【インタビュー】松下優也が挑んだ初の邦楽カバー作。ヴォーカリストとして俳優として培ってきた歌唱の魅力に迫る!

取材・文:藤井 徹(Vocal Magazine Web)

ミュージカルで一番大事にしているのは、台詞から歌をシームレスにすること

──ヴォーカル・マガジン・ウェブとして、俳優もされている方のインタビューは初めてなんです。例えばミュージカルと歌手における、声の出し方や歌唱面で異なる部分などについて、松下さんから教えていただけないでしょうか?

松下 これ、難しいですね。表裏一体っていうか、一緒なんですよ。俺はまったくの別物としては捉えてないので。違いがあるとしたら、自分の場合は役者をやっていて“台詞の声”と“歌”っていうのは絶対違います。“歌”はやっぱり“歌”だから、例えばめちゃくちゃお酒を飲んだ次の日に、抜群に声が出るかっていうと、そんなわけないと思うんです。どんなヴォーカリストでもそうだと思います。

だけど芝居だけをやるっていうんだったら、どれだけ二日酔いで声が出なくても、芝居はできるんですよ。別に音符を当てられているわけじゃないから、それはいけるんです。ということは、二日酔いでもできちゃうぐらいの“芝居”っていう中身の部分を、キーを合わせた“音楽”に乗っけると、めっちゃ最強だと思うんですよね。

──なるほど。

松下 これは例え話ですが、ミュージカルをやっていると、譜面があれば初見で歌えるすごい人っていっぱいいるんですよ。自分は楽譜も読めないし、それは本当にすごい技だなと思います。ただ、きっとその人たちにも悩みがあると思っていて……それ以上に行かない。要は譜面を追って歌うことはできるけど、そこに中身が伴ってるかどうかはまた別の話だなと。そこは(歌をやってきた)自分の一番の強みかなと思いますね。“ここ(芝居)だけじゃない”っていうこと。歌い方で言うと影響を受けたものがR&Bとかにあるので、大きな違いはそこかな。

正直、役者だけやるときには、あまり声のことを考えないです。逆にストレートプレイ(注:台詞に音楽などを用いない会話劇)の現場で発声練習している人を見て「(この人)何してるんだろう?」って思うぐらいなんで(笑)。ジンクスでやらないと気持ち悪くてやっているんだったら、それでいいと思うんですけど。だって普段生きていて、発声してから人としゃべらないじゃないですか。

──そうですね。やらないです。

松下 (リモート取材のため)さっきシャワー浴びて、今こうやってしゃべってますけど、発声して取材を受けてないのと一緒。でも、歌はそういうわけにはいかない。夜は勝手に声が起きてくるからいいですけど、ミュージカルの舞台は昼の12時とか午後1時から本番があったりするので、遅い時間に起きられないじゃないですか。ある程度早い時間に起きないと声の立ち上がりが悪くなりますし、2幕くらいからやっと声が出だす、みたいな(笑)。

自分がミュージカルをやっていて一番大事にしているのは、台詞から歌をシームレスにすること。詳しく言えば“歌の終わりから次の台詞への繋ぎ目をできるだけ見えなくすること”ですね。それはテクニックのひとつです。“本当に感情を乗っけること”も大事だし、“より感情をそこに乗っけてるように聴かせる”テクニックもあると思うんで。いろんな歌唱のテクニックはあるけど、それを使って感情を見せる、みたいな。そういうのもあるかもしれないですね。

──舞台俳優を志す読者の方もいると思うので、とても参考になるお話です。ありがとうございました。松下さんは、声の準備という点では、普段どんなことを行なっていますか?

松下 きっと歌手を志す人も読まれていると思うので、“こういう人もいるんだ”っていうことで聞いてほしいんですけど、自分は2年半前ぐらいに鼻中隔湾曲症になって鼻の手術を受けたんですね。それで一気に歌が伸びたんですよ。手術自体はそんなに大変じゃないんですけど、本当に歌えるようになるまで2ヵ月ぐらい安定させる時間が必要になるんです。でも長い人生これからずっと歌っていくことを考えると、その2ヵ月ぐらいどうってことないなって。もし自分と同じように鼻中隔湾曲症でお医者さんに手術を薦められている場合、自分でもそのほうがいいと思うんだったら、全員が全員に合うとは思わないけど、自分はやってよかった人だったんで、手術をやるべきだって思いますね。

──病気で声のコントロールが思うようにならなかった部分が、手術することで改善されたということですよね?

松下 そうです。声の響きもそうだし、鼻がしっかり使えることによって息もコントロールしやすくなったから無駄に息を使わなくなりました。声の色もいろんな表現が作れるようになったし、自分の場合は本当にやって良かったと思います。鼻っていうのが自分にとって重要なポイントだと思っているんで、鼻うがいも日課ですね。

──喉という部分ではどうですか? 飴とかドリンクとか。

松下 普段から常に水分を摂るようにしています。舞台本番のときはスロートコートも飲みますし、吸入器も持ち歩いています。それから、眠るとき自然に口を開いていることがあるから口にテープを止めて寝ています。歌う時期は毎日ですね。

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