【インタビュー】Novel Core、 ポジティブなメッセージとチャレンジを注ぎ込んだ最新アルバムでのヴォーカルワークを語る
2022.08.21
取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)
自分的にすごく大切な曲ができた
──「HAPPY TEARS feat. Aile The Shota」はAile The Shotaさんとデュエットで、《AURORAがかかるTOKIO》はまさにAile The Shotaさんへのリスペクトを感じました。このフレーズを入れようと考えたきっかけは何だったのですか?
Novel Core 実はその《仲間の歌で涙にじむ夜/AURORAがかかるTOKIO》というフレーズは、トラックが一切できていない、Shotaと曲を作るということしか決まっていない段階で僕が先に出していたリリックで。『THE FIRST』(SKY-HI主催のオーディション番組)が終わったあと、けっこうShotaと一緒にいる時間が長かったんです。彼も『THE FIRST』のShotaから、Aile The Shotaというアーティストとしてのポジションを築いていく中で悩んでいた部分があったし、僕も『THE FIRST』の最中、Novel Coreとしてどう存在感を出すかみたいなことで悩んでいたので、当時お互いによく話をしていて。
その過程を見ていた分、彼がデビューしたことがあまりに嬉しくて。あるとき渋谷の街を歩きながら「AURORA TOKIO」を聴いて、自然と涙が出たんです。その涙が出たことに、Aile The Shotaたちと本当の仲間として接していられていることを実感して嬉しかったですし、なんか“今”というその瞬間を物語る大事な出来事だったので、どうしても歌詞に入れたくなって。涙で目が滲んだから渋谷の街の景色がボヤ〜となって、まるでオーロラがかかったみたいに見えたっていうのと「AURORA TOKIO」をかけて書いたリリックなんです。
──Aile The Shotaさんの歌声がこういう感じだから自分はこう歌おうといった、相手の声によって自身の歌唱アプローチを変化させた部分はありましたか?
Novel Core Shotaとの場合は、もともと声が混ざったときの相性が良さそうだなと勝手に予想していたので、逆に自分がなにか変えるというより、いつものテンションを大事に歌っていきました。ただ、チャーチーな雰囲気の楽曲に対して、Shotaがすごく表情豊かにヴォーカルアプローチをしてくれたので、僕もちょっと今までやったことのない、もう少しブラックミュージックに傾倒したタイプのラップを取り入れてみました。
──具体的にはどんなイメージでした?
Novel Core 軽くレイドバックしつつ(リズムを)ゆったり取りながら、メロディとラップがいい具合に混ざっていて、という感じ。ローなテンション感のラップは意外とやったことがなくて、「DOG」みたいなアタックの強いラップが多かったので、ああいうちょっと歌うようなラップは今回初めて挑戦できました。
──この曲は、Matt CabさんとAile the Shotaさんとの3人でどのように作っていったんですか?
Novel Core MattさんにBMSGの事務所に来ていただいて、Shotaと3人でのセッションを2、3回やりました。曲のテンション感を決めるところからのスタートだったので、僕がなんとなく頭の中にイメージしていた、ピアノがタンタンタンと刻んで始まるとか、ブラスやオルガンっぽいテイストも入れたいという話をして、そのあとビートを組みながらメロディのアプローチも相談して作っていきました。
──曲を作るときはセッション形式がメインですか?
Novel Core そうですね。最近はもう全部セッションで作ってる感じです。
──そっちのほうがアイディアが生まれてくるような感覚がありますか?
