取材・文:藤井 徹(Vocal Magazine Web)
“未だにやっぱ俺らって夢を追ってるよね”と
──2026年に入って、現在は怒涛のリリースラッシュが進行中です。まずは2月2日に発表した「RED DOG」。これはどういう感じで作ってきましたか?
GAI “暗闇の中で叫ぶ”というところは、「Crimson Rain」と少し共通点がありますね。大きいところを抜けて自分らで活動していく中でいろんな人に出会ってきたんですけど、どんなジャンルでも、みんなどこか抑え込んでしまっている部分が多いなと感じていて。そこで、“やっぱり叫びたいことを叫ぼうぜ!”っていうところがテーマでありました。ちなみに荒野を旅する犬を描いた『RED DOG』という映画(2011年公開/オーストラリア)がありまして、そこから少し参考にした部分もあるんです。演奏の部分ではベースのスラップを初めて入れました。音源ではあえて控えめにしているんですが、これはライブではガツンとスラップのパートを作って実感してもらうつもりでして、その空白を少し作ったのが曲の特徴のひとつですね。
──レコーディングの段階からライブのことを細かく考えていたってことなんですね。この曲のイントロは王道のギター・リフなんですが、90年代グランジの風合いを入れたことで、僕らのような“ロック好きなおっちゃんたち”は、ある種の安心感を持って迎えられました(笑)。いわゆる“イントロ軽視”の時代に王道なイントロを入れたことは、意識的なものでしたか?
GAI 「RED DOG」と「Untitled Hero」は2曲ともそれぞれ別のジャンルの王道系な感じで作っていて。そこはやっぱりみんなが共通して盛り上がるライブ想定の曲でもあったので、少し王道な感じを意識しつつ、歌詞とかこだわりの部分はEmbersの色をしっかり入れているっていうところですね。
──そうなんですよ。安心して聴き始めるんですけれど、さまざまなアレンジでいつしかイントロのことは忘れてました(笑)。そんな中で、大サビはファルセットも使ったハモを入れて壮大になっていった直後、《響くこだまは僕の声だけ》というフレーズが来ます。ここはキーも低く、シングル(声を重ねていない)っぽくて、なおかつエフェクティブでもない、“素の声、裸の声”にようにしています。ここでハッとさせられたんですけど、そこは意図的なものですよね。
GAI そうですね。まさにおっしゃっていただいたとおりで、そこは本当に、わざと“何も考えずに声を出す”っていうレコーディングをしました。他の部分は意識して歌う部分とか、言い回しとかも少しあったんですけど、そこの部分は“つぶやいた感じで出た言葉”っていう風にやったので、“現実に戻ってくる瞬間”がそこなのかなと思っています。
──続いて「Untitled Hero」ですが、こちらはKAIRIさんとの共作クレジットです。ふたりでの制作はどういった感じなのですか?
GAI 深夜に僕の家に招きまして、ずっと夜な夜な作ってたんですけど、深夜テンションなので、自分が音楽を始めたきっかけとか、身の上話をする瞬間があって。そこで自分らの幼少期を振り返ったときに、“未だにやっぱ俺らって夢を追ってるよね”と。そして夢が叶う瞬間ってどこか結局わからないまま。だけど、ずっと夢を追い続けている。ありがたいことにXYでテレビに出させていただいたり、大きいステージで経験させていただいたりして、ミュージシャンとしては見たい景色がすごく見られたと思うんです。だけど、それでもなお音楽を続ける理由っていうのは、歌詞の中にもある《This is a dream I’m in》、訳すと《今、俺たちは夢の中にいる》。今この生きているその瞬間が、ずっと夢の中だから、ずっと何かを追いかけているんだなと。
やっぱり子供の頃には、反抗することでしか、それを表現できなかった自分たちだったので、そこの軸やベクトルを、夢に向けて一緒に走り出すっていうところに変えていきたいなと。歌詞にある《泣いてばかりの僕らだった だけどキミの元へ行くよ》の《キミ》は過去の自分たちなんです。過去の自分に“今、俺らは夢を追えてるんだよ”って教えてあげに行くというストーリーですね。
──そういったテーマを先に話し合って、“じゃあ、そういう曲作ろうぜ”みたいな感じ?
GAI アイデアと制作が同時でしたね。楽器を弾きながら作ってる感じだったので、勝手にそういうメロディになっていったし、メロディを録音していくときも、その瞬間から《泣いてばかりの僕らだった》って言葉や、サビの《This is a dream I’m in》も最初に出てきていました。本当に“自然に作った曲”でしたね。
──ひとりでの曲作りとはだいぶ違いましたか?
GAI そうですね。エッジの効いたギターのエフェクトとか、KAIRIにしか生み出せない音を出してくれてますし、彼が持っているヴィジュアル系の要素が、この曲のギター・アレンジにすごく出ていると思っています。そこと僕のわかりやすいポイントを作るメロディ感の部分がうまくマッチした曲なので、ひとりじゃ作れなかっただろうなって。王道ではあるんですけど、完全な王道じゃないっていう面白みがある曲だなと思いますね。
──この曲は、これまでリリースしている中では、最もドメスティックなアレンジだと思うんですよ。そこもやっぱり自然と出たものなんですか? それともメロディや歌詞、テーマがそっちだったので、やっぱりここは自分たちの国というか、ドメスティックなスタイルをあえて意識したりしましたか?
GAI けっこう“どストレート”に歌詞が出てくる、わかりやすく歌詞先行の曲でもあるので。連続リリースした「RED DOG」と「Untitled Hero」、このあと出てくる「De-Marionette」もそうなんですけど、日本語がメインになっているんです。「Crimson Rain」と「Slept by」は英語主体だったんですけど、これらは日本語なので、まさに自分の母国語で自分の想いをしっかり伝えるというところでストレートな感じになったのかなと。
──展開のあるイントロがしっかりあって、タッピングを駆使したギターソロも入っているので、そういった印象を持ったのかもしれません。
GAI 僕がXYの「YG」って曲を作ったときも、絶対にギターソロを入れたいと思っていて。やっぱりそこはある意味、現代への反抗みたいなところです。現代はギターソロなんてもうほとんどないし、あったとしてもそんなに印象的じゃない。だけど、もうがっちりギターの人にフォーカスさせるソロのパートを作るっていうところが、やっぱりロックで育ってきた僕の中では当然のものだし、そこはEmbersの強みになるんじゃないかなと思っていますね。
──最後の最後、《This is a dream I’m in》のリフレインのコーラス後、叫ぶように歌っていた部分は、どういう意図で録ったんですか?
GAI “ただ叫んでいる”に近いですね。ライブでは、最後のコーラスパートはみんなで歌ってほしいところなんです。ちょうど先日、YOSHIくんのバースデーイベントがあって、そこで「Untitled Hero」をアコースティック・バージョンで演奏したんですが、ファンのみんなも覚えて歌ってくれていて。聴いてくれているファンひとりひとりの人生の中で、今このライブに来ている瞬間、音楽で触れ合ってひとつになっている瞬間は夢の中であれ、と。日常って会社や学校に行って大変なことがあるし、人間関係でも大変なことがあるけど、今この音楽が鳴っている瞬間は夢の世界の中にいると。ただ、このライブが終わっても、“今生きているってだけで夢の中にいるんだよ”というところを声に出して、自分自身で納得させて、自分自身でその想いをどんどん作っていくっていうところなので、まさにみんなで歌ってほしいという感じですね。
──なるほど。だから最後はコーラスではなくて、ひとりに戻った声になっているんですね。








