【対談】水野良樹 × 関取 花 『うたってなんだっけ』で対談が実現。いきものがかかり「生きて、燦々」と関取 花「わたしのねがい」について相互インタビュー!

撮影:高田 梓

水野さんとの対談がなかったら出してないです。(関取)

関取 やっぱり、皆さんそうおっしゃいますよね。

水野 でも、そうじゃないですか? それこそ、関取さんの「わたしのねがい」もそうだけど。

関取 そう、本当にそうでしたね。手放した感じです。実はこの曲、HIROBAの対談に呼んでいただいたときはリリースする予定がなかったんです。

水野 曲はできていたんですか?

関取 弾き語りのデモだけがありました。できたときはすごい好きな曲だったけど、そのときの自分では抱えきれない何かがあって。いつかそれがわかったときに歌いたいなとか、アレンジが浮かぶんだろうなとか思っていて、ただストックにいる子だったんです。でも対談で事務所とレーベルを離れて独立したことで「次、これからどうなっていくんでしょうね、関取 花は」っていう話をしたときに、「誰かに何かをあげたいフェーズに入るんだという気がしています」……自分じゃなくて……となって、「あ、今か」と決めたんです。10月1日にリリースしたんですが、まあ、なかなかなスケジュールでした(笑)。8月6日に録りたいとその1週間前ぐらいに決めて、急にバンドメンバーとエンジニアさんにバーッと連絡して。たまたま予定が合ったので録れたんですけど、水野さんとの対談がなかったら出してないです。

水野 そういうタイミングや流れって不思議と重なるものだから、運命だったのかもしれないですね。独立って大きな出来事ではあることだけど、とはいえ関取さんの個人的なことというか、個人的な人生のストーリーの中で違う挑戦をしましたっていうことで。もっと広い意味での歌と関係があるかというと、そうじゃない部分もあると思うんですけど、やっぱり作り手、届け手の人が独立して環境の変化があって、見える景色が変わって、感じるものが変わったときに、急に遠く思っていた歌との距離が縮まったのかもしれないですね。「ああそうか、そういうことか」みたいな。

関取 まさにそういう感じでした。

水野 だからあの自然な歌唱というか、あんまり良くない意味での「作り込んだ感じ」ではなくて、今の時間をすっと切り取る、みたいな……。

関取 そんな感じでした。曲を書いてしばらくは、言い方は悪いかもしれないですけど正攻法のアレンジしか思い浮かばなくて。ちょっと牧歌的で、アコーディオンとか入れて、みたいな。もちろんそれでも良くはなったと思うし、そっちのほうが好きっていう方もいらっしゃるかもしれないんですけど、でもちょっと違うなとは思っていて。それが対談をしたあと急に「これもう、こうやって始まるな。タムだな、マレットだな」みたいなことが浮かんできたんです。

「わたしのねがい」関取 花

水野 いいじゃないですか。その流れが続いていくと良いですね。次の曲だったり。

関取 でも、流れが続いていくって難しいんですよね(笑)。

水野 そう、難しいんですよ。流れを止めないことが一番難しいから。

関取 いや、本当に。自分で自分のケツ叩かないと、とか思って。

水野 また、作りゃいいってもんでもないんでね。作ってても止まるっていう流れがあるんで。作品はできているのに止まってるっていう人がいるから。僕もそういう状況に陥るときもあるし。

関取 でも、急に来るときは来ますよね。「今月めっちゃできた」みたいな。最近FM横浜でラジオの代打をやっているんですが、ちょっと前に秦 基博さんがゲストで来てくださったんです。それでお会いする前にインタビューを読んだんですよ。そうしたら「曲作りをするときにハミングだったりとか、歌詞にはなってないし、別にこれを歌いたいと思って歌ってないけど出てくるものって、なにも言ってないんだけど、でも《なにか》は言ってるんですよね」って。ああ、まさにだなと。これは私の解釈ですけど、響きだけ残したいのかもしれないし、もしかしたら本当に無意識的意味があったのかもしれないなって。私もそこまではできるんですけど、それがなにかを見つけるのにすごく時間がかかるようになった。逆に言えば「なにか」までは早くなった気はするんですけど。それが難しいですね、最近(笑)。

水野 でも、いいところですね。「なにか」まで行かない瞬間もありますからね。「なにか」があるのはすごくいいと思いますね。

関取 例えば《走る》と歌っていたとして、「じゃあこれは走る歌なんだ」って先に決めつけ過ぎちゃうと、自分は大体ボツになっちゃうんです。「なんか、あんま走ってなかった」みたいな(笑)。

水野 歌、誰かに一回ディレクションしてもらったらいいじゃないですか。試してみるといいですよ。

関取 ……してくれますか?

水野 変なパスしちゃったな(笑)。自分にとっては楽しい行動にならないかもしれないし、実際短期的には良い作品ができないかもしれないけど、誰かとのやり取りで歌を作ってみていくという経験が、たぶん強度を高めていくんじゃないですかね。私はこれは合わないとか、もしかしたら私は気づいてなかったけど、こういうところが魅力なんだとか。合わせて歌ってみたらこんな感じになったって、自分が思ってないけど、良い感じだとか。それを踏むことによって、もっと強度が高まりそうな気がします。

関取 確かに。何曲もお世話になったプロデューサーさんが言ってくださった言葉はいまだにずっと覚えてるし、そのあとのレコーディングとかでも自分で思い出してずっとやってるんで。例えば「わたしのねがい」の《ぽつり ぽつり》とかだったら、「ここはちょっと、一粒また一粒と涙が寂しく静かに落ちていく感じが伝わるように、置いていくように歌おう」とか。それをいろんな人のディレクションでやってみて、パターンややり方を吸収して自分のものにして強化していくというのは、ありかもしれない。

水野 そう、人によって全然違いますからね。

関取 私、この人いいなと思うと、同じ方とやっちゃうタイプなんですよ。

水野 それもそれでいいんじゃないですか。うちなんて10何年もひとりの人でしたからね。レーベルのベテランディレクターで、岡田宣さんという方です。その人、「生きる化石」って言ったら怒られるんですけど(笑)。

関取 その方はニュアンスぐらいまでディレクションされるんですか?

水野 そうですね。2007年からついこの間、2020年くらいまでだから13〜14年、録っていただきました。ずっとお世話になっているエンジニアの甲斐俊郎さんっていう方と、岡田さんと吉岡の3人で歌を作るっていう期間が長かったんです。岡田さんは定年退職されて今はフリーになったんですけど、僕にとっては師匠みたいな方ですね。全部この人に教わったと言ってもいい人です。岡田さんのやり方をうしろから見て、ボーカルディレクションとはどういうものか、教えてもらった感じです。

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