【ライブ・レポート】MONOEYES、有観客の日本武道館。“各地でみんなの気持ち背負ってきた”

昨年9月にフル・アルバム『Between the Black and Gray』をリリースしたMONOEYES(モノアイズ)が、ライブ・ツアー『Between the Black and Gray Tour 2021』を開催中。本日は、東京・日本武道館公演のオフィシャル・ライブ・レポートを掲載する。



いつもは謙虚な戸高賢史が「各地でみんなの気持ち背負ってきた、今日の俺らは強いと思う。ぶちかますんで」と珍しく宣言していた。スコット・マーフィーはバンドに誘われた7年前を振り返り「あの時、不安だったけど日本に行ってよかった。MONOEYES やってほんとよかった」と広い会場を見上げて微笑んだ。一瀬正和は2時間ほとんど笑顔のまま。一年前の記憶が蘇るのか「お客さんのいる武道館っていいですね」と偽らざる本音をこぼす。

そして細美武士は、最初に「こんな幸せな日はねぇよ」と一言。後半になると「一回やれればいいやと思ってたけど……ここは楽しいね」と次の可能性さえ匂わせる発言を飛ばす。もちろん予定はなく、自分でも思っていなかったことがつい口に出ただけなのだろう。日本武道館がそんなことを言わせるのだ。この会場の歴史と雰囲気が特別であること、さらに昨年10月、少数のスタッフのみでこの場所から無観客配信ライブをやらざるを得なかった事実が、4人の口調をいろいろと浮つかせている。

これが本当に特別な、待ちに待った夜であることは誰の目にも明らかだった。両脇の巨大ヴィジョン、ステージ後方の LEDCG 映像、さらにド派手なムービングライトや上下使いのミラーボールが次々と楽曲に華を添える。指定席で座っていても十分に楽しい演出がたっぷり用意されていた。

それに見合うだけのスケールを今の MONOEYES は手に入れたのだ。サードアルバム『Between the Black and Gray』の楽曲たち。始まりの曲「Fall Out」は映画のスクリーンに飲み込まれていく感覚になったし、続く「Bygone」のずっしりしたリズム、力強く踏み鳴らすようなリフの重量感は、まさに武道館のためのもの。この四人にしか出せない熱の滾りがあり、会場の隅々にまで音を手渡していく技術力とマンパワーがある。さらには中間に響き渡ったミドルテンポの「Nothing」。暗がりの中でひとつの灯りをゆっくり手繰り寄せるような曲調、その灯りの温もりまでが伝わるようなディティールは、ライヴハウスでバカスカ飛び跳ねているだけでは絶対に手に入らないものだ。

そういう「ザ・武道館」仕様の提示をしながら、同時に、とにかくバカスカ飛び跳ねるライヴバンドのままであるところが最高だった。幕開けこそ威風堂々でも、4曲目「Free Throw」あたりで空気は変わる。細美と戸高はこれ以上近づけないほど接近して対面し、スコットはぐるぐると楽しそうに回転。そして曲の終わりには3人が自然にドラムセットへと向かう。観客に背を向け、天井の日の丸などもそっちのけで「一瀬、お前のキメで最後にジャンプするぞ」と待ち構えているわけだ。まったく、この広いステージでどんだけ密にくっついてるのか。距離の近さが可笑しくて仕方がない。

デジャブが何度も起こる。スコット、細美、戸高が同時に高々とジャンプする瞬間。あんまり同じシーンがありすぎて私は途中から大笑いしていた。待ちに待った「ザ・武道感」の MONOEYES と、ずっと変わらない「ディス・イズ・ライヴハウス」の MONOEYES。継続とは、どちらも手に入れられる豊かさのこと。小バコで大汗かきながら大声で騒いでも、伝統ある武道館の客席でゆったり見ても、同じだけ心が沸き立っていく。どちらもあることがコロナ禍の今は最大の贅沢だ。

スコットが細美のマイクを使い誇らしげにセンターに立った「Roxette」。一度しっとり聴かせた後に後半戦の火蓋を切るきっかけとなった「グラニート」。昨年の配信ライブ同様に、パンダの被り物(の下の素顔にもパンダメイク!)をしたTOSHI-LOW が乱入した「Two Little Fishes」。印象に残るシーンは数えきれないほどあったが、私の脳裏に一番焼きついたのはラスト直前の「My Instant Song」だった。

