取材・文:藤井 徹(Vocal Magazine Web)
走ってる人にしかわからない表現をしたい。
──そして「黎明」も新曲ですね。ここで《唄い続けるよ100年先も》と歌われていまして、肉体は消えても歌は残るんだなって改めてハッとさせられました。リアルタイムシンガーソングライターに先の話を聞くのはどうかと思うんですけど、自身の楽曲が残るということも含めた未来の理想像はありますか?
高橋 本当に1日でも1秒でも長く、他のどのシンガーよりも長く歌っていたいという気持ちですよ。健康年齢なんていうじゃないですか、シンガー年齢みたいなものがあるとしたら、自分はけっこう元気だけが取り柄みたいなのもあるんで、健康でいて、いい声で歌っている時間をできるだけ長く保つということはひとつの目標ですよね。
──今から想像はしづらいかもしれませんが、50代はこんなことを歌ってるのかなとか、70代はどうだろう? 90歳になったら自分は何を歌うんだろうみたいな想像はできますか?
高橋 今が、まだ疑問とか怒りとかばっかりなんです、自分の中にあるのが。喜びもそうだけど、どれもまだ渦中というか、走っている最中みたいな気持ちなんですよね。だから走ってる人にしかわからない表現をしたいと思ってるんですけど。まあ80、90になったぐらいのときは、もう少しそれを俯瞰して「そんな時代もあったよね」みたいなことが歌えていたら少し幸せなのかなと思うんですけど。もしかしたらその歳になっても岡本太郎さんみたいに「ふざけんな!」みたいなことをやり続けていたり、もっと研ぎ澄まされていっちゃってるのかもしれないですよね(笑)。
──可能性がありますよね。まあ一般的な話ですけど、人は年寄りになってくるほど頑固になりますから(笑)。
高橋 そうなんですよね。そういえば、ちょうどこの間『風とロック芋煮会』でBRAHMANのTOSHI-LOWさんと怒髪天の増子(直純)さんとその話をして。「おじさんって、ふたつに分かれる」と。「頑固になっていっちゃう人と、おばさんになってくる人がいる」って。昔は、威厳があってけっこう尖ってたような人でも、「お〜〜い、ゆうく〜〜ん」みたいになっていく、何でも許せるようになっていくおじさんと、許せなくなっていっちゃうおじさん。それだったら僕は許せるおじさんになりたいんですが、それとこれとはまたちょっと違うなとも思ってて。音楽を作る上では尖ってていいって思ってるんですけどね。なんか……怒る人、嫌いなんですよ、僕。
──もちろん、歌で怒りを表わす人とは別ですよね(笑)。
高橋 そうそう。日常生活で怒る人とか、すごい嫌なんですよ。だから柔らかい人間にはなっていきたいなと思いつつ……わかんないですね、どんな90歳になっているか。
──これまでもそうでしたけど、あんまり「振り返る歌」ってやりたくない感じなんですかね?
高橋 そうですね、振り返るのも嫌なことのひとつというか。
──振り返るよりは、今から先だったり前だったり?
