【インタビュー】高橋 優 15周年を飾る3枚組ベスト『自由悟然』がいよいよ発売。歌唱、歌のテーマ、新曲についてなど、多面的に聞く!

取材・文:藤井 徹(Vocal Magazine Web)

刊行はされていないけど、奇跡体験を僕らは歩んでいる。

──アルバムに戻りますけど、新曲が収録されています。まず「未刊の行進」から。これは「どんな人も自分の人生の主役なんだよ」と背中を押してくれる、優しくて強い応援歌ですね。この「未刊」っていう言葉を「未完」でなく、刊行するとか発刊するという「刊」の字を当てた発想はどこから?

高橋 サビの歌詞で《世界中の辞書にない言葉を発明して愛の歌を唄おう》とか、《世界中の地図にない道をぼくらの足跡で結んでいこう》みたいな、要はまだ誰も経験したことがない、最新を我々は今生きているわけじゃないですか。言っちゃえば当たり前なんですけど。それだけでちょっと特別な気持ちになれる気がするんですが、どうもそうではなくて。誰かのほうがすごいとか、過去のほうがすごいとか、若いほうがいいとか、今の自分がすごくないっていう風に考えることが、皆さんすごく上手な気がするんですよね(笑)。どうしても「今の自分はすごくない」っていう考え方って溢れているじゃないですか。

──そうかもしれないですね。

高橋 全員が大谷翔平さんじゃなきゃいけないわけないのに、「大谷翔平さんはすげえな」ってみんな言う。それは素晴らしいことだと思うんですけど、別にホームランを打てたり投げるのが得意じゃなくても、例えばライターさんのように文章を書けることでもすごいし、その一人ひとりの例えば背丈とか体質とか体格とか、育った場所とか違うのに、これをやってるって実はすごい。その人を本にしたらすごい名著が生まれるかもしれないし、その一人ひとりの人生を映画にしたら素晴らしいものになるかもしれないけれど、「まあ、そうじゃないっすよ」ってみんな言いがち。かくいう僕も、そんなに自分のことを特別だと思うことが少ないし。今回ありがたいことに『奇跡体験!アンビリバボー』のエンディングテーマソングとして書かせてもらっていたりもするので。奇跡体験の話をしたら、別に飛行機が墜落して生き残ったとかじゃなくても、今日ここに生きてるだけでも生き残ったのと同じ価値があるし、今日生き残ったって素敵なことじゃないですか。「刊行はされていないけど、奇跡体験を僕らは歩んでいる」という曲になればいいなと思って「未刊の行進」というタイトルにしました。

──ヴァースの部分では仕掛けもあって、音で聴いても何を言っているかがわからないけれど、歌詞カードを読むと日本語のローマ字を逆さに読んで歌っていたことがわかります。これはどういう発想で考えられたんですか?

高橋 サビで《世界中の辞書にない言葉を発明して愛の歌を唄おう》っていう歌詞があるんです。だけどそうは言っても、どんな言葉を書いても世界中にある気がしたんですよね。もしかしたら「これも誰かやってるのかもな」とか思ったりしたんですけど、まあひとつ、ジャブじゃないですけど「本当にない言葉で歌ったな」っていうシーンが欲しかったんですよ(笑)。だから「え!? な、何語これ?」みたいな。たぶん何語でもないと思うんですよ、あれは。でも逆さから読んだら普通に日本語を歌ってるんだっていう、本当にちっちゃなギミックみたいなものですね。これは自分で思いつきました。別に何かの真似しようっていうわけではなく。

──メロディは先にあったんですか?

高橋 メロはありました。

──最初は逆というか、普通の歌詞にしていたというわけでもなく、最初からひっくり返そうと?

高橋 あのまま歌おうとは思わないですね。逆にしたから歌えるような言葉でもあるかなと思って。

──そうですね。だからこそ実はストレートなメッセージなのだなと感じました。この曲の歌唱についてはいかがですか?

高橋 この歌は音程もめちゃくちゃ高い曲でもないんで、カラオケとかでも歌いやすいと思います。

高橋優 「未刊の行進」 MV

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