取材・文:藤井 徹(Vocal Magazine Web)
スマホ2台とドンペリの箱で行なう超アナログ配信
──この頃はまだ、安井さんとは会ってない?
安井 まだ会ってないやろ?
なかね 会ってないか? うん、会ってないわ。てか、東京にいないやろ?
安井 うん。そのぐらいだったら、たぶん別の子とYouTubeやってた時期やと思う。
──安井さんはどういう動画をあげていたんですか?
安井 僕のほうは、なんて言えばええんやろ?
なかね お笑い系? それで私、ファンだったんですよ、もともと。安井は私のことを全然知らなくて、私は一方的に知ってたんです。言うてもTikTokですけどね、それも。
安井 70万人くらいフォロワーがおったんですけど、めちゃくちゃYouTubeとかもやっとって、かなちゃんと知り合ったんです。
──2人で一緒にやろうっていうのは、どんな流れで?
なかね 安井の元相方と3人で一緒に話してた時に、私が最近あった面白いエピソードみたいなことを話してたら、その元相方が“安井はギター弾けるし、かなちゃん歌えるし、投稿してみたらバズんじゃん?”みたいなことを軽〜く言ったんで、“じゃあやってみるか”って出した1本目がバズって、こんなことに……。本当にその1個からずっと続いてます。マジで。
安井 ホンマ言われたまんま撮ったもんな。やってみたら?って、そのまま聞いて、そのまま作って、その場で撮ってあげました。
なかね 1時間以内に全部できた。
安井 で、バズった。なんにも定まってない時なんで、カメラのアングルとか今と違ってて適当にやってるんです。
──曲をその場で作ったんですよね?
なかね 歌詞も曲もその場で作って、その場で上げて、その場でバズって。
──バズるバズらないっていうところまで、考えてないぐらいの感じ?
安井 そうです。“バズるんちゃうん?”って言われたから、“ホンマに?と思って(笑)。いや、バズれへんやろと思ってたら、めちゃくちゃTwitterで通知が来て。
───そのやり方で、その後も同じ方法論で続けてるんですか?!
なかね 最初は安井が歌詞を付けてたりもしてたんですけど……。
安井 そやね。途中から完全に役割分担しました。
なかね 意外と私、歌詞いけそうやなって。逆に曲はまったく作れないっていうか、意見はしますけど、ほぼないですね。
──メロディもアドリブかと思ってたんですよ。
なかね え!? 全然違いますね。安井が全部決め込んでます。
安井 僕が全部メロディを作って、かなちゃんに覚えてもらってます。
なかね 最後らへんのフェイクみたいなところは自分でやったりしますけど、全部メロディは安井が。だから、すごいんですよね。
安井 実は才能で……。
なかね すいませんホンマに。やっぱやめます、今の。いいと思ったんですけど。
安井 調子乗ったら怒られんねんな。
──(笑)。では、安井さんが全部ひとりで作って持っていくんですね?
なかね そう。でもコード4つしかないんで、たまにメロディがかぶるんですよ(笑)。この前イベントがあって、“これやろう”って集めた曲、全部コード進行も一緒で、あの曲当てクイズやろうって言っても、メロディもコード進行も全部一緒やから、“いや、曲かぶってるよ!”みたいな。“この1個のメロディで曲が2個あるんだけど”って(笑)。そういうのに気づき始めてて、曲もらって、“それはよくありすぎる”と。“コード4つは変えなくていいから、ちょっと変えよう”みたいな話はしてます。
──安井さんは、どんな感じで曲を作ってるんですか?
安井 かなちゃんが歌詞を先に考えてくるんです。
──詞先なんですか!?
安井 はい。現場でその歌詞を見てメロディつけて、それを僕がまず歌う。それをかなちゃんに覚えてもらって、3回くらい練習してから本番です。
なかね 現場で歌詞書くこともありますけどね。
安井 ほぼ現場でできてるみたいなもんです。
なかね コスパえぐいです、ホンマに(笑)。
安井 それで1日2〜3曲作ります。
──安井さんが使ってるコード4つは?
