【インタビュー】内田真礼 今を受け入れ、その先へ。新作に込めた想い、喉ケア、歌い分けの極意……歌へのこだわりを語る

2022.04.15

取材・文:後藤寛子

『中二病でも恋がしたい!』の小鳥遊六花役や『約束のネバーランド』のノーマン役など、数々の人気アニメで幅広い役柄を演じている声優・内田真礼。2014年にアーティストデビューして以降、3枚のアルバムをリリースするなど歌手活動も積極的に行なってきた彼女が、2022年初となるシングル「聴こえる?」をリリースする。

表題曲「聴こえる?」は、自身も出演しているTVアニメ『社畜さんは幼女幽霊に癒されたい。』のエンディングテーマ。華やかなホーンのアレンジで彩られたサウンドとともに、優しさと力強さが共存した歌声が誰しもの背中を押してくれる1曲だ。カップリングの「Sensation Dancin’ Show♪」では、疾走感溢れるファンクナンバーに乗せて、ささやかな幸せを謳歌する女子心をポップに表現。2曲合わせて、全力で「今」を肯定してくれるパワフルなシングルに仕上がった。

実は3rdアルバム『HIKARI』より前に完成していたという今作に内田真礼が込めた想い、そしてリリースを前にして感じる変化とは? さらに、自身の楽曲とキャラクターソングなどを歌いわける声優ならではの極意や、喉のケアなどについても語ってくれた。

“私は私のままでいてもいいんだ”。『HIKARI』ができて、この曲を歌ったときの自分も肯定できるようになった

──「聴こえる?」は、前向きなパワーに満ちた楽曲で、エンディングテーマを担当しているTVアニメ『社畜さんは幼⼥幽霊に癒されたい。』と紐付いたものでありつつ、昨年10月リリースのアルバム『HIKARI』とも地続きな印象を受けました。

内田 「聴こえる?」のレコーディングは、実は『HIKARI』の前に行ったんですよ。『HIKARI』には入っていないんですけど、そのすぐあとに「フラッシュアイデア」というアルバムの曲を録ったので、順番的には本当に『HIKARI』のいちばん最初の曲くらいのイメージですね。

──なるほど。逆に「聴こえる?」から『HIKARI』に繋がっていったんですね。

内田 そうですね。この曲に関しては、自分の中で“しっかりと気持ちを落ち着けて歌っている曲”という印象があります。それまで私は、活動を通して「聴いて聴いて!」とか「こういうことがあって、だからみんなとこういうことしたいんだよー!」っていうコミュニケーションの取り方をファンの方たちとしてきたと思うんですよ。そうすることで、恥ずかしかったり、照れてしまったりする部分を払拭してきたんですけど。この曲は、そういうところをいったん自分の中にグッと飲み込んでから表現したというか。己と向き合って、自分の力でチャンスを掴むみたいな曲になっていると思います。これまで進んできて出来上がった地盤の上で歌っているようなところがこの曲の魅力になっているかなと思いますね。

──その変化はどういうところから?

内田 楽曲自体がすごく難しくて、ふわふわして歌うとなんだかボケちゃいそうだなっていう印象があったので、ちゃんと一音一音歌うことを意識しないといけないと思ったんです。fhánaの佐藤(純⼀)さんからこの楽曲が届いて、「とりあえず歌ってみましょうか」って歌ってみたときから、もう「難しい!」って思って。「どこがサビですか?」「どこまでがどう繋がってるの?」みたいな(笑)。でも、歌って向き合っていくうちに、「あっ、そういうことか」っていうのが見えてきました。今改めて出来上がったものを聴くと、かなり壮大な楽曲になっているので、自分の歌が土台となって、どんどん広がっていったような感覚ですね。

レコーディングのときって、私が歌ったあとの編曲だったりマスタリングの作業はスタッフさんにお願いするかたちで曲が出来上がっていくじゃないですか。それを今回「あとは頼む!」という感じですべてお任せした結果、私にない部分が増えたというか。だからこそ広がったと思うので、ある意味自分のチームへの信頼感が表われた曲かもしれないです。真礼チームという布団に包まれてるみたいな(笑)。こういうかたちに辿り着いたんだなと思うと、その力をすごく感じますね。今の世の中、コロナ禍以降は誰しもひとりで考える時間が増えたと思うんですけど、この曲が、そんなときに自分と向き合うことで強い自分になって、またさらに次に向かっていくためのきっかけとか手がかりになるいいなと思います。聴いてくださる方にとって、そんな1曲になってほしいですね。

──レコーディングした当時と、結果的に『HIKARI』というアルバムを挟んでリリースを迎えた今と、楽曲の印象は変わりましたか?

内田 そうですね。この楽曲のあと、『HIKARI』は昨年8月の終わりくらいまで収録していたと思うんですけど、録っていく中で、「私はこうだなあ」というのがわかってきたんですよ。その「結局、私はこうだ」に辿り着くまでの1ヵ月がけっこうしんどかったんですよね。自分のことを理解して、自分を受け止められると「じゃあ、私は大きな海のような存在になろう」「心を広く持とう」って思い始めたりするじゃないですか。でも、この曲を歌ったときは、まだやっぱり「私の心は小さいなあ」と思って悩んでいたと思います。でも、「いろんな自分自身がいて、私は私のままでいてもいいんだ」という想いを込めた『HIKARI』というアルバムができて、「聴こえる?」をレコーディングしたときの自分も肯定できるようになりました。それで、すごく大きな曲に聴こえるようになったんだと思うんですよね。レコーディング当初は、もっと小さく歌ってたような気もするんだけど……たぶん、自分の視界が広くなったのかなと思います。

──当時は力を入れて歌っていたような感じだったわけですね。

内田 「頑張って歌ったー!」っていう記憶が強かったんですけど、自分を認めたことによって、バーッと楽曲の世界が広がったような気がします。いつもそんなことを繰り返していますね。今回は制作からリリースまで約1年かかっているので、特に感じるのかもしれません。今は、早くライブでもこの曲を歌ってみたいなと思っています。

──もっとのびのび歌えるようになってるかもしれないと。

内田 そうですね。自分自身を曲の中にちゃんと置けるようになっているかな。やっぱり、バタバタしてる状態にいると、なんとなく「これで合ってるかな?」ってちょっと不安に思いながら時が進むときもあるじゃないですか。今は、改めてしっかり向き合えている気がします。

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