話題のステージモニターイヤホン、Acoustune『Monitor RS ONE』を佐藤千亜妃がチェック!

取材・文:藤井 徹(Vocal Magazine web)
人物撮影:菊地 英二 機材解説:エディット

2013年に創設され、革新的でハイクオリティなイヤホンを次々と投入してきたAcoustuneが、昨年12月10日に新ライン『Monitor(モニター)』シリーズをスタート。第一弾としてステージモニターイヤホン『RS ONE』がリリースされ、各方面から注目を集めている。

今回、RS ONEをチェックしてもらったのは、きのこ帝国(2019年より活動休止中)のギター&ヴォーカリストで、現在はソロ・アーティストとして活躍中の佐藤千亜妃だ。昨年リリースしたアルバム『KOE』収録の「甘い煙」が、『第27回日本プロ音楽録音賞』CD部門「ポップス、歌謡曲」最優秀賞を受賞。ライブ用のダイナミックマイクを何本も所有するなど、音に強いこだわりを持つアーティストである。

そんな佐藤に、RS ONEのインプレッションはもちろん、ヴォーカリストにとってのイヤモニとの付き合い方など、広く聞いてみた。

Impression
佐藤千亜妃 -Chiaki Sato

元々の音がすごく持ち上がる感じがして、音の輪郭がはっきり出てくれる。

──RS ONEのルックスを見た第一印象はいかがですか?

佐藤 イヤモニっていうと耳の型を取って作るイメージがあったので、こういうフラットに使えるものがあるんだなとビックリしたのと、スケルトンで中の配線が見えるのが、お洒落だなと思いました。

──今回、どんな環境でチェックしていただけましたか?

佐藤 家にデモを録ったりするDTM環境があるので、録音とミックスデータのチェックで使わせていただきました。

──イヤモニの良し悪しを判断していくチェックポイントはどこに置いていますか?

佐藤 まずはノイズが入ってないか、それから低域や高域が出過ぎてないか、ですね。あと、隅々まで聴こえるといいなと思っていたのですが、これは元々の音がすごく持ち上がる感じがして、音の輪郭がはっきり出てくれるので、その点ですごくチェックしやすかったですね。

──どんなタイプの曲を聴いてチェックしたのですか?

佐藤 今回は打ち込みのものが多かったんですけど、けっこう下(ロー)がはっきり出るなっていうのと、輪郭がはっきり出るわりにハイがきつすぎなくて、とても聴きやすい音像だなと感じましたね。

──ヴォーカルの部分で言うと、どんなイメージでした?

佐藤 個人的には不必要な部分が聴こえてこなくて、声の聴きたい成分……真ん中ぐらいですかね。そこが抜けて聴こえてくるような印象を受けました。イヤモニによっては、もっとフラットに設定されていて、自分が聴きやすいように整えないと、なかなか理想の音像にたどり着けないものもあるんです。だけど、これは元から声が抜けてくる整った音像なので、その点でとても楽だなと思いましたね。

──ライブで使用するときは、イヤモニのどこを重視しますか?

佐藤 やっぱり声がしっかり聴こえることと、プラスしてドラムなどのリズムですね。リズムを縦でとりたいので、ベースがあんまりボワッとならずに、ちょっと硬めで返してもらっています。これは下も出るんですけど、わりとタイトに聴こえてくるので、そういう点ではすごくメリットがあるかなと思いました。

──ライブのイヤモニで聴いている音って、どんなバランスなんですか?

佐藤 (普通のリスニングと比べると)全然違うと思います。音楽としては聴きづらいと思う(笑)。もちろん聴き心地も大事なんですけど、どちらかと言うと“自分がどのキーでどのメロディを歌ってるか”とか、“リズムが今どこにあるか”っていうのを把握したいためにイヤモニをしてライブしているので、そこがすごくこだわりがあります。

──そこの世界観はなかなか聞けないから、興味あります!

佐藤 上モノのギターは抑えめにして、リズムとコードワークがわかる鍵盤、バッキングのギターなどがよく聴こえるように返す感じですね。ただ、歌を大きく返しすぎると、外でお客さんが聴いたときに歌がこぢんまりした印象を与えちゃうこともあって。なので、歌を大きく聴きたいときはオケも一緒に大きくしたりとか、逆にオケをちっちゃく聴きたいんだったら、歌もそこに合わせて、ある程度ちっちゃくしたりとかします。イヤモニに頼り過ぎないような感じっていうのも、最近は意識するようにはしてますね。

──いろいろ試してバランスを作ってきた感じですか?

