【インタビュー】Rin音が語る、13曲すべてが新曲となったニューアルバムでの挑戦と、二面性へのこだわり

2022.04.20

取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)

今作のリリックは「二面性」。表ではひとつのストーリーになっているけど、裏では自分の叫びを書いている

──楽曲制作はスマホを使ってトラックにメロディをつけていくと聞いたんですが、メロディは直接「声」で入れていくんですか?

Rin音 もうほんとフリースタイルで、宇宙語みたいな感じで乗せていくんです。韻を踏みたいけどすぐには浮かばないので、 “ンーンーンー”とかでリズムをとって、自分が一番気持ちいいと思う流れが4小節でも決まったら、さらに展開させていったり、または歌詞を書きながら作ってます。

──メロディを作るうえで意識するのはどんなことですか?

Rin音 “ここのタイミングでこういうこと言ったらカッコいいな”って思ったらやっぱりそれを立たせたい。カッコいい、カッコいい、が続いても目立たないので、波を作るべきなんです。それに、立たせるところ以外もスマして意外とすごいことをしていたい。曲としての完成度を上げるためにそういうところは模索してますね。

──メロディは今もスマホのGarageBandで?

Rin音 そうです。全部スマホのGarageBandで。

──歌録りは自宅ですることもあると聞きましたが、使っているマイクやオーディオインターフェイスを教えてください。

Rin音 マイクはノイマンTLM102っていうちっちゃいやつです。インターフェースはApogee Symphony Desktopに繋いでます。

──機材にあまりこだわりはないですか?

Rin音 正味、何でも良いです(笑)。僕は音質を聴き比べる耳は正直備えていないので、もちろんこだわれるだけこだわったほうが良いと思うんですけど、今は自分のリリックの伸びしろや、ミックスでどう聴かせるかのほうにこだわってます。

──リリックは楽曲全体のテーマから決めていきますか? または、韻や描写といった細かいところから書き始めていくのですか?

Rin音 大まかに言いたいことは決めたりしますけど、途中で違うワードやパンチラインが浮かんだら、全体的にテーマを変え直すこともあります。

──トラックメイカーの方にはどんなふうにお願いしていくんですか?

Rin音 リファレンスがあればそれを送ったり、例えば「snow jam」では「冬のイメージが良いです」、「頭から入りたいです」などを伝えました。でも僕自身、音楽理論にはまったく詳しくないので、大まかにイメージを伝えて、それを再現していただくという感じです。

──例えばアルバムの「悪運星人」は、トラックは明るいのに歌詞の世界観はちょっと負の部分が入っていて、トラックとリリックの世界観をどう作っていくのか気になります。

Rin音 トラックが明るいと、全面的に明るい曲を書くのが苦手なんですよね。スーパーハッピー野郎になっちゃうから、それはちょっと嫌なんです(笑)。今回のアルバムは「二面性」や「噂」をテーマにしているので、リリックも二面性でいけたらなと。普通に読み解いていくと、ちゃんとひとつのストーリーになっているんですけど、裏テーマとして、僕の感情が混ざった別の素顔になってるんです。

「悪運星人」は、ある日起きたらエイリアンっぽい外見になっていて、ソイツが普段の生活の中で恋愛で悩んだり、でも中身は変わってないのに……っていうことを歌っている曲で。でも裏テーマでは、一時期、僕が変わったって言われてたんですよね。「snow jam」が出てからお願いするトラックメイカーさんも増えて、曲調も変化する中で、昔のほうが良かったっていう意見もあったりして。でも、それは聴き馴染みがあるからであって、変化は常にしていくものじゃないですか。それに、リリックで伝えていることとか、根本的なところは変わっていない。“中身は変わってないのに”っていう自分の叫びを裏では書いてるんです。

──韻や言葉にもそういったところが反映されてるんですか?

Rin音 韻は昔っぽい踏み方をしたんですよ。変わったって言われたから、“変わってねーよ”っていう意味を込めて、昔のようなわざとらしいけど聴き心地の良い韻の踏み方をしました。自分なりの抵抗なんです。あと、言葉遣いはふたつの意味でも取れることを意識していて、でも、単に別の意味で取れたら良いというわけではなくて、ストーリーにならないと意味がない。なので、言葉のチョイスは気をつけました。

──エイリアンという切り口からRin音さんの創造性を感じますが、歌詞の世界観はどんなところから影響を受けますか?

Rin音 ゲームや映画が好きでそこからも影響を受けていますし、あと、僕はしょうもない想像をするのが好きなんですよね。それこそ“もし明日急にめっちゃ髭生えてきたらどうしよう”とか(笑)。エイリアンになったらどうしようっていうのも、その延長ですね。暇なときに考えちゃうんですよ、それが災い転じて福となしてます(笑)。

──それぞれの楽曲の中で、自分なりのギミックを求める?

Rin音 そうですね。やっぱり「二面性」っていうのはあります。(アルバムの)「Myth」という曲が僕の中では一番、二面性を出してるんですけど、表では普通に恋愛の歌、ワンナイトラブの歌なんですよ。福岡が舞台で、特徴的な女の子が忘れられないよっていう曲なんですけど、裏ではシンプルに僕が主人公のストーリーで、アーティストに対する嫉妬を描いている。この曲を書いた時期にけっこう落ち込むというか、他の人がすごく見える時期で。“なんでこんな歌詞を書けるんだろう”、“なんでギターを弾けるの?”、“めっちゃ歌うまいの羨ましいな”とか……そういうジェラシーが溜まっていたので、それを曲にしたいと思ったんです。でも、表立って言えるほど僕は素っ裸人間ではないので、どうにかカモフラージュしようと表向きはワンナイトラブの曲にして、裏ではあるアーティストに対する嫉妬を描いた曲になってます。

──確かに、《こう歌えたらなんてって思う朝が来て》や《あのアーティストほどうまく歌えない》というフレーズは特に心に残りました。

Rin音 本来ならさっと聴き流しちゃうような歌詞ですけど、自分自身にコンプレックスがあったり、悩んでる人だったら気づいてくれるかなって思ってるんです。そういう人に刺さってくれたらいいな。

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