【インタビュー】関取 花、原点あり進化ありのニューアルバムに込められた多様な歌表現を語る。“会いたい人にも、会いたい自分にもきっと会える”

2022.07.16

取材・文:田代智衣里(Vocal Magazine Web)

基本的には何回も録りたいと思うことはない

──「道の上の兄弟」は書き下ろし楽曲でもありますが、「ミッドナイトワルツ」からの流れで声色の変化を明確に感じました。

関取 確かに声色の違いがわかるかもしれません。書き下ろしさせていただいた番組は、お笑い芸人のミキさんの番組だったんですよ。私はお笑い芸人さんをすごくリスペクトしているので、漫才やM-1の映像を観たりしました。

兄弟で同じ道を歩いて、何かひとつの目標に向かっていくことってそんなにないと思うんですよね。小さい頃に2人でやっていた記憶があるから、ご一緒に芸人の道に行かれたのかなとか、いろんなことを想像しながら書きました。

──「障子の穴から」はまた別の人格が歌っているように感じたのですが、いつ頃作った曲でしたか?

関取 この曲ができたのは20代前半ぐらいだと思うんですけど、すごく覚えているのは、作ったときに二日酔いで泥のように寝ていたんです。そのとき和室ではなかったんですけど、6畳のワンルームに住んでいて、西日の入る部屋でした。昼過ぎまで寝て、夕方西日に照らされているときの感覚のまま作りましたね。

“昨日って楽しかったんだっけ?”とか、“何やってんだろ?”みたいな、二日酔いの正体不明のドロドロしたものが渦巻いていて、何か吐き出したいという気持ちで昔作っていました。

──「モグモグしたい」のお腹が鳴る音から始まる可愛らしいアレンジも印象的です。デモを作る際には、どのくらいの時間がかかったものでしたか?

関取 この曲を書いたのは、たぶん10分ぐらいですね。曲尺ぐらいしかかかっていない気がします。

──今回のアルバムに収録する曲は、数ある候補の中から選んだのですか?

関取 もっとデモはあったと思うんですけど、その中から17曲まで絞ってプリプロをしました。そこから17曲は多いからどれをクビにするか、楽曲クビ裁判を全員でやりましたね。これは私が決めるというよりも、バンドのグルーヴ、いいプレーができそうか、エンジニアさんの中で絵が見えるか、音作りが似ていないかなどを考えながら、全員で決めていきました。1曲ずつクビにする楽曲をみんなで発表したら、やっぱり合致する部分がありましたね。

──レコーディングではツルッと録ることが多いとのことですが、昔から何回か録りたいと思うことはなかったですか?

関取 基本的には何回も録りたいと思うことはないです。自分に飽きちゃうんですよ。でも、2日連続レコーディングがあったり、1日に3曲録らなきゃいけないときは喉が疲れているので、喉を使う曲を1曲ツルッと歌うのは大変だから少し録っては水を飲んだほうがいいと思ってやってみたんですけど、良くなくて。結局使わなかったですね。

──昨年、ピッチ修正もエフェクトも一切なしの「金魚の夢」をリリースしていますが、今作においても、できるだけピッチ修正はしない方針でしたか?

関取 直していないほうだと思いますね。「季節のように」は一発録りなので、「金魚の夢」と一緒で物理的に直せないこともあります。バンドメンバーも、いい意味で同じことを2回できないタイプの人たちなんです。頭でガチッと考えてきたフレーズを自分の描いている譜面通りに叩くというより、その場のテンションやノリ、感覚で演奏するので、私だけ直すとすごく浮くんです。自分はそういう音楽をあまり聴いてこなかったのもあって、肌に合う感じがしますね。

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