取材・文:鈴木 瑞穂(Vocal Magazine Web)
撮影:HayachiN
2022年1月26日(水)、結成15周年を迎えたSCANDALが10枚目となるオリジナルアルバム『MIRROR』を発売した。コロナ禍の中、これまで以上に自分たちらしさを表現した作品となっている。
その中でも注目すべきはHARUNAの歌声。これまでのパワフルな歌い方だけでなく、今作では、“33歳のひとりの女性”として歌うありのままの姿が映し出されている。
15年の活動の中で、HARUNAが考え続けてきた“自分らしいヴォーカル・スタイル”への葛藤と挑戦。そして今作を通して、自分自身と向き合い見えたものとは──。
そんなHARUNAの今の想いについてじっくり聞いた。【最後にプレゼント情報あり】
デビューしたあと、バンドサウンドの中での歌い方に悩んだ時期があって、その時はちょっとつまずきました。
──まずはSCANDAL結成15周年を迎えての、HARUNAさんのヴォーカルスタイルの変遷について聞かせてください。もともとどんなヴォーカリストに影響を受けてきましたか?
HARUNA 歌手になろうと思ったきっかけが安室奈美恵さんやSPEEDだったので、カラオケに行ったらその方々の曲を歌ってました。あと洋楽だとマイケル・ジャクソン、アース・ウインド&ファイアーあたりが好きなので、そういったところから影響を受けていたりします。
──SCANDALは、通っていたダンス&ヴォーカルスクールで結成したそうですね。そこではビヨンセやアリシア・キースなどを歌のお手本にしていたと聞きました。
HARUNA 実際にレッスンで使う曲はそういった洋楽歌姫系の楽曲が多かったので、自然とすごく喉を開く歌い方を習得していたなと思います。
──バンドスタイルでやっていくことになったときはどのように感じましたか?
HARUNA バンドになるからと言って、何がどう変わるのか、そのときは深く考えられていなくて。だからそれまで習ってきたことをバンドでもそのままぶつけてました。でもデビューしたあと、やっぱりバンドサウンドの中での歌い方に悩んだ時期があって、その時はちょっとつまずきました。
──デビュー当初はソウルフルな歌い方をしていますよね。
HARUNA 2、3枚目のアルバムまではわりとそういう歌い方をしてると思うんですけど、だんだん自分の歌い方とバンドサウンドとのアンバランスさに違和感を感じてきてしまって。それでボイトレに通い直して、歌い方を変えていきました。
──歌い方を変える。大きな決断ですね。
HARUNA “変えなきゃいけなかった”というのが正直なところで、今までのソウルフルな歌い方で歌いづらくなってしまったんですよね。違和感を感じたことで、実際に歌うことが苦しくなってしまったので、強制的に歌い方を変えないと、このまま歌い続けていけないなと。
──歌いづらさというのは?
HARUNA もう高音が出ないとか、声を出すにもすごく身体が痛くなっちゃって、歌うのが本当に苦しかったんですよ。でも、喉の検査をしてもまったく異常がない状態だったので、けっこう精神的な部分が大きかったなと思いますけど。
──それでボイトレに通い直したんですね。そこではどんなトレーニングを?
HARUNA 10年近く通ってるボイストレーナーの先生がいるんですけど、身体を伸ばしたりストレッチしたり、筋トレに近いことをしながら声を出すんです。ピアノに合わせて声を乗せるボイトレではなくて、違う動作をしながら楽に声を出すトレーニングを教えてもらってます。
──面白いですね。実際にどんな変化があったんですか?
HARUNA 別の方向に意識が向いていると意外と楽に声が出たりするんですよ。だから“高音を出さなきゃ”と思って声を出すより、“わ〜この動きキツい!”と身体を動かしながら、それでも音階は鳴っている状況で声を出すほうが、精神的には楽なのかもしれない。
──新しい発見ですね。
HARUNA そうなんです。それで“ほら、意外と楽に声出るじゃん!”と思えると、またそれが自信に繋がったりして。今でもその先生のところに通い続けてます。バランスボールに乗りながら歌ったり、毎回キツいんですけどね(笑)。