佐藤 そうですね。自分用のイヤモニを作ってから7年ぐらい経つんですけど、やっぱり最初はすごく大きく聴きたかったりとかして、全部の音を上げたりしてました。すると“ギターに埋もれてリズムが聴こえないぞ”とか、徐々に気づいていくこととかがあって。そういう中で、“この楽器は下げて、この楽器は上げて”と精査していきました。今はすごく歌いやすい環境になるように、意識して全体を組み立てている感じですね。

──イヤモニの返しで、出音に大きな影響があるというのは新鮮な話ですね

佐藤 やっぱり耳の中でしっかり音量があるように聴こえても、マイクに乗ったとき、外に出たときっていうのは、また違うと思うので。もしイヤモニの中で大きく返しながら、自分は小さい声で歌いたいのであればPAさんとも連携を取って「歌は外で大きく出してください」って言わないといけない。そこのバランス感はいつもPAさんに確認しながらやっていますね。

そして“このテンションで歌いたいな”っていうのが定まったときに、現場でのリハーサルでPAさんに「今このパワーバランスだと、歌が埋もれてたりとか、こぢんまりした感じはないですか?」って確認します。「それだとダイナミクスが弱すぎて、あんまりライブ感がないかも」って言われたら、「もうちょっと強く歌います」とか「それであれば、逆に外で上げてもらってもいいですか」など、連携を取るための道具としてもイヤモニはすごく役立ってるかなって思いますね。

こういう汎用モデルで手に取りやすいものがあるのは良いですよね。

──ちなみにMCをしてるときって、イヤモニの中はどうなってるんですか?

佐藤 MCをしているときも同じ感じで返っています。そうするとお客さんの声などが聴こえなかったりして嫌なので、片耳をはずしたりしてバランスをとってますね。ちょっと隙間を空けるとか。

──装着感については、耳にピタッとしているほうが良いんですか?

佐藤 ホールなど大きい会場ではけっこう(音の)回り込みっていうのがあって、ちょっとディレイ(遅れること)した感じで聴こえることがあるんです。それをなるべく防ぎたいときはフィット感がすごく大事になってきますね。逆にあえて会場のリバーブ感も聴きながら気持ちよく歌いたいって人は、半挿しじゃないですけど、ちょっとゆるめていたり、片耳をはずして歌う人もいるので、人それぞれかもしれないです。

私はピタッと付けるタイプですけど、ライブハウスの特性によっては、すごくデッドで回り込みがほぼないところもあって。そういうときは少し寂しくなるので、外の余韻を感じるためにはずすこともあります。あとは、お客さんのノリを感じながら歌いたいときもそうです。そのあたりは臨機応変にやっていますね。

──RS ONEの装着感はいかがでしたか? 型取りではなく、汎用性のあるユニバーサルデザインですが。

佐藤 最初は“ピッタリくるのかな?”って思いながら付けたんですけど、思いのほか外の音も入ってこなかったです。音の聴こえ方的にも密着度は十分あるのかなと思いましたね。普段カナル式を使っている人は、このほうがたぶん使いやすいかなと思います。ヴォーカル・マガジンで言うのもアレですけど、ドラマーの方が練習するときに良いんじゃないかなって勝手に思ってます。

スタジオでクリックと音源を聴きながら叩く人っていると思うんですが、これは自分のドラムの音もけっこう聴こえるんじゃないかなって。密閉し過ぎちゃうと逆に自分の叩く音が聴こえなかったりするんですけど、装着部分に自由度があるから、あえてゆるくしたりして、クリックも聴こえるけどハイハットの音とかも聴こえる、みたいな使い方もできそうです。けっこう自由度が高いなっていうふうに勝手に思いました。

──ありがとうございます! 実は『ドラム・マガジン』でも、このモデルのレビューをやってるんですよ。https://drumsmagazine.jp/gear/acoustune-rs-one/

佐藤 そうなんですね。きっとドラマーはこれ好きだと思います。使いたがりそうな気がしますね(笑)。

──ちなみ、このRS ONEは、ハウジング側のコードが取りはずし可能なんですよ。

佐藤 ええ〜、面白い。断線とかしづらそうで良いですね。イヤモニって意外とコードを引っ掛けて断線しちゃうこともあるので、コードを5本ぐらいストックしているんですよ。やっぱり修理に出さないといけなかったりするので。これならギターのシールドみたいな感覚で、ちょっと替えたりできて便利かも。

──価格は12,980円と、アマチュアの方が最初のイヤモニとして使うにも手軽かなと思います。

佐藤 後輩から「やっぱりイヤモニを付けたほうが歌いやすいですか?」って相談されることもあるんですけど、耳の型を取ってカスマイズできるところだと、どうしても価格的に断念する子が多くて。今まで自分が使っているもの以外は、あまり調べたことがなかったのですが、こういう汎用モデルで手に取りやすいものがあるのは良いですよね。

──RS ONEはどんなヴォーカリストにお薦めしたいですか?