安井 G、Em、C、D……。
なかね 言うとけ、言うとけ(笑)。
安井 すいません、ホンマは最近ちょっとAも弾けるようになりました(笑)。
なかね ブランディングがね。4つキャラでやってますんで(笑)。
安井 僕、1回Fも練習してて、実はFが入ってる歌もあるんですよ。でも、弾けてないんですよね。“プッ”とか言ってるだけで(笑)。音は出せるけどコード・チェンジできひんし。
──なるほど。4つのどれかとAを入れ替えているわけですね。
安井 そうです。だから1曲で4つ以上のコードを使ってる歌は、ほとんどないと思います。
なかね ないと思うよ。逆に3つはありますけど。
──これは極めていただきたいですね。
安井 そうですね。逆にどうしようもない……。
なかね やりたくてもできないから。
──テンションはOKですか? セブンス入れようとか。
安井 すいません、セブンスって何ですか?
なかね あ、ごめんなさい。最近シールドという言葉を覚えたから。申し訳ないです(笑)。
──同じGコードの仲間なんだけど、7度音を足したコードですね。
なかね ああ〜、聞いたことある!
安井 昔はいろいろ試したんですよ。“こうやったほうがいいかな? ああやったほうがいいかな?”って。でも無理やった(笑)。ごちゃごちゃしすぎて、わからへんなったっていう。
──アレンジャーさんがついたシングルの音源では、セブンスとか入ってるかもしれないですね。
安井 あ〜。そうなったら弾けない……。僕は弾けないです……。弾きません。
なかね しつこいねん、お前(笑)。
──動画を撮影してる場所は、いつも同じですね。
安井 あれは、バーですね。
──なるほど。あそこに、いつも同じようにセッティングをされるわけですね。
なかね そうです。セッティング言うてもスマホ置くだけですけどね(笑)。コスパえぐいな、ホンマに。
安井 一度来て見てもらいたいですけど、マジ、アナログなんですよ。まず1台スマホを立てるじゃないですか。その横にバーなんで、ドンペリの箱を置いて。
なかね その上でもう1台のスマホでライトをつけて照明を当てるだけ。アナログもアナログ。あれ、いいよなあ。
安井 ドンペリの箱がちょうどいい高さ(笑)。
なかね 冷蔵庫のスイッチを切れないんで、ずっとブーンって音が動画に入っちゃってるっていう(笑)。
──ということは、音はもちろんスマホ内蔵のマイクで?
なかね はい。(外部マイクなど)まったく使いません。画面に写ってるまま録音して、ミックスも何もしないです。
安井 生音どころじゃないけどな(笑)。
なかね ピッチぐちゃぐちゃの時ありますからね。しかも安井はマナーモードにしないことがあるんで、ホンマうるさいっていうのは“あるある”ですね。“何で消さないん!”って。嫁やん。キレ方、嫁やん(笑)。
──最初の投稿はYouTubeから始めたんですか?
なかね 最初はTwitterです。そこから一気にですね。全部にあげようってなって、TikTokとYouTubeとインスタもほぼ同時で、そこからは毎回その4つのSNS全部に投稿していきました。
安井 めっちゃ細かく言ったら、Twitter上げて、TikTokに上げて、ちょっとしてからYouTubeに上げた。
なかね あ〜、そうやったな、確か。
安井 “TikTokがバズってからYouTube上げたほうがいいんじゃないか”って、かなちゃんが判断して、自分のチャンネルで上げるようにしたんです。
──TikTokって縦画像の世界で、YouTubeは横画像の世界じゃないですか。そこは同じ動画を使って?
なかね そうです。横向きで撮ってどっちにも上げてます。TikTokにも横動画を上げています。
──TikTok用に縦にしてもう1回撮るというような考えは?
なかね もう全然ないですね。はい、コスパ重視で!
安井 できるだけラクしたい(笑)。