高橋 今の自分のマインド的にはそうですね。「今までこうだったじゃないか」っていうのを、歌にしてもMCにしても、自分のこういう取材時に表現する言葉にしても、なんかおじさんになって過去の話をするのが一番嫌な……(笑)。いや、やってる人はいいんですよ、別に。それで聞いてくれる人たちがいて、「そうだったんですか、すごかったんですね〜」みたいな。いや実際すごかったんだと思うんですよ。すごい話を過去に持っている人たちは。武勇伝を語るみたいな。僕なんてすごいことはまだ何ひとつしてないから。振り返る過去なんて本当にただ弾き語り続けてきただけなんで。過去なんて僕は消えていくものだと思っていて、大事なのは今しかないと思ってるんですよね、常に。例えば恋愛とか、振り返ることが美しく見えるような表現があるならいいなと思うんですけど。この「黎明」に関しても、どちらかと言うと振り返るというよりは、また夜明けを待ってるじゃないですけど、未来を見据えてる感じにしたかったので。まだ振り返りはいいかなって感じですね。
──《唄い続けるよ100年先も》というのは、100年先に生きてるかどうかはわからないわけですけど、歌が残るという意味合いはありますか? それとも自分と肉体が一緒になっている感じですか? この表現的には。
高橋 「会う度にはじめましてみたいに戻ってリセットされている」って最近誰かが言っていたんですよね。友達とかと会うときに「あの人って会う度にまた最初からなんだよね」みたいな。で、それを面白いなと思っていて。人ってお別れのとき寂しいじゃないですか。寂しいのが不安になったりするんですよね。もう会えないかもとか、次会ってもそれこそまたリセットして、何年後かに会ったら「どうやって呼び合ってたっけ?」とか。「ライブってこの人どうやって盛り上がるんだっけ?」っていうのが、また人間関係が始めからとかゼロになっちゃって、お互いのことを忘れちゃってるとか。そういうことで別れ際っていろんな不安とか寂しさを感じるのかなと思ったことがあったんです。
この「黎明」っていう曲はまさしく日付変更線とともに、また愛情も何もかも変わってしまう。寝て起きたら昨日の気持ちなんて忘れちゃってる。昨日のライブの情熱とか、ウォーってやったことなんてだんだん薄れていって、日常生活のなんてことない景色に埋もれていって、わからなくなっていっちゃう。そういうことに対しての抗いを歌いたかったんですよね。「そうだ」って言うんだったら、僕のことをまた忘れちゃうんだったら、また次に会ったときにゼロから告白して「高橋優って言います、あなたのことが大好きです。歌を歌ってるから、あなたに愛を届けるよ」って。《唄い続けるよ》っていうのは、《何度でも出会い直すよ》とか《何度でもあなたに「はじめまして」するよ》というような、どこかファンタジーというか。そんなチャンチャラきれいごとって言われるようなことかもしれないけど、僕はそれをどうしても歌いたいと思った。それを《唄い続けるよ100年先も》っていう言葉にしたんですよね。
──100年先というのは比喩に近いというか、ゼロになっても、また100にするし、またゼロでも100……みたいな。
高橋 そうですね。そのときに会っても、また高橋優として出会ってるから。生まれ変わりとかいろいろ言う人はいるかもしれないですけど、どんな形であれ歌声があなたに届いていて、それであなたの不安とか寂しさがちょっとでも和らぐのであれば、そういう言葉をあなたに届けるよというような想いですかね。
──ファンにとって一番温かいメッセージですよね。それでは最後に、この15周年の活動に向けてひとこといただけますでしょうか。
高橋 とにかく僕の場合はライブ意識が強いので、12月26日から『自由たる覚悟、然として奏ず』というツアーをやるので、ライブに足を運んでいただけたら嬉しいですし、高橋優をここで知っていただいて、好きになってもらえたら嬉しいなって願いを込めています。また、このベスト盤とともに、ライブ盤の『基礎からの高橋優【バンド式】(Live)/と『基礎からの高橋優【弾き語り式】(Live)というのを配信でリリースしているので、いろいろ聴いていただいて、もしよければライブに来ていただければすごく嬉しいです。
リリース情報
15th ANNIVERSARY BEST『自由悟然』(読み:じゅうごねん)
2025年12月10日(水)リリース
CD購入リンク:https://takahashiyu.lnk.to/Jugonen

