【インタビュー】清水美依紗、メジャーデビューまでの道のりと追究し続けた“歌の感情表現”を語る

2022.05.1

取材・文:田代智衣里(Vocal Magazine Web)

“作っている声ではなく、心からくる声”というものに今度はすごく憧れを持った

──最初に喉を傷めず歌えるようになったタイミングでは、身体のどこが変化したと感じましたか?

清水 体幹です。ダンスもそうですけど、緊張していると身体が浮いてる感じがするんですが、体幹をトレーニングしてるとグッと締まるというか。中の筋肉の使い方がすごく大事だなって。

──普段から体幹トレーニングをルーティーンに取り入れていますか?

清水 はい。ニューヨークから帰ってきて2年間、ほぼ毎日トレーニングしています。

──毎日どのくらいの時間をトレーニングに充てているんですか?

清水 時間は決めずに、やろうと思ったときにやっています。たまに“今日追い込むぞ”ってときは頑張るんですけど、そういう気持ちで続けようと思うと続かないので、30秒だけ体幹したり。どんどんタイムが伸びていくたびに、“身体が変わって軽いけど、ちゃんと軸は座ってるな”と感じたりします。筋トレは本当に裏切らないですね。

──身体の使い方が上手になってきたと感じたのは、いつ頃でしたか?

清水 高校2年生から3年生の間なので、留学する1〜2年前ぐらいです。ちょうどHIP-HOPダンスを始めた時期で、それからすごく歌いやすくなったんです。音楽が身体に乗っていると感じた時期に、一番歌が変わりました。

──ダンスはもともと好きでしたか?

清水 ダンスはすごく好きで、もともとクラシックバレエもやっていました。クラシックバレエをやめたあとに、器械体操もやりましたね。やっぱり踊りたいって気持ちが強かったので、高校生になってから地元のHIP-HOPダンスクラスに通い出して、それからすごく変わりました。“あぁ、歌ってフィジカルと繋がってるな”と。

──HIP-HOPダンスを踊ることで、リズムも入ってきましたか?

清水 入りました。歌では声を追究していたので、カラオケで歌っていても自分の声しか聴いてなかったんですけど、ダンスレッスンを始めてから変わりましたね。ダンスって音ハメ(音取り)があるじゃないですか。“ベースやビートの音を聴かないと鳴らない”ということが学べて、そこからリズムというものが大好きになりました。

──身体の使い方を習得したことも大きな変化だったと思うのですが、そこからさらに表現力を育てたいという思いで留学されたと。当時、自分では足りないと感じる部分があったのでしょうか?

清水 当時いろんな番組に出演させていただく中で、自分は歌がうまいだけで終わってるんじゃないかって。自分の中で勝手に“ただ歌をうまく歌う子”だと思うようになっていたんです。実際に表現力があるかと言われたら、技術を見せるように歌っていて、歌詞のことをあんまり考えていなくて。

──『THEカラオケ★バトル』で優勝するなど、高校生で音楽番組に出演していた時期ですね。

清水 “シャウトで歌ってるのに、なんでここまで心にくるんだろう?”って思う人がいるじゃないですか。でも、そういう人はやっぱり歌詞をすごく大事にしていて、歌詞を届けようとしてるからそういう声になっている。だから“作っている声ではなく、心からくる声”というものに今度はすごく憧れを持つようになりました。それで、ミュージカルのような歌い方に挑戦してみたいと思ったんです。

──先日の『ミュージックステーション』でDREAMS COME TRUE「未来予想図II」を歌唱していましたが、清水さんの歌の情景が鮮やかに伝わるのは、表現について追究してきたからこそだったのだと感じます。留学してから、表現はどんなふうに変化していったのですか?

清水 一番大きかったのは、演技の授業を受けたことです。それまで演技はまったくやったことがなかったんですが、ミュージカルといったら基本が演技なので、ストーリーテラーになる必要があります。歌は役として歌うし、歌詞は全部セリフ。英語もあまりしゃべれなかったので、まずは英語の台本を読むことから始めて、言葉を伝える大切さを学びました。

──学んだことで、今でも続けていることはありますか?

清水 ミュージカルの曲も、邦楽も洋楽も、全部共通して歌わずに歌詞を読むことです。初めてもらった曲もまずは歌詞から読むようにしますし、歌う直前にも必ず歌詞を読みます。この間のMステで歌ったDREAMS COME TRUEの曲も、歌詞をずっと読んでいましたね。

──歌詞を読み込んで気持ちを整えることで、自然と音も変化して出てくるようになるということなのでしょうか?

清水 そこを私もすごく悩んだんですけど、自分が役に入ったり、歌を歌っているときにまず考えるのは、環境を作ることです。だからMステのときは、《卒業してから もう3度目の春》と言ってるときに、ちょうどイメージしやすい桜のセットが置いてあったんですよ。セットを置いたり、イメージを何か形として自分の頭の中に置くだけでその場で話しているような感覚になるので、アメリカの授業でも“歌う前に環境を作れ”と教えられました。

本当に気持ちが入らないときは、その歌詞を汲み取って環境を作ることから始めれば、目をやったら自分が置いたものがあるからイメージが湧きやすい。本当に役者っぽいと思うんですけど、アメリカで演技を学んだことが、歌に繋がっていると感じます。

──頭の中のイメージだけではなく、実際に見える物を置いて環境を作ることで、表現力が深まっていったのですね。

清水 授業でモノローグをやるときには、まずは目の前に人を置いて、その人に訴えかけるように話してみたりしていました。目の前の人が相槌を打ったりすることで、自然と“一人しゃべりしてます感”が出ずにちゃんと物語に入れたり、誰かにフォーカスを当てられるというか。歌も同じで、届けたい人を実際に一回置いてその感覚を味わったからこそ、イメージしやすくなると思います。

──留学中に学んだことが、今の歌の表現に大きく影響していますね。

清水 歌詞をまったく気にしなかった私が、ここまで歌詞や表現、届けたいことに真剣になれました。もっと音楽が楽しくなりましたね。

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