佐藤 けっこう下も出るので男性も合うと思いますし、逆にチェストヴォイスっていうか、上がファーってしか出ないような子でも、下を持ち上げてくれるのでピッチが取りやすいのかなと。自分の声にはすごく合いそうな感じがしましたね。


Acoustune Monitor RS ONEの特徴

RS ONEは「イヤモニ」というカテゴリーの製品だ。「イヤモニ」は「インイヤーモニター」の略。ヴォーカリストにとっては、ステージ上で他の楽器がどのように鳴っているのかを聴き取るためのものと言える。インタビューにもあるように、この音の良し悪しが歌の質にも影響するので、イヤモニの役割は非常に重要なのだ。

RS ONEは堅牢性の高さが特徴で、衝撃や熱、汗に強い。ライブの環境は過酷で、時に荒っぽい扱いを受けることもあるため、イヤモニにとって堅牢性は優先順位の高い事項だと言える。

また、RS-ONEは扱いやすさも特徴となっている。その秘密はツイスト上のケーブル。しなやかでありながら癖がつきにくく、ヴォーカリストの動きを妨げない。

さらに、イヤーピースが大きさ/形状違いで4種類用意されており、好みのフィット感を選べるのもうれしいところだ。

デザイン性にも優れるので、普段使いのイヤホンとしても活用できる。

デニム地のケースが付属する。

RS ONEメーカーHP https://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_3765.php


Profile
佐藤千亜妃(さとう・ちあき)

 4人組バンド「きのこ帝国」(2019年5月27日に活動休止を発表)のヴォーカル、ギター、作詞作曲を担当。現在はソロで活動中。類まれな表現力を纏った唯一無二の歌声は、音楽ファンのみならず数々のミュージシャン、タレント、俳優などからも支持されている。
 他アーティストへの楽曲提供・プロデュースを手掛けるなど、その活躍は多岐にわたる。2021年9月15日に2ndフルアルバム『KOE』をリリースし、全国ワンマンツアー“KOE” Release Tour 2021「かたちないもの」を5都市で開催した。

リリース情報

2ndフル・アルバム『KOE』

初回限定盤(CD + Blu-ray)
UPCH-29408/6,380円(税込)※映像のみプレイパス(R)対応

初回限定盤

初回限定盤(CD + Blu-ray)
UPCH-29408/6,380円(税込)※映像のみプレイパス(R)対応

<Blu-ray Disc 収録楽曲(初回限定盤のみ)>
01. PLANET
02. Summer Gate
03. Lovin’ You
04. You Make Me Happy
05. リナリア
06. 橙ラプソディー
07. 転がるビー玉
08. 面
09. Spangle
10. lak
11. 空から落ちる星のように
12. 大キライ
13. キスをする
14. 春と修羅
15. 夏の夜の街

通常盤

通常盤(CDのみ)
UPCH-20592/3,300円(税込)

<CD収録曲>
01. Who Am I
02. rainy rainy rainy blues
03. 声
04. カタワレ(フジテレビ系4月期木曜劇場『レンアイ漫画家』主題歌)05. 甘い煙
06. 転がるビー玉(「NYLON JAPAN」創刊15周年プロジェクト映画『転がるビー玉』主題歌)
07. リナリア
08. 棺
09. Love her…
10. 愛が通り過ぎて
11. ランドマーク
12. 橙ラプソディー

関連リンク

佐藤千亜妃 OFFICIAL SITE https://chiakisato.com/
Twitter @chiaki_sato0920
Instagram https://www.instagram.com/chiaki_sato0920/

製品情報

  • Acoustune Monitor RS ONE

    12,980円(税込) 2021年12月10日

    SPECIFICATIONS
    ■シリーズ/品名:Monitor『RS ONE』
    ■カラー:Graphite(グラファイト)/Teal(ティール)
    ■タイプ:ユニバーサル フィット
    ■ドライバーユニット:9.2mm径ダイナミック型ドライバー(ミリンクスEL ドライバー)
    ■ハウジング素材:セミトランスペアレントポリカーボネート
    ■周波数特性:20Hz – 40KHz
    ■感度:108dB @ 1KHz(1mW)
    ■最大入力:30mW(定格5mW)
    ■インピーダンス:32Ω
    ■コネクター:Pentaconn Ear Long-Type
    ■ケーブル:ARM011(ハイグレードリッツワイヤーケース/2重シールド、2重ツイスト4芯構造、黒シース、3.5mm3極ストレート金メッキプラグ、Pentaconn Ear Long-Typeコネクター、ケーブル長 約1.2m
    ■重量:約26g(ケーブル)
    ■付属品:ARM011ケーブル、シリコンイヤーピースAET07(S/M/L)、フォームイヤーピース AET02(Free Size)、キャリングケース
    ■価格:12,980円(税込)

    HP:https://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_3765.php

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