【インタビュー&撮り下ろし写真】宮本佳林が語る、多彩な歌表現の源にあるポリシー。“未完成でもいいというアイドル感はいらない”

取材・文:田代智衣里(Vocal Magazine Web)
撮影:松井伴実

ユニゾンのときは、モノマネをするぐらいの気持ちで歌う

──ハロー!プロジェクトに加入したタイミングで、理想とする歌手像はありましたか?

宮本 ハロプロエッグに入ったときは小学4年生なので、ただ目立ちたいという感じなんです。“月島きらりちゃんが可愛い! あの人になりたい!”みたいな感じで。歌手としてではなくキラキラした存在になりたいという感じで、確定的な理想像はなかったですね。

──活動していく中で、理想像が見えてきた瞬間はありましたか?

宮本 私がハロプロエッグに入ってすぐの頃は高橋愛さんと田中れいなさんがツートップの「愛れな」世代だったので、“プラチナ期のモーニング娘。になりたい”という感じでした。

それは今でもずっと変わっていないというか、あそこは越えられないなって。そう思っちゃいけないし、越える越えないでもないんですけど、あれはずっと目標なんだよなって思います。

──特にどんな部分に憧れていましたか?

宮本 あのときのモーニング娘。さんは、コミカルで面白い曲も多かったんです。最先端の音楽というよりは、民族的な楽器が入っていたり。そういう曲がみなさんの料理によって、めちゃめちゃカッコよくなるんです。コミカルな曲も120%面白くやることで、もはやカッコいいんです。

そういうことを忘れてはいけないと思うのは今も変わらないし、当時も憧れていたところですね。

──その表現を見ていて、どんなことが必要だと考えていましたか?

宮本 やっぱり、テクニックがないといけない曲が多いと思いました。特に面白くする曲はわざとヘタに歌っているように聴こえさせたり、ビブラートができても、ここで使ったら面白くないからやらないとか。

音程は外してないんだけど、カラオケでいうとフォールと呼ばれるようなテクニックや、こぶしを入れるとか。そういうところをすごく見ていましたね。ここでこんなアレンジをするんだなぁと。

──プライベートで聴く音楽はどんなものでしたか?

宮本 高校生まではロック系をよく聴いていて、中でもOKAMOTO’Sさんのアルバム『OPERA』がすごく好きでヘビロテしてました。同じくらいの時期に初音ミクやボカロにもハマったんですけど、今でもボーカロイドをよく聴いています。

──普段聴く音楽が、自分の歌唱に影響することはあるのでしょうか。

宮本 歌に関しては、私は人の影響を受けるタイプじゃないと思います。影響を受けるというよりは、自分の歌を聴いて悪いところを直していくイメージですね。

でも、昔は感情派で、本番では音程を気にし過ぎないようにしていたんです。私は音響や環境によって音程が狂いやすいんですけど、昔は狂いやすいことにも気づけていなかったんですよ。だけど今は1人になったので、そういう部分も意識するようになってきたと思います。

──2021年12月にソロ名義で初となる1stシングル「どうして僕らにはやる気がないのか(2021) / 氷点下 / 規格外のロマンス」を発表し、今回2ndシングルがリリースされます。ソロになってから意識が変わった部分はありますか?

宮本 これは当たり前のことなのかもしれないんですけど、グループにいたらそのグループでどこのピースにハマればいいのかが一番大事なんです。

自分自身が目立つことも大事なんですけど、自分が悪目立ちしたり、全力を出し過ぎて空気に合わなくなるほうがマイナスイメージになる。そのグループで一番良いピースにハマればハマっているほど、評価は上がっていくと思うんですよね。

でもソロはまた違って、曲の中で自分自身がどれだけ最大限に輝けるか、自分自身を発揮できるかみたいなところがあるので、そこが変わったと思います。

──グループで歌うとき、メンバーの声色に合わせて自分の歌唱を工夫することはありましたか?

宮本 プロのみなさんが曲と歌割りを決めてくれるので、声色が合わなそうな曲は本当にパートがないんです。だけど気にしていたのは、同じ音程の声を出しても、下の倍音が多い子と、上の倍音が多い子がいることです。

下の倍音が多い子と上の倍音が多い子が一緒にユニゾンを歌うと、ピッチは合ってるんだけど、なんかズレてるように聴こえちゃうんですよね。

声帯がみんな違うからしょうがないんですけど、私はユニゾンのときは、モノマネをするぐらいの気持ちで歌ってました。“あの子が一番声が出る子だから、あの子のモノマネをして歌おう”って思うぐらいの気持ちでいくと、すごくユニゾンが揃うんですよ。

──倍音の位置をメンバーの声に合わせて調節していく?

宮本 たぶんそういうことなんだと思います。ただ、私はモノマネをしても声が特徴的だからか似過ぎなくてちょうどいいんです。それがコツでしたね。

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