【通常盤(3CD)】
品番:WPCL-13714~16
価格:4,950円(税込)
【収録曲】※全仕様共通
■DISC1:優勝盤
01. こどものうた
02. 素晴らしき日常
03. 現実という名の怪物と戦う者たち
04.陽はまた昇る
05. 微笑みのリズム
06. BE RIGHT
07. 裸の王国
08. 明日はきっといい日になる
09. Mr.Complex Man
10. 象
11. ルポルタージュ
12. 高野豆腐〜どこか遠くへ〜
13. STARTING OVER
14. one stroke
15. あいのうた
16. リアルタイムシンガーソングライター
■DISC2:優遇盤
01. 駱駝
02. 福笑い
03. 一人暮らし
04. 同じ空の下
05. がんばれ細野さん
06. CANDY
07. 虹
08. プライド
09. 美しい鳥
10. いいひと
11. アスファルトのワニ
12. ピーナッツ
13. 現下の喝采
14. エンドロール
15. 未刊の行進
■DISC3:優男盤 ※やさおばん
01. ヤキモチ
02. 8月6日
03. 産まれた理由
04. BEAUTIFUL
05. ロードムービー
06. 若気の至り
07. 非凡の花束
08. PERSONALITY
09. ever since
10. HIGH FIVE
11. 勿忘草
12. キセキ
13. はなうた-pray for Akita-
14. 黎明

【初回限定盤A(3CD+1BD)】
品番:WPZL-32233~36
価格:8,250円(税込)
※Blu-ray:高橋優15th ANNIVERSARY SPECIAL LIVE IN AKITA「~弾き語り続ける人間展2025~」秋田県立体育館公演を収録(公演2日間の内、1日分を収録予定となります)

【初回限定盤B(3CD+1BD)】
品番:WPZL-32237~40
価格:8,250円(税込)
※Blu-ray:高橋優 LIVE TOUR 2025「ARE YOU HAPPY?」宇都宮市文化会館公演を収録

【初回限定盤C(3CD+1DVD)】
品番:WPZL-32241~44
価格:7,150円(税込)
※DVD:高橋優15th ANNIVERSARY SPECIAL LIVE IN AKITA「~弾き語り続ける人間展2025~」秋田県立体育館公演を収録(公演2日間の内、1日分を収録予定となります)

【初回限定盤D(3CD+1DVD)】
品番:WPZL-32245~48
価格:7,150円(税込)
※DVD:高橋優 LIVE TOUR 2025「ARE YOU HAPPY?」宇都宮市文化会館公演を収録
<店舗別オリジナル特典>
対象店舗にてメジャーデビュー15周年記念ベストアルバム『自由悟然』をご予約・ご購入いただいたお客様に先着で下記特典をプレゼントいたします。
Amazon.co.jp:メガジャケ
セブンネットショッピング:サコッシュ
楽天ブックス:アクリルキーホルダー
※さらに楽天ブックスでご購入いただいたお客様には楽天ブックス限定オリジナルデザイン配送BOXで商品をお届けいたします。
全国CDショップ・ネットショッピングサイト共通特典:ステッカー
※一部のCDショップ(およびネットショッピングサイト)では特典プレゼントを実施していない場合がございます。
※一部のネットショッピングサイトでは、「特典付き」と「特典なし」のカートがございますのでご注意ください。
※特典は数に限りがございます。無くなり次第終了となりますので、お早目のご予約をお勧めします。
※特典に関するお問い合わせは、直接各CDショップ(およびネットショッピングサイト)にてご確認ください。
ライブ情報
<高橋 優 15th ANNIVERSARY SPECIAL LIVE TOUR 2025-2026「自由たる覚悟、然として奏ず」>
<2025年>
12月26日(金)秋田・あきた芸術劇場ミルハス 大ホール
12月27日(土)秋田・あきた芸術劇場ミルハス 大ホール
<2026年>
1月9日(金)東京・LINE CUBE SHIBUYA
1月24日(土)大阪・フェスティバルホール
1月25日(日)大阪・フェスティバルホール
1月31日(土)香川・サンポート高松
2月15日(日)埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
