【インタビュー】鈴華ゆう子 9年ぶりソロアルバム『SAMURAI DIVA』をリリース。「和」と他ジャンルの華麗な融合、至高の歌唱表現が詰め込まれた15曲について語り尽くす!

取材・文:藤井 徹(Vocal Magazine Web)

シンプルなバラードが届けられる歌手でありたい

──そして「月の兎」。とても美しいバラードですね。この曲は2コーラス目の途中からドラムパターンがフェードインしてきます。単純に興味があって伺いたいのですが、歌録りのときは2コーラス目の頭から(叩いていたであろう)ドラムは鳴っていて、歌を録ったあとにフェードインにミックスするんですか?

鈴華 いえ、このままのマイナスワンで歌いましたね。

──そうだったんですか。特に2コーラス目の頭からはストリングスと箏がメインになり、当初はリズムを出していたピアノが抑えめになっていきます。その中での歌唱が絶品ですよね。

鈴華 ありがとうございます! 私、本当はこういった唄がもっと歌いたいんです。もともとクラシックをやってるぐらいだから、すごくシンプルなバラードが届けられる歌手でありたいという想いを持っていました。だけどバラードって売るのが大変じゃないですか。最初からバラードしか歌わないと日本では抜きん出るのは難しい。ノリの良い曲でまず売れて、そのあとバラードも売れたら大成功!みたいな風潮もありますよね。GLAYさんが、ゆくゆく「HOWEVER」を出して、みたいなこともそうだし。

──サザンオールスターズも「勝手にシンドバッド」で出て、「いとしのエリー」が決定打になりましたからね。

鈴華 私にとっては、“和のロック”というところが、皆さんに知っていただくきっかけでしたが、実はその時代より前のソロでは、こういう弾き語りの曲をたくさん歌っていたんです。でも、お客さんが全然つかなかった。和楽器バンドの楽曲を聴いて、たぶん私に対して“クセが強い人”って印象を持つ人も多いんですよ。「これしか歌えない」、「クセで節調が入っちゃっている」みたいな人もたくさんいると思うんですけど、「こういうシンプルで歌声を聴かせる唄も、この長い人生でどんどん歌っていきたい」っていう意味で、アルバムの締め括りに持ってきました。

あと、実際に私はウサギを飼ってたんです。もう亡くなっちゃったんですけど、ウサギのか弱さとか、しゃべれないんだけども……とか、そういったところを人間に落とし込んだ物語として書いた曲ですね。チェロは内田麒麟さんという私の友人で、いろんなメジャーアーティストのバックで弾いている方なのですが、今回はチェロだけじゃなくて、バイオリンやヴィオラも弾いて“ひとりカルテット”を入れてくれました。最後の最後に「やっぱりこれね、打ち込みじゃなくて、2番からでいいんだけど生で入れたいんだ」って連絡したら、「任しとき。これくらいやったら、すぐやったるわ!」って言ってくれて。チェロ最高でしたね。

──この曲が作品としては最後の曲となっているわけですね。そしてCDのみに収録されるボーナストラックが、森口博子さん「サムライハート」のカバーです。ファンによるリクエストアンケートを事前に行なって決定した楽曲とのことですが、どんな理由でこの曲を推す声が多かったですか?

鈴華 条件なく募集したので、めちゃくちゃいろんな曲が来たんですね。この「サムライハート」は何票か集まっていた曲ですが、その理由はいくつかあって。まず、私と森口博子さんの親和性です。私の1stアルバムのボーナストラックでも、森口さんの「水の星へ愛を込めて」をカバーしているんですね。その後、テレビ番組で森口さんと一緒になったり、同じ『機動戦士ガンダム』の曲を歌っているところで、森口さんのファンだし、私のファンでもあるファン層がいるんですよ。

──なるほど。ほかの理由とは?

鈴華 森口さんの「サムライハート」という曲は、私は世代的に知らなかったんですが『鎧伝サムライトルーパー』(1988年)というアニメの主題歌だったらしいのです。さらにこのアニメのリメイク版(『鎧真伝サムライトルーパー』)が2026年1月から放送されるそうなんです。今回のアルバムタイトルは『SAMURAI DIVA』ですよと知って、タイトルもいいしリメイク版が出るというタイムリーさから、「この曲でしょう、森口さんの!」っていうところでリクエストしてきた人が何人もいたって感じですよね、きっと。

──結果的にCDでは、最初と最後の曲がサムライで繋がったわけですね。

鈴華 もうね、空気が読めるファンが多いんですよ(笑)。

──アレンジや歌唱など、どういった方向性でカバーしようと考えました?

鈴華 原曲がすごく時代を感じるようなサウンドで、新しくも古くも感じる仕上がりのものだったんですけど、コンセプトとして「やっぱりロックにしよう。和楽器は何か入れよう」って決めました。そこで編曲の綿引(裕太)さんと相談して、「尺八ですかね〜」となり、和楽器バンドの神永大輔に頼んで、まるでホーンセクションみたいに尺八4本をひとりで重ねてもらっています。

──原曲の森口さんの歌唱も素晴らしいですが、歌い方についてはいかがですか?

鈴華 陰陽座さんの場合は、あのアレンジが大正解だと思うんですけど、この曲に関してはアレンジをちょっと変えていて、そこで森口さんのような歌い方をすると、たぶん若干ロックに負けちゃうんです。そこでこの曲はバックサウンドのテイストに合わせて、私なりの解釈でやったほうが良いかなと。もちろん「ここは特に大事にしているだろうな」っていうところ、具体的にはDメロなどは、すごくリスペクトして歌いました。

鈴華ゆう子

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