取材・文:後藤寛子
これまでの“内田真礼の楽曲”にない世界観だからこそ、「どうですか?」と問いかけてみたい
──歌詞には《My pretty ghost》など『社畜さんは幼⼥幽霊に癒されたい。』とリンクするようなワードもありつつ、全体的に背中を押してくれる力強さがありますよね。歌詞についてはどんな印象を受けましたか?
内田 作詞の林(英樹)さんからは、両方の意味にとれるようにしたというふうに伺いました。私自身のことのようにも聴こえるし、作品の世界のことのようにも聴こえるし。聴き方によって、たとえば《もう一人の私》っていうフレーズに、私を感じるのか、作品の中の幼女幽霊ちゃんを感じるのかで、聴こえ方が全然違うと思います。どちらにしても、その時々で聴いている人の支えになってくれる歌詞です。あと、MVで映像がつくとよりメッセージが届く曲なので、MVで見ると感じ方も変わったりすると思います。もちろんアニメーションのエンディングとして聴くと、また違うだろうし。それぞれに寄り添ってくれる曲になっていると思います。
──『社畜さんは幼⼥幽霊に癒されたい。』には内田さんも倉橋さん役で出演されていますが、本当に働く女子を癒してくれる作品ですよね。
内田 そうですね! 本当に癒される作品なんですよ。オープニングからエンディングまで、とにかく自分を肯定してくれるんです。肯定されたいときに見ると、「ああ、よかった」って思えると思います。特に、最後に毎週「可愛い」っていう言葉のナレーションがつくんですよ。先行公開されたPVでは大塚明夫さんが読んでくださっているんですけど、あの一言を聴くだけで、自分が言われているみたいな気持ちになれます(笑)。毎週違う、素敵なナレーションが入るので、ぜひチェックしてほしいですね。とても温かくて、みんなが肯定してくれて「ここにいたら大丈夫だ」って思わせてくれるようなアニメになっています。現場の雰囲気もすごくよくて、そういう空気から出来ている作品なので。その空気をみなさんにお届けできるのが嬉しいです。
──内田さんご自身が共感できるところとか、癒されるポイントはありましたか?
内田 私が演じている倉橋さんは、職業がイラストレーターで、自宅作業が多い人なんです。〆切に追われて、何時になっても仕事しなきゃいけないから「もう無理!」みたいになってるんですけど。その姿を見て「わかるなあ~」と思いました(笑)。私も「今から明日の準備しないといけないけど、もう無理かも……」と思うときはあるので。でも、倉橋さんちにはリリィっていう幼女幽霊がいて、リリィがその限界ギリギリのところを助けてくれるというか、ちょうどいい塩梅で甘やかしてくれるんですよ。アニメの収録は朝だったんですけど、収録があった日は一日元気でした。「今日も癒されたなあ~」っていう感じになれたので、みなさんにもその気持ちがわかっていただけると思います。
──そして、「聴こえる?」のカップリング曲はElements Gardenが手掛けた「Sensation Dancin’ Show♪」です。クールさとポップさのバランスがいい攻めた楽曲ですが、言葉数も多いですし、何人も内田さんがいるような多彩な声色で表現されていて、難易度は高かったんじゃないですか?
内田 そうですね。この曲は、ハモりも全部録ったのでけっこう大変でした。でも、歌っていて楽しかったです。歌詞の意味以上に、メロディ自体の気持ちよさがあったので、そのあたりを意識して歌いました。あんまり歌詞がしっかり聴き取れなくてもいいくらいの気持ちで歌ったので、《プチプラネイル~》の部分とか、すぐには聴き取れないですよね(笑)。スルッと耳に入ってくるけど、よく聴くと、「あれ? けっこうリアルなことを歌ってるな」と気づくかなと思います。イメージしてる世界としても、今の20代前半の方の生活にスポットを当てて作っていただいたので、今までの私の楽曲にない世界観なんですよね。なので、私もそのメンタルに合わせて歌うのではなく、わりと俯瞰で歌ったんですけど、それがなんだか新鮮でした。
私の楽曲って、曲と歌と全部で「内田真礼です!」みたいな歌が多いんですよ。シングルでもアルバム曲でも、とにかく私がそのときに考えていることを歌詞にしてもらうことが多かったので、「みんなと一緒にいたい」「もっと声を出して歌いたい」とか、そういう想いが軸になっていたんです。でも、この曲はそうじゃないんですよね。ライブで歌うのも楽しそうだなあと思います。
──「この気持ちを伝えたい」という曲じゃなくて、楽曲を楽しみながら表現したという?
内田 いえ、伝えたいこともかなりあるんですよ。この曲は、日本のどこかにいる人、頑張ってる人をテーマに作成しました。歌うときに「私はちょっと内容に共感できないんですけど、本当にこの歌詞を歌って大丈夫ですか?」って相談したら、「今の人は意外とこういうふうな考えの人が多いから大丈夫ですよ」って言われて、「そうなんだ!」って。だから、私はみんながこの曲を聴いてどういうふうに思うか、この曲を聴いてどう思うかを語り合いたいんです(笑)。「どうですか?」っていう問いかけでもあるというか。
──なるほど(笑)。
内田 私が二十歳くらいの頃、もうとにかくがむしゃらに頑張るみたいな感じで。私も最初は1Kの部屋に住んでいたんですけど、そこを城にしようは思わなくて、むしろ早く大きくなりたい!次はどこへ住もうって未来への希望でいっぱいでした。何かつらいことがあっても、つらいイコール成長への一歩!と思って気合いで頑張って、どんどん上に行くぞっていうタイプだったんですよね。
──そうなると、リリース後のリアクションが楽しみですね。
内田 そうですね。歌詞をしっかり見ていただいて、「そうそう!」って共感する人が多いのか、そこはすごく話したい。20歳ぐらいの人に、「わかる!」って言われたいですし、「そうなの?」ってちょっと討論会をしたいですね(笑)。でも、面白かったし、この歌詞を歌うことで、今の世の中を切り取ったような気がしました。「聴こえる?」と、この「Sensation Dancin’ Show♪」の2曲が繋がることで、やっぱりみんな癒しがほしいことも見えてくるし。2曲とも、「今が大事なんだ」と思える曲なので、今を肯定してあげて次へ向かう力を感じてほしいです。