取材・文:後藤寛子
キャラソンの歌唱はすごく緻密な作業だけど、同時にそこが面白さでもある
──アーティスト・内田真礼のほかに、キャラクター名義でのキャラクターソングもたくさんリリースされていますが、歌うときの気持ちは違うものですか?
内田 全然違いますね。自分の曲の場合は「もっとここを鋭くしたい」とか自分のやりたいことをいろいろ考えるんですけど、キャラクターソングのときは、役に向き合って、役のことを一番に考えて歌っています。キャラソンは、上手ければいいものではないと思っていて。上手に歌えたから正解ではなくて、キャラの個性が見えることが一番なので、下手でもいいし、変な尖り方をしていてもアリだし、喋れていなくてもアリだと思うんですよ。キャラソンの一番重要なポイントは、歌詞がよく聴こえることなので。アーティストとして歌うときは、歌詞がよく聴こえてくるとすごく声優の曲っぽくて、それが良くもあり悪くもある部分なんですけど。特にキャラソンはそれがいいのかなと思っています。歌いやすいと思えない曲のほうがキャラソンっぽかったり、無理しているぐらいで当然っていう。
あと、キャラクターのテンション感を表現したいと思ったときに、彼女たち、彼らに合わせて、セリフでの音とちょっとでもズレたら違って聴こえるので、そこも合わせていきます。だから、私の中でキャラソンの歌唱はすごく緻密な作業なんですけど、同時にそこが面白さでもありますね。
──いろんな要素を組み立てて作り上げていく感じなんですね。
内田 そうですね。私はキャラソンから歌い始めたので、逆にアーティストとして歌うとなったときのほうが大変でした。このキャラクターはこういう子だからこの音でいこうとか、頼っていたものがなくなっちゃったから。でも、やっていくうちに自分の歌唱が見えてきて、差別化できるようになりました。
──技術として、キャラクターの声にあてに行くときのコツはあるんですか?
内田 私の場合は、まずセリフをしゃべってみるんです。まだ実際に演じていなかったらちょっと大変だけど、もう演じたことのあるキャラクターだったとしたら、そのときの──「こんにちは」でも「ねえ」でもなんでもいいんですけど、いつも言うセリフを1回しゃべってから歌うと、同じ音になるので、そういう方法がいいかなと思いますね。いわばチューニングですよね。ひと言でも発したら「ここだな」っていうのを口が思い出すというか。でも、それが喋ることはできても、歌うポジションじゃないかったりするのでけっこう大変なんですよ。ボイトレで、その声の出し方はなかなか歌いづらいよって言われたりして。だから、声優ってすごいなあと思います(笑)。
──まさにそう思います(笑)。
内田 キャラソンの歌唱は技術で作っていることが多いので、プロの仕事だなって思うひとつですね。もしかしたら私がそういうやり方でやってきちゃっただけで、もっと楽に自分の歌いやすいところで歌うことも可能かもしれないんですけど、私はけっこうこだわり症で、こうしたいという気持ちが強いんです。あと、その役のときにいるスタッフさんと会うとその音になることも多いです。この人がいる現場はだいたいこのキャラ、みたいなことがあるので、男の子の役をやっている現場の人と会うと自然に男の子っぽい感じでしゃべっていたり、キャラのほうに寄っていくんですよね。現場に行った時点で、すでに役にちょっと入ってるみたいな感じがあります。
──面白いですね。喉の形状記憶というか、メモリーが呼び出されていくみたいな。
内田 そうそう。脳内にあるんでしょうね。
──では最後に、具体的に喉のケアに関して意識されていることがあれば教えてください。
内田 1日を過ごす場所の中で、私にとって寝室がいちばん重要なポイントなので。寝室には、のど飴やのどぬ~るスプレーみたいな喉ケアグッズと、加湿器とかをいっぱい置いています。やっぱり、朝起きたときに乾燥していると1日ダメになっちゃうんですよね。だから、とにかく寝室の環境を整えていて、一番のマイスペースとして出来上がっています(笑)。マメに掃除するとか、すぐに窓をあけて空気が澱まないように、ほこりっぽくならないようにするとか、そういうものも大事だと思います。ほこりっぽいところにいると、すぐに喉がやられちゃうので。あと、好きなものを置いたりして、メンタル的にも癒される空間にしていますね。最近、すごくキレイに光る加湿器を買ったんですけど、それだけでもちょっとハッピーになれました(笑)。
リリース情報
13thシングル「聴こえる?」
2022年4月20日(水)発売
【初回限定盤(CD+BD)】
PCCG.02133/2,200円(税込)
<封入特典> フルカラーブックレット 特典Blu-ray
<Blu-ray収録内容>「聴こえる?」Music Video/off shot/Making of Music Video
【通常盤(CD)】
PCCG.70495/1,400円(税込)
<封入特典> 描き下ろしアニメイラストアナザージャケッ ト
<CD収録曲>
01. 聴こえる?
作詞:林 英樹 作曲・編曲:佐藤純一(fhána)
02. Sensation Dancin’ Show♪
作詞:織田あすか(Elements Garden) 作曲・編曲:近藤世真(Elements Garden)
03. 聴こえる? -Instrumental-
04. Sensation Dancin’ Show♪ -Instrumental-
プロフィール
内田真礼
2012年に立て続けにアニメのヒロイン役を演じブレイクし、2014年には「第八回声優アワード」にて新人女優賞を受賞。同年4月にTVアニメ『悪魔のリドル』OPテーマ「創傷イノセンス」でアーティストデビューを果たす。精力的なアーティスト活動で、これまでに武道館公演やZepp全国ツアーなどを成功させた。去年10月27日には3枚目のアルバム『HIKARI』を発売。シングルは5月に発売した「ストロボメモリー」以来、11ヵ月ぶりの発売となる。
公式サイト http://uchidamaaya.jp/
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