取材・文:後藤寛子
「みずいろの雨」はアルバムの中で1位2位を争う難しさだった
──リリース前に、東京キネマ倶楽部で『流しの OOJA2」 〜VINTAGE SONG COVERS〜 全曲お披露目ライブ』を開催。まずライブでお披露目した理由は?
Ms.OOJA せっかく皆さんがたくさんリクエストを書き込んでくださって、みんなで作ったアルバムという感じがあったし、普通にリリースするのもつまらないなと思って。キネマ倶楽部というまさにぴったりな場所でお披露目したらおもしろいんじゃないかなと思ったんです。実際ライブで初披露してみたら、声とかは出せないんですけど、皆さんが“あ、この曲!”みたいなリアクションをしてくれてるのが伝わってきて、すごく手応えを感じました。新しい曲をやるサプライズ感を楽しみながらできましたね。で、その時に3種類の衣装を着たんですけど、それぞれの衣装に合わせて4曲ずつ歌ったんです。1着目は黒ドレスを着て、「六本木純情」、「飾りじゃないのよ涙は」、「木枯しに抱かれて」、「瑠璃色の地球」で、これはアイドルの曲というカテゴリー。2着目はピンクのワンピースを着て、「プラスティック・ラブ」、「みずいろの雨」、「恋におちて –Fall in love−」、「MIDNIGHT PRETENDERS」で、シティポップ、おしゃれゾーン。3着目はオレンジのセットアップに黒いジャケットで、「木綿のハンカチーフ」、「初恋」、「恋人よ」、「時の流れに身をまかせ」という昭和歌謡ゾーン。そうやって考えると、ちょうどいいバランスで並べられたなあと思いました。
──なるほど。では、その順番に伺うと、まずアイドル曲はいかがでしたか? とはいえ、本当に個性的な曲が揃ってますけど。
Ms.OOJA そうなんですよ。当時のアイドルのアーティスト性というか、楽曲の良さとそれを表現するクオリティの高さがすごいと思いました。1曲目の「六本木純情派」は、子供の頃に本当によく聴いて歌ってた曲なんです。私の中にずっとある、DNA曲って呼んでるんですけど、それくらいの曲なので、1曲目に入れました。改めて向き合うと難しい曲だなと思いましたし、当時荻野目(洋子)ちゃんは19歳くらいだったと思うんですけど、これを生放送でパフォーマンスしてたってすごいですよね。でも、私も3〜40年ぶりぐらいに歌ったのに、やっぱりスムーズに歌えるんですよ。もう体に染みついてるから、プロデューサーも“歌い込んでる感じがすごい”って言ってました(笑)。
──「飾りじゃないのよ涙は」もハスキーヴォイスが素敵でした。
Ms.OOJA 「飾りじゃないのよ涙は」は、私の中ではけっこうチャレンジだったんですよ。今まで歌ったことがないような雰囲気の曲だったので。「六本木純情派」もそうですけど、ちょっとハスッパで強がりな、少女と大人のはざまの色っぽさみたいなものを表現させてもらえたと思います。井上陽水さん作詞作曲で、曲もおもしろいんですよね。それを歌いこなす明菜ちゃんが改めて本当にすごいなと思いましたし。原曲のイメージが強いからこそ、そこにトライしていく怖さもありましたね。
──次のゾーンでいくと「みずいろの雨」も迫力がありました。
Ms.OOJA 「みずいろの雨」は八神純子さんの曲で。前回「想い出のスクリーン」をカバーさせていただいたんですけど、そのあとライブで八神さんと「想い出のスクリーン」を一緒に歌う機会があったんですよ。その時に八神さんがご自分のライブで「みずいろの雨」を歌ってらっしゃって、それがもうめちゃめちゃかっこよくて。ご本人がかっこよすぎて、カバーできるのかなと思ったんですけど、すごく大好きな曲なので選びました。アルバムの中で1位2位を争う難しさだったと思います。でも、歌ってみたらやっぱりすごく楽しいし、難しい曲に八神さんの胸を借りて飛び込むような、そういう楽しさもありました。
──「プラスティック・ラブ」、「MIDNIGHT PRETENDERS」は海外でのシティポップリバイバルの先駆け的な曲で、ダンスミュージックとして解釈する方法もありますけど、歌に軸を置いたアレンジになっていますね。
Ms.OOJA そうですね。あくまで歌で聞いてもらいたいし、私はダンス踊れないので(笑)。でも「MIDNIGHT PRETENDERS」は全部打ち込みになっています。実はThe Weekndがサンプリングするまで知らなかったんですけど、いい曲というのはどこかでまた注目されて、巡り巡って聴かれていくものなんだなあって感じますよね。歌ってみたら、私がクラブで歌っていた時代――2000年くらいに流行っていたJ-R&Bに近く感じて、その頃のことを思い出しました。最初は難しい曲だなと思ったし、私に合うのかな?って思いながらトライした曲だったんですよ。でも、歌ってみたら意外としっくりきて、難しく考えなくても、私が感じたままに歌えば私らしくなるんだなって。意外なマッチングを感じました。