
【インタビュー】Little Black Dress 歌謡ロックをベースにさまざまな表情を見せるメジャー1stアルバム、『AVANTGARDE』を語る!(撮り下ろしグラフ多数)
2025.07.29
取材・文:藤井 徹(Vocal Magazine Web)
撮影:松井伴実

「アヴァンギャルド」のユニゾンは寺尾 聰さんの影響です
──では、各楽曲について聞かせてください。1曲目の「アヴァンギャルド」ですが、歌の録り方にこだわりを感じました。1コーラス目のAメロはユニゾンのダブル、サビはハモリ、2コーラス目ではシングルにしています。さらにヴォーカルにエフェクターをかけていますが、こういった音色で表現したかったことは?
LBD これはまさに寺尾 聰さんのヴォーカルユニゾンから影響を受けています。感情的なんだけど感情がないような、目の奥に光のないような表現をしたくて。ただ淡々と1本でつるっと歌うだけでは感情が見えてしまって、むき出しのように感じてしまう。でも、2本重ねるとそこが分散されて淡々と歌っているように聴こえるんです。そこがやっぱりユニゾンのいいところなので。
また、この曲はモノノケだったり、いろんな敵と戦うストーリーなので、そういうおどろおどろしさを出したくて、ラジオボイスみたいなエッジの効いたエフェクターをベースのヴォーカルに重ねて付けていった場面もあります。ラジオボイスがかかっている部分はなんとなく俯瞰で誰かから物を言われてるような感覚になったりすると思うので、そういう遊びを入れています(笑)。
──やはり強いこだわりがあったわけですね。また間奏のソロも楽器でなくスキャットなのも新鮮でした。このアイデアもデモの段階からあったんですか?
LBD ありました。『宇宙戦艦ヤマト』の「無限に広がる大宇宙」っていう歌詞がなくて《あ〜、あ〜》っていう曲があるんです。あれを初めて聴いたとき、“スキャットなのに感情があるし、ソロになってる!”って衝撃を受けて。それがアヴァンギャルドな表現だなあと。ソロっていうとギターやサックスだったり、いろいろなものがあると思うんですけど、ヴォーカルソロっていうのに落とし込んでみました。
──続いては「PLAY GIRL」です。こちらは昭和歌謡ロック感が濃厚で、ハードボイルドな世界観がたまりません。自身が持っていた歌唱表現だけでなく、新たに取り入れたものはありますか?
LBD 街中を颯爽と肩で風を切って歩く女性。だけどその中に強さがあるっていうので、例えば《傷つかなくてすむわ》の《わ》のところを、ちょっと喉をひねって猫なで声みたいに出してみたり、強さと弱さを使い分けて歌いました。
──なるほど。他にも《笑ってあきれて》のところで巻き舌を強調していたりもしますね。そして全体的にはアタックを立てて歌っているのかなと。あとは裏声の使い方もこだわって歌録りされたんじゃないかと思うんですが。
LBD スピード感を出すために、歌の波形を母音と子音で分けてもらって、その母音だけ音のレベルを上げてもらったりもしています。例えば《た》だったら、《ta》の《t》の部分だけ若干上げたり。
──3回出てくるサビでも表現として変化させていると感じます。1コーラス目と最後のサビの歌詞は《Bye Bye》で、2コーラス目だけ《Bye…》になっているので、心象風景の差はあると思うんですけど。
LBD はい。1番では情景からただ悲しさを歌って、2番は自分への呆れる気持ちも入って、もっと強く悲しくて、3番は決意というか、ちょっと前に進む強さです。
──3曲目は「Lonely Shot」です。こちらはアレンジャー曽我さんのコメントによると、「デモ段階の一番強い部分を増幅した」とありましたが、どの部分を最もプッシュされた感じですか?
LBD どの部分なんでしょうね(笑)。でも、イントロから入っているギターフレーズは、曽我さんとギタリストの方に来ていただいて一緒に作っていったんです。デモを作った段階のときに私が聴いていたブリティッシュロックのタムを駆使したようなドラムのパターンがすごく響いていたので、それを使いたくて。そこに合うグルーヴ感を、たぶん曽我さんは大事にしてくれたんだと思います。
──この曲も昭和歌謡ロック感というか、いい感じのヤサグレ具合と言いますか(笑)。サビのスネアは頭打ちですし、パートごとにもビート感がはっきりしているのも特徴ですね。歌については、どういった難しさや楽しさがありましたか?
LBD ビートがはっきりしている曲では、それを意識するあまりにクリックを聴き過ぎて歌うとつまらなくなるんですよね。だからこの曲ではあえてクリックを消して、楽器レコーディングのときに一回せーのでバンドさんと一緒に歌ったんです。そのときの感覚を思い出しながら、聴いていて飽きない、単調になり過ぎない、機械的になり過ぎないことを意識して歌録りしましたね。
──《独りになりたい》というところは変拍子になっていますね。
LBD 4分の5(拍子)になってるんですよ。私の作ったデモの段階から入っていて、「やってみていいですか?」って。でも、歌うのが難しかったです(笑)。

