【インタビュー】MORISAKI WIN(森崎ウィン)、2ndアルバム『BAGGAGE』と独自のヴォーカルケアを語る。“楽曲のゴールまでの地図を描く「マッピング作業」を経て”

取材・文:田代智衣里(Vocal Magazine Web)

調子が良い日は良くなくて、調子が悪い日はもちろん良くなくて、普通の日が一番いい

──「BeFree」は待望のリリースということで、今回CMに合わせて再構築したそうですが、メロディとしてはずっと歌い続けてきた曲ですよね。

MORISAKI いやぁ、これは楽しかったですね! CMのタイアップに合わせてレコーディングし直したので、アルバムを作るタイミングではもうレコーディングは終わっていたんです。レコーディングでは先方のクライアントさんも見に来てくださったりして、再構築するにあたって今までやりたかったことを詰めてみました。ハモのラインも全部自分で考えて、ウーアーを入れたりとか。全部こだわりながら作ることができましたね。

──ここからはヴォーカルケアとトレーニングについてもお聞きしていきたいのですが、これまでヴォイストレーニングは取り入れていますか?

MORISAKI 最近は行けてないんですけど、やっていました。

──ヴォイストレーニングを取り入れたのはいつ頃ですか?

MORISAKI 20歳になる前からやっていたと思います。ただ、忙しくなると通えなくなったりまちまちなんですけど、21〜22歳からはずっと同じ先生でした。でも、その先生が地元に帰ることになり、リモートでしかレッスンをやらなくなって、行けなくなってしまったんです。

──そうだったんですね。同じ先生のボイトレを受けている期間は、どんなトレーニングが重要だと感じましたか?

MORISAKI ヴォイストレーニングは、結局声帯のストレッチなんですよね。歌が上手くなるためのボイトレではなく、声帯を動かして柔軟性を持たせることが重要なんだと思います。そういう意味では、柔軟性を作るという点で先生によってやり方は違えど、言っていることは大体似ているのかなと思いますね。

──ヴォイストレーニングで声帯のストレッチを取り入れてから、どんな変化がありましたか?

MORISAKI ファルセットに変わる瞬間にスーッといけたり、声帯をくっつける強さをコントロールしやすくなりました。

──アーティスト、俳優、ミュージカルと多岐にわたる活動をしているMORISAKI WINさんですが、ハードなスケジュールの中、喉のケアで気をつけていることはありますか?

MORISAKI すごくシビアな人もいますが、僕は逆にシビアにやりすぎると気になって、本番で歌えなくなるんです。僕も今までいろんな方法を試したんですけど、調子が良い日は良くなくて、調子が悪い日はもちろん良くなくて、普通の日が一番いいんですよ。

逆に、普通を定着させることが一番難しい。日によって疲れ具合も違うから、その“普通”でいるために、今日は詰めて仕事しちゃったなって日は帰ってからお風呂に入って、お湯につかって、力を抜いて寝るとか。今日は元気だったから、そんなに気にしなくていいかなとか。日によって変えているんです。

喉って、たぶん気持ちの問題だと思うんですよね。だから“これをしないと寝れない”とか、“この蒸気にあたらないと”とか考えて、気持ちが疲れたと思ったらもう終わりなんです。だから逆に調子のいい日をあんまり作らない。そうじゃないと、調子がいい日以外が全部“悪い”になってしまうから。調子が良すぎてもダメなので、ちょっと疲れさせて普通にしたり。僕の場合の話ですけど、そういうふうにやっていますね。

──いろいろやってきた中で、自分のベストを出せるバランスを掴んでいったんですね。

MORISAKI そうですね。毎日が違う現場だったりするので、臨機応変にやってます。常に自分の身体の調子を確認している感じです。あとは、成功体験を作ることですね。“あのとき(声が)出たんだから、絶対今日も出る、大丈夫”って。

例えば、前にミュージカル『ピピン』で1曲目からいきなりトップの音の“C”をファルセットで伸ばすシーンがあって、“あれ、めちゃめちゃ怖いよ”ってみんな言うんですけど、僕は全然怖くなかったんです。

だけど、回を重ねていくと怖くなってくるんですよ。“今日失敗したらどうしよう”と考えちゃって。でも、絶対失敗はしないんですけど、自分に対して“失敗したらしたで、その日を観れたあなたはラッキーだよね”ぐらいの気持ちでいないと、たぶん呑まれていくと思ったんです。だから、“昨日はこれぐらい伸ばせたから、今日はプラス2秒伸ばそう”と考えたり。ロングトーンの1秒、2秒ってすごく大変なんですけど、そうやって取り組んだりしています。

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