取材・文:藤井 徹(Vocal Magazine Web)
自主フェスは天気さえ自分の責任に感じるときがある。
──この15年の活動の中で、はずすことができないのは、『秋田CARAVAN MUSIC FES』だと思います。改めて自主フェスを立ち上げ、続けてきたことで、何か見えてきたものはありますか?
高橋 そうですね、自分のライブとかだけだったら、別に雨が降ろうが晴れていようが、とりあえずライブをやらせてもらえるなら、それでいいっていうところがあったような気がするんです、歌えるだけで幸せみたいな。でもフェスだと天気さえ自分の責任に感じるときがあるんです。フェスで起こっている何もかもが主催である自分でもっとやれることがあるんじゃないか?と。それは、このCARAVAN FESから思うことがいっぱいあったんですよね。それから派生していって、だったら今度はグッズひとつ作るにも、ワンマンライブにしてもフェスにしても一緒だなと思ってきて。それが責任感なのかも知れないけど、逆に言えば責任逃れみたいになるのが気持ち悪いというか。そういう気持ちは前よりすごく増えましたね。だから「これはどうするんだ? こうなったら、じゃあどうするんだ?ということまで考えようぜ」みたいなことは前よりもスタッフと共有したり、自分の想いはノートに書いたりするようにはなったのかもしれないですね。
──前回のフェスでは雨が降って寒かった。それがあったから次は対策が打てるね、みたいなことですかね。
高橋 そうなんですよね。例えばファンの方の中ではもしかしたらピンとくる話かもしれないけど、グッズの生産が追いつかないとか、グッズの発表が遅いことがあるとか。それも何年か前だったら「グッズ担当の方々のことは信頼してるし、お任せしているので高橋 優とはちょっと切り離して考えてもらえたら嬉しい」ぐらいのスタンスで、ラクしてたような気がするんです(笑)。どこを切っても高橋 優って、今回の15周年のCDのテーマなんですけど、僕も「どこを切っても高橋 優だろう」って思うんですよ、最近は。確かにグッズを全部ひとつひとつ手間ひまかけて僕が作っているわけじゃないから、そこには信頼を置いているスタッフがいてくれるというのはありがたいことではあるんですけど、そういうグッズを出すことでお客さんを悲しい気持ちにさせているんだったら、出す意味がないと思うんですよね。っていうこととかを、以前よりは僕ももう少し視野を広げて、一生懸命頑張ってくれているスタッフの方々と、面と向かって話せるなら面と向かって。面と向かって話せないんだったらしっかり伝わるように僕が話すっていうことはやってますけどね。
──自治体や地元の方との関わりも開始当初から変わってきている感じですか?
高橋 知り合いとか友達とか、以前よりはちょっと増えたのかもしれないですね。毎回『秋田キャラバンガイド』という『CARAVAN FES』に向けてのガイドブックをテイクフリーとして作らせてもらっているんですけど、その取材で出会わせてもらった人もたくさんいらっしゃいます。このペンダントも取材で出会ったマタギの方からいただいたもので、本物の熊の爪なんですよ。そういう人たちの繋がりっていうのは増えましたね。
──これを聞くかどうか迷ったんですけど、今、秋田が(熊が山を降りてきて)大変じゃないですか。フェスを主催する際、そこも考えていかなきゃいけないのかと考えていたんです。
高橋 ……そうですね。もちろんそれは雨とかと一緒で、台風が来て明らかに危険なのにフェスは開催しないじゃないですか。事前に天候がわかってるなら中止したり、何か対策を講じた上でイベントって開催されるべきで。だって楽しむためにやってるんだから。そこで人が怪我をしたり、悲しい気持ちになるような可能性があるとしたら、僕はやらないほうがいいと思うんですね。ただ、どうすれば開催できるかと考えるのが僕らの仕事というか、できることだと思ってるので。開催する時期と開催する土地がどういう状況なのかというのは、今からもう常々ちゃんと見てて、考えを変えていくのか、突き通すものがあるのかっていうのは決めていくことだと思うんですけど。ただ、こういう風になるってことは事前にわかっていたことでもあったような気がするんですよ。いつかこうなるって。
──想定内というか、話の中ではあったんですか?
高橋 マタギの方々からお話を聞いている限りでは、そうなっていく可能性があるっていう話はずっと聞いていたので。だからどうしようよというのは僕の仕事じゃないんですけど、フェスを開催する上で、音楽を真っ直ぐ届けていくために最善の行動というのは、どんな時代でも、どういう現象が起こっていても、あのコロナのときとかも含めてね。それでも届けていく、届ける方法を考えていくというのが、僕らのやれることなんじゃないかなと思っています。
──ありがとうございます。そして2026年には、秋田県にかほ市での開催が決まっています。毎回インタビューで伺っていますけれど、にかほ市の魅力をお願いします。
高橋 にかほ市には、秋田のご当地ヒーロー、超人ネイガーがいるんですよ。ものすごい人気なんです、ネイガーって。同じく秋田を元気にしようとする存在だったりするので、まだコラボするとか全然話は決まってないですけど、超人ネイガーと僕、友達なんで(笑)、ネイガーから「海の幸も山の食べ物も全部めちゃくちゃにうまいから、ぜひ優くん遊びに来てくれ」って何度も言ってもらってたんですよ。プライベートで遊びに行く約束してて行けてない中で、フェスが最初に決まっちゃったんで。だからまた『キャラバンガイド』のときなのか、ちゃんと事前に僕もにかほ市の魅力を改めていっぱい堪能してから、皆さんに発信したいなと思っています。









