【インタビュー】関取 花、原点あり進化ありのニューアルバムに込められた多様な歌表現を語る。“会いたい人にも、会いたい自分にもきっと会える”

2022.07.16

取材・文:田代智衣里(Vocal Magazine Web)

骨や身体で響く音が単純に変わることもあって、こんなに違うんだと

──少し遡ってお聞きしたいのですが、実は私、『閃光ライオット』(2019年開催・10代限定の夏フェス)の会場で初めて関取さんの歌声を聴きました。当時、大人数の前でライブをするのは初めてだったとのことですが、ステージに出る前に“すごく口角が上がっちゃう”とワクワクした様子だったと思うんです。

関取 あぁ〜、すごく楽しかった記憶があります。

──ライブに対しては昔から緊張やプレッシャーはなく、楽しいという気持ちで溢れていましたか?

関取 当時は今より、もっともっとそうでしたね。歌うときに、何も考えていなかったです。レコーディングをしたことがない時期で、客観的に聴くことがないので余計に、“ここをこう歌おう”とか、“語尾を短くしよう”とか考えないんです。映像を撮ることもなく、ただの大学生だったので本当に何も考えずに歌っていましたね。

──連載コラムでは音楽番組に出演した際に、場数が足りないこともあって悔しい思いをしたというお話もありましたが、それは音源よりも生音で歌うほうがしっくりくるからなのでしょうか?

関取 そうです。ずっとライブをやってきたので、音源に合わせて歌う場数が少ないんですよね。アコギが繋がっていないのに音が鳴るし、ドラムもなるべくマイクに入らないようにしているけど聴こえるじゃないですか。自分の中で何がなんだかよくわからなくて、身体で感じられないから“心ここにあらず”みたいな感じだったんです。

──生演奏の場合はそもそも緊張というより、ただただ歌う喜びがある?

関取 生演奏のほうが緊張しないですね。バラエティ番組のときに生演奏で歌わせていただく機会があったんですけど、それは全然緊張しなかったんです。もちろん始まる前は“すごいセットだ”とか、“芸能人だ”とか思うんですけど、始まってギターを持てばライブなので、楽しむほうが勝ちますね。

──歌い方について悩んだ時期に、体験レッスンで初めてヴォイストレーニングを受けたとのことですが、先生から“綺麗なミックスヴォイスだ”と言われたときは新たな楽器を手に入れた思えたと語っていましたね。

関取 ほぼ体験だけで、5回も行ってないと思います。いつもと違う歌い方で歌ってみたら、ミックスヴォイスだと言われましたね。“今まで黒しか着ないと決めていたのに、黒の服を全部洗濯しちゃったから仕方ないけど白のTシャツを着ようかな”みたいな感じで、家でしか着ていないような服をぱっと着てみたら、“白めっちゃいいじゃん”って言われたみたいな感覚です。“私、これ似合ってるの?”と。

でも、誰かが良いと言うことは試さないわけにはいかない。お洋服だったら、そこから新しいファッションが広がるじゃないですか。

──体験レッスンを受けたことで、新たに取り入れたことはありましたか?

関取 すごく覚えているのが、最初にお会いした瞬間に、私の顔を見てすぐ、“もうそれじゃ歌えないわよ”って、“今、歌える気持ちじゃないでしょ”って言われて。見るだけでわかるんですよね。たぶん、全部の重力が下にいってるような表情や姿勢をしていたんですよ。

そのときに口角を上げて歌ってみたら、全然響きが変わったんです。骨や身体で響く音が単純に変わることもあって、こんなに違うんだと思いましたね。今でもレコーディングでは、明るい曲だったら口角を上げて歌うことを意識しています。

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