【インタビュー】MORISAKI WIN(森崎ウィン)、2ndアルバム『BAGGAGE』と独自のヴォーカルケアを語る。“楽曲のゴールまでの地図を描く「マッピング作業」を経て”

取材・文:田代智衣里(Vocal Magazine Web)

アーティスト、ミュージカル、俳優と多岐にわたり活動するエンターテイナーMORISAKI WINの2ndアルバム『BAGGAGE』が、4月19日(水)にリリースされた。

今作には、日本グッドイヤーの『オールシーズンタイヤ』CMソングとしてオンエア中の「BeFree」を始め、数々のワールドヒットを生み出す海外作家チームを起用した「Perfect Weekend」、宮野弦士が作曲、WINが作詞を担当した「Move out」を含む9曲を収録。また初回生産限定の【class W】には、ミュージカルナンバーや映画音楽などを収録したDISC2、ライブ映像を収録したBlu-ray、撮り下ろしフォトブック44Pが付属している。

Vocal Magazine Webでは、初登場となるMORISAKI WINに、今作の歌に込めた思いなどを聞いた。さらに、ヴォイストレーニング、喉のケア、公演前のルーティンも掲載。WINが語るこだわりのポイントに注目して、アルバムを何度も楽しんでほしい。

ずっとこういう楽曲を探していた

──ニューアルバム『BAGGAGE』はダンサブルな「Move out」からスタートしますが、空間を感じるヴォーカルが印象的でした。

MORISAKI ヴォーカルレコーディングではエフェクトをそんなに付けずに録ったんですけど、ミックスのときに“管の中で歌っているようなイメージにしたい”と伝えて、リバーブのかけ方をこだわってもらいました。バンドサウンドということもあって、今までと違う処理にしたいと思っていたんです。

──前からこういったイメージを形にしたいという思いがあったのでしょうか。

MORISAKI 最近ハリー・スタイルズの曲を聴いていたら、空間系のバンドサウンドが多くて。昔っぽさもあれば今っぽさもあって、“この音いいな”と思ったんです。それを取り入れたくて、合う楽曲をずっと探していたんですよ。今回ちょうどいいバンドサウンドが来たので、こういう処理にしたいと希望を出しましたね。

──レコーディングマイクは何を使いましたか?

MORISAKI 今までいろんなマイクを付け替えながら録ってきたんですけど、僕に一番合うのはソニーの「C-800G」なんです。お化粧が乗りやすいマイクだと言われてるんですけど、自分でモニタリングしているときに一番気持ちいい音なんですよね。だから今回のアルバムでは、ほぼ全曲「C-800G」を使ってます。

──これまでいろいろ試した結果、これだと。

MORISAKI はい。「C-800G」に辿り着きました。

──続く「Perfect Weekend」は、《高層ビルの隙間に未来を描いてみたり/うろ覚えの曲とか》など、ヴォーカルのニュアンスが楽曲の個性をさらに引き立てていますね。

MORISAKI そこは録りながらお化粧をしていきましたね。僕の楽曲は日本語の乗せ方がけっこう独特なんですが、そういうところも作家さんが狙って書いてくれています。声の乗せ方のイメージやマイクとの距離感などを、ブースの中で調整しているんです。

──調整する過程で、歌詞にメモを書くことはありますか?

MORISAKI ブレスのタイミングにスラッシュを入れてメモすることが多いですね。あとは“あんまり言葉が聴こえない”と言われたら、その言葉の上に点を打ったりします。

──録っている間にもどんどんアイデアが出てくるんですね。

MORISAKI 「Perfect Weekend」の場合はプリプロをやる時間もあったんですけど、プリプロで“この楽曲はどういう地図を描いてゴールに辿り着こうか”とある程度考えておくことを、僕は「マッピング作業」と呼んでいるんです。

そのマッピングを経て、自分で聴き直したときに感じる“もっとこうしたい”ってイメージを、自分の中で感覚として持っておくようにしています。それから本番を録るときに、使う使わない関係なくバージョン違いのテイクをいくつか録って、どのテイクを使うか考えていきますね。

──こだわりが詰まっているフレーズはありますか?

MORISAKI 「Perfect Weekend」の《キミの肩に寄り掛かって覗く世界は》の最後《寝たふりをしてたんだ》だけ三連符が出てくるんですけど、そこのリズムのはめ方が日本語だとけっこう難しいんです。何回やっても引っ張られちゃって、2番もけっこう時間がかかりました。

──いろんなバージョンを録った結果、テイクはどのように選んでいますか

MORISAKI この楽曲に関しては、作詞をしてくださったEIGOさんにジャッジしてもらってます。ずっとブースの中にいると、客観的に見えなくなってくる瞬間が多いので、そこは任せます。ハモを録るときは全部ひとりでできるので、自分でジャッジしてステレオも録ったりしているんですけど。

──レコーディングで特に時間をかけた曲はありましたか?

MORISAKI 「Perfect Weekend」と「Love won’t die」ですね。「Love won’t die」は、ファルセットと地声がミックスになるところに時間がかかりました。あんまり(声を)張る曲じゃないし、でも抑えながらやるにはちょっと出し方が難しい。ブレスのタイミングもなく一気に歌うところもあったりして、けっこう難しかったです。1番、2番、3番で色を変えたかったので、そこにも時間がかかりましたね。

──“世界中にこのメッセージを届けたい”という思いから全編英語の歌詞になったとのことですが、“大きな愛を歌う”という面でもさまざまなアプローチがあったのでしょうか。

MORISAKI レコーディングって音の乗せ方がちょっと特殊で、感情や気持ちが本当に動いていても顔では表現ができないし、“それ(感情)をいかに音として解釈して届けるか”ということが大事だと思うんです。だから、マイクの乗せ方も息を多めにしてみたり、あえて強めにしゃべってみたり、ピタッと息を止めてみたり、ブレスのタイミングをオケに合わせたり。そういうことを意識して、作品を作っていきました。

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