるし。酸いも甘いも通ってきたあとのような印象と、人を素直に信じる無邪気さみたいなものがどっちもあるような感じで。でも過去のいろんな映画や物語でも、主人公の中に少女と成熟した女の人が同居してるみたいなことって真理として描かれてきたことのような気もするんですけどね。そういうひとりの人の中にどっちもあるっていうことが、たぶん20歳でも40歳でも80歳でもずっと真実なんじゃないかなって思うんです。

そもそも(曲を)書いたのは18歳で、完成させたのは19歳だったかもしれないですけど。そのときってそんな痛い思いもしてなさそうな頃なのに、なんとなくわかってるみたいなことって、そういうこと(=真理)なのかなって。で、今27歳になって歌ってみても違和感がないんですよね。

──曲が進むにつれて主人公の切実な気持ちがより声に乗っていく歌唱展開がとてもドラマチックです。前回、歌入れのときは温度感や香りのようなものをイメージして声を出しているとお聞きしましたが、今回のヴォーカルレコーディングはどんな感覚でしたか?

TOMOO 今回は人にしゃべりかけてるような歌詞が多かったので、色や温度や情景というよりはキャラクターのほうの意識でしたね。“誰かがいたうえでどう伝えるか”という気持ちでそれぞれのフレーズを歌った記憶があります。

歌い回しについてはあらかじめ用意はしていったんですけど、偶然あんまり力強くない、儚そうな歌い回しになっちゃった瞬間とかに、ディレクションしてくれた高木さんも「これで!」と言ってくださって。あえて安定感や気丈さが強めなテイクと、ちょっとか弱そうなテイクが混ぜこぜになるように選んでいったんですよ。(前から)曲を知ってくれているからこそ「これは今こういうふうに聴こえたよ」と伝えてくださったり、ディレクション込みで歌い方のバリエーションが豊かになったようなヴォーカルRECでしたね。

──特に印象に残ってるフレーズはありますか?

TOMOO 思い出深かったのは、落ちサビ。もともとこの曲は落ちサビがなかったんですよ。でもアレンジによって2サビが落ちサビになって。今の歳になってみてレコーディングした際に、「人との関係で何にも悩んでませーん」という感じの10代や子供の頃よりは、いろいろあった今だからこそ自然に出てきた感情があったんですね。自分の物語の中にあったどこかに触れる感情が自然に出てきたところだったので、“今の歳だから出た感情だったな”って2サビは思い出深いです。

──事前にいただいた資料には弾き語りの音源も入っていて、リリース音源とはまた違った感情表現の激しさというか、“迫真の演技”をも感じる歌唱でした。歌における演技の感覚について前回お話されていましたが、演奏スタイルやシチュエーションが異なるとその感覚は変わりますか?

TOMOO 変わりますね。例えば同じレコーディング、同じ家ライブの中でも、演技のような“表現”という意識が低めでスッと歌うときもあれば、楽器としての“歌唱”よりも感情表現のほうが強めになるときもあって。でもシチュエーションごとで考えると、一番演技に意識がいくのは、もしかしたらレコーディングかも。

──意外とライブではなくレコーディングなんですね。

TOMOO いや、でも見られてるとは思ってないんですよね。

──自分の中で憑依させるとかそういうイメージですか?

TOMOO そうですね、やっぱり感情に集中するというか。ただそれが人に届いてるかどうかは別なんですよ(笑)。自分の中でその意識が高くなっているだけで、別に表情とか身振り手振りを見られてるわけじゃないから、受け取る側は普通に歌っているように聴こえてそんなに違いはないのかもしれないですけど。YouTube Liveとかはすごくスッと歌っていて、あんまり演技は感じないです。ステージはやっぱりお客さんがいてくれるので、曲によってはちょっと演劇的な気持ちが強めになるかもって感じです。

──では最後に、6月に控えているライブ『TOMOO LIVE TOUR 2023 “Walk on the Keys”』はどんなライブになりそうですか?

TOMOO ピアノが長らく私の相棒なわけですけど、その黒鍵白鍵に“陰日向”を重ねています。自分が生きていくうえで歩む道のりが陰日向を繰り返していく。そういったイメージと、鍵盤の上を行き来するということや、それが隣り合って成り立っているピアノの鍵盤を重ねていて。だけど、(陰日向は)どっちもあるというか、どっちもあってこそみたいな。そういう希望の持ち方を、昨年のデビュー曲でも少し考えながら作ったんですけど、改めてもう1回伝えられるライブにしたいなと思っていて。でも細かいことはまだ決まってません(笑)。ただそこだけは自分の中で譲れないテーマとしてあります。あとは新しい曲もいくつかやりつつ、昨年のワンマンやツアーとはまた違うものにしたいなと思ってます。

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