Novel Core もともとあるトラックでやる場合もあったりするんですけど、でもやっぱりイチから作っていくことが自分的にすごく楽しいですし、想像してた以上のモノができることがあるので、それがすごいいいなと思って。セッションが好きですね。
──最後の「Untitled」なのですが、編集部内を仮説を立てていて、そちらをお伝えさせていただければと思うのですが。
Novel Core おお〜。
──8曲目の「Skit」にアナログのレコード針の上がる音が入っています。つまり作品としてのアルバムは「HAPPY TEARS」で終わっていて、「Untitled」はレコードとは違う世界線にあり、レコードを聴き終えたNovel Coreさんが部屋で歌っているのでは、という仮説を立ててみたのですが……。
Novel Core だいぶすごくないですか。もうほぼ正解と言っていいです(笑)。「Skit」はカセットの音を入れているんですけど、まさに再生ボタンを停止するみたいなイメージで、「HAPPY TEARS」と「Untitled」の間に少し時系列の差があるというか。「Untitled」は“自分がもし明日死ぬとしたら、今日なにをするか”という普遍的で本質的なテーマと向き合った曲だったので、もっと先の世界線、未来で歌っているイメージがあって、それこそ自分が人生を終える瞬間とかに歌っている曲だなと思って。未来の僕が、2ndアルバムを聴き直して「HAPPY TEARS」を聴き終えたら、カチャッと再生を止めて「Untitled」に行くっていう、その時系列の差が欲しくて入れた「Skit」だったので、まさにそう。そんな深く聴いていただけて嬉しいです。
──ギターをオーバーダビングしている部分もありますが、Novel Coreさんがクマガイユウヤさんと一緒に弾いてるんですか?
Novel Core ギターはやってみたことはあるんですけど、僕はFコードで挫折した身で……そこに関しては仮説失敗でしたね(笑)。ただ、最後のダビング部分は僕からクマさんにオーダーさせてもらったんです。“もう少しこういうイメージで”だったり、“少し拍をゆったりとったバージョンが欲しいです”というのをいくつか提示させてもらって、現場で録った5本ぐらいのテイクのうち一番ベストなものをチョイスさせてもらいました。
──クマガイユウヤさんはワンマンライブのバンドメンバーですが、そもそもどんなきっかけでこの曲を作ることになったのですか?
Novel Core もともと、6年前渋谷の路上で一緒にやっていた響さんがワンマンのドラムを叩いてくれるとなったときに、クマさんは響さんから紹介してもらって。話を聞いたら、同じような時期に同じようなエリアでストリートをやっていたんです。当時交わっていたかもしれない人とまたこうして音楽の上で繋がりあえてるっていう、この奇跡のような感動は、今作で『No Pressure』と言い切るにあたりすごく必要なパーツな気がして。もともと入れる予定はなかったんですけど、ワンマンが終わるタイミングでクマさんにオファーして、急遽やりたいとねじ込ませてもらった曲です。
──この曲があることでまたアルバムの見え方が変わりますよね。
Novel Core そうですね。より世界観の深みが増したかなと思いますし、自分的にすごく大切な曲ができたという気持ちです。前作でいうと「THANKS, ALL MY TEARS」ができたときのような感動があって、歌詞を書きながら涙が止まらなかった1曲で。
──歌詞に《寂しい日》や《最終回》という言葉がありながらも、すごく優しい歌い方をされてるところが印象的です。この独特の感覚を表現するために、他のトラックとあえて変えたことはありますか?
Novel Core 最初にお話したように、マイクはノイマンのビンテージマイクを使っていて。もともとギターの音を録る用に用意したマイクだったんですけど、エンジニアのHIRORONさんが“これたぶん声もいいと思うんだよな〜”って言ってくれて、ヴォーカルも録ろうという話になりました。自分的にも細かいヴォーカルのアプローチがすごくしやすかったです。あと一番こだわったのは、ワンテイクで録ったこと。頭から最後のハミングの部分まで1回もカットせずにつるっと歌ったので、本当に集中力が……(笑)。
──つるっとを何回も?
Novel Core つるっとを3回録りました。1テイク目でもうほとんどオッケーで、数箇所だけ差し替えはあったんですけど、ほぼ直すところがなかったです。ピッチ補正もやっちゃうと曲の良さが減る気がするねという話になって、そのままの質感でミックスしてもらって、かなり録り音に近いものになってます。