2月21日(土)宮城・東京エレクトロンホール宮城
2月23日(月・祝)岡山・倉敷市民会館
3月7日(土)富山・新川文化ホール
3月8日(日)長野・上田市交流文化芸術センター(サントミューゼ)
3月20日(金・祝)三重・クラギ文化ホール (松阪市民文化会館)
3月21日(土)愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
4月11日(土)群馬・高崎芸術劇場 大劇場
4月18日(土)福岡・福岡市民ホール 大ホール
4月19日(日)佐賀・鳥栖市民文化会館
4月25日(土)岩手・盛岡市民文化ホール 大ホール
4月26日(日)青森・弘前市民会館 大ホール
5月9日(土)静岡・静岡市清水文化会館(マリナート)
5月13日(水)神奈川・カルッツ川崎
5月17日(日)福島・いわき芸術文化交流館アリオス アルパイン 大ホール
5月24日(日)千葉・市川市文化会館
6月6日(土)京都・文化パルク城陽 プラムホール
6月7日(日)奈良・なら100年会館 大ホール
6月13日(土)島根・出雲市民会館
6月14日(日)広島・上野学園ホール
6月20日(土)沖縄・アイム・ユニバース てだこホール
6月27日(土)熊本・熊本県立劇場 演劇ホール
7月4日(土)北海道・旭川市民文化会館
7月5日(日)北海道・カナモトホール
高橋優 15th ANNIVERSARY SPECIAL LIVE TOUR 2025-2026「自由たる覚悟、然として奏ず」特設サイト:https://fc.takahashiyu.com/feature/15thlivetour2025-2026
*公演詳細、チケットの最新販売情報はこちらから
秋田CARAVAN MUSIC FES 2026
日程:2026年9月26日(土)、2026年9月27日(日)
場所:秋田県にかほ市・象潟グラウンド
URL:https://acmf.jp/2026/
プロフィール

高橋 優
1983年12月26日生まれ。
秋田県横手市出身。札幌の大学への進学と同時に路上での弾き語りを始める。
2008年に活動の拠点を東京に移したのち、2010年4月のデビュー前に「福笑い」が東京メトロCMソングとして大抜擢される。
7月シングル「素晴らしき日常」でメジャーデビュー。2013年11月24日初の武道館公演を敢行し大成功を収める。
2015年7月25日秋田県より「あきた音楽大使」に任命される。2016年9月3日、4日地元秋田県・横手市にて初の主催となる野外音楽フェス「秋田CARAVAN MUSIC FES 2016」開催。毎年開催するほどの人気フェスに成長。(2020/2021は新型コロナの影響もあり未実施)
2022年2月に東京2020オリンピックの野球日本代表“侍ジャパン”の密着ドキュメンタリー『侍たちの栄光~野球日本代表 金メダルへの8か月』のテーマソングとして書き下ろされたデジタルシングル「HIGH FIVE」を発売。同年9月に柳葉敏郎、藤あや子、佐々木希といった秋田出身の著名人をゲストに迎えた「秋田の行事(feat.柳葉敏郎, 藤あや子, 佐々木希 & 秋田県人会)」を配信。その後、3年ぶり・5回目となる野外音楽フェス「秋田CARAVAN MUSIC FES 2022」を北秋田市にて開催し、10月に約2年ぶり8枚目のアルバムとなる『ReLOVE & RePEACE』をリリース。
2022年の年末から2023年にかけて、全国ツアー「ReLOVE & RePEACE ~ReUNION~」でファンとの「再会」を叶え、2023年6月のツアー「ONE STROKE SHOW〜一顰一笑〜」最中にNHK夜ドラ「褒めるひと褒められるひと」の主題歌として書き下ろした「spotlight」をリリース。
10月には楽曲「雪月風花」もリリース。
2024年3月には配信シングル「キセキ」(TBS 『news23』EDテーマ)をリリース。
7回目となる野外音楽フェス「秋田CARAVAN MUSIC FES 2024」を2024年9月21日、22日にて能代市で開催。
2025年1月22日(水)に2年3ヶ月ぶりとなる9枚目のアルバム『HAPPY』をリリース。最新アルバム『HAPPY』を掲げてのライブツアー「ARE YOU HAPPY?」を2月22日より全国28会場30公演開催。7月21日にメジャーデビュー15周年を迎えた。