「My Instant Song」は、4人が動き出してすぐの時期、細美の脳内に天啓のごとくに流れ出した曲だ。結果MONOEYESのデビュー曲となり、すぐさま全国ツアーがスタート、旅のはじまりの歌となった。そこから6年、武道館でイントロが鳴った瞬間、アリーナ、一階、二階席の全員が「自分の歌だ!」という顔になった。細美の曲でもバンドの曲でもなく、まさに「俺の歌、私の歌」といった受け止め方。ここまで共有され、かけがえのないものとして愛でられてきたのかと、4人がヴァンに乗って走り続けた時間の長さを思ってしまう。

〈暗がりにいると感じるときは ただ歌を歌うんだ 即興の歌さ〉
ストレートなポップパンクに乗った歌詞の和訳である。結成当時、東北のハコを回るためのバンドとして始まったMONOEYES は、難しいこと一切抜き、中高生がみんなで騒げる賑やかしの歌があればいいと、ごくシンプルな目的を掲げてツアーに奔走した。もちろん歌は一瞬でキッズに共有された。つまり目的はわりと早くに達成されたわけだが、さらなる〈Sing A Song〉を何百回と繰り返していれば、武道館で何千人と祝福できる日が来るのだ。会場全体を照らす虹色のライトは夢みたいに美しい。まばゆく光る七色、それに照らされるみんなの笑顔が、MONOEYES のパンクソングの無限性を物語っていた。

(text by 石井恵梨子、photo by Maki Ishii)


セットリスト

Between the Black and Gray Tour 2021
2021年11月2日(火)東京・日本武道館

01. Fall Out
02. Bygone
03. Run Run
04. Free Throw
05. Interstate 46
06. Cold Reaction
07. Like We’ve Never Lost
08. Roxette
09. Get Up
10. Iridescent Light
11. Nothing
12. グラニート
13. When I Was A King
14. Somewhere On Fullerton 
15. 明日公園で
16. Borders & Walls
17. Two Little Fishes
18. Outer Rim
19. My Instant Song
20. リザードマン

EN01. 3,2,1 Go
EN02. 彼は誰の夢
WEN. Remember Me

Apple Music、Spotify、LINE MUSIC セットリストプレイリストURL

ツアー・スケジュール

MONOEYES
Between the Black and Gray Tour 2021

8/1 (日) 千葉 LOOK
8/3 (火) F.A.D YOKOHAMA
8/10 (火) 郡山 HIPSHOT JAPAN
8/18 (水) 長野 CLUB JUNK BOX
8/19 (木) 富山 MAIRO
8/25 (水) 広島クラブクアトロ
8/26 (木) 周南 RISING HALL
8/29 (日) 高知 CARAVAN SARY
9/2 (木) USEN STUDIO COAST
9/8 (水) 仙台 GIGS
9/9 (木) 仙台 GIGS
9/13 (月) 高崎 club FLEEZ
9/15 (水) 水戸 LIGHT HOUSE
9/24 (金) 熊本 Django
9/26 (日) 鹿児島 CAPARVO HALL
9/29 (水) Zepp Nagoya
9/30 (木) Zepp Nagoya
10/4 (月) 秋田 Club SWINDLE
10/7 (木) Zepp Tokyo
10/11 (月) Zepp Osaka Bayside
10/12 (火) Zepp Osaka Bayside
10/15 (金) 新潟 LOTS
10/18 (月) Zepp Sapporo
10/19 (火) Zepp Sapporo
10/26 (火) Zepp Fukuoka
10/27 (水) Zepp Fukuoka
11/2 (火) 日本武道館
11/7 (日) KLUB COUNTER ACTION MIYAKO
11/8 (月) 大船渡 KESEN ROCK FREAKS
11/10 (水) 石巻 BLUE RESISTANCE
11/21 (日) 桜坂セントラル

作品情報

MONOEYES
3rd Full Album『Between the Black and Gray』

UPCH-20560 2,400円+税(2,640円 税込)全11曲収録

01. Bygone
02. Fall Out
03.リザードマン
04. Iridescent Light
05. Thermite
06. Castles in the Sand
07. Nothing
08. Satellite
09. Interstate 46
10. Outer Rim
11. 彼は誰の夢

関連リンク

公式サイト

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