【ヴォイストレーナーインタビュー】桜田ヒロキ(VT Artist Development/東京)

取材・文:藤井 徹 撮影:ヨシダホヅミ

Vocal Magazine Webでは、全国各地の優秀なヴォイストレーナーさんを講師に迎え、2022年より「歌スク」というオンラインレッスンのサービスを展開してきました。残念ながら「歌スク」のレッスンサービスは2024年3月で終了となりますが、これまで同様にVocal Magazine Web誌上で歌や発声のノウハウを教えていただける先生として、さまざまな形でご協力いただく予定です。

読者の皆さんの中にも「歌を習いたい」、「声を良くしたい」とスクールを探している方は多いと思います。その際に、ぜひ「歌スク」の先生の素晴らしさを知っていただきたいと思い、各先生のインタビューやプロフィールを掲載させていただきます。読むだけでも役に立ちますし、トレーナー選びの参考にもお役立てください。

今回登場いただくのは、ハリウッド式ボイストレーニングの第一人者でもあり、倖田來未を始め、多くのアーティストのパーソナルトレーナーを務めている桜田ヒロキ先生です。

講師プロフィール

桜田 ヒロキ

VT Artist Development

桜田ヒロキ_01

倖田來未ほかトップアーティストたちの専属トレーナーも務める、ハリウッド式ボイストレーニングの第一人者が登場!

神奈川県・小田原市出身。X JAPANなどに影響を受けてロックバンドのヴォーカリストとして活動。カナダ留学を機にヴォイストレーニングの道に進む。2008年にセス・リッグスが主宰するSpeech Level Singing International(SLS)より、日本人として2人目の公認インストラクターに認定され、日本人として最高位のインストラクターレベル3.5(最高レベル5)まで習得。さらにVocalizeU認定インストラクターを取得。2009年よりVT Artist Developmentを主宰し、全国各地でハリウッド式のヴォイストレーニングを提供している。クライアントには倖田來未を始めとする、トップアーティストが名を連ねており、日本で一番レッスンの取りづらいインストラクターのひとり。

ジャンルJ-POP、ロック、R&B、洋楽、ミュージカル
好きなアーティストDream Theater、Eric Benet、Stevie Wonder、Teddy Swims、Richard Marx、Journey、Josh Groban、Michael Buble、X JAPAN、Adam Jacobs
趣味筋トレ、格闘技、美味しいご飯屋さん探し、おいしいビール、ワイン探し

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講師からのメッセージ

こんにちは! ボイストレーナーの桜田ヒロキです。僕はスタジオでのレッスンに加え、プロのアーティストのライブ会場に行ってトレーニングを行なったり、専門学校で授業を行なったりと少し他のボイストレーナーとは違った毛色かもしれません。この業界ではプロ・アーティストのレッスンを担当してきた数はトップレベルだと思いますので、生でボイトレを行なったプロの声をよく知っています。もしプロが受けるレッスンに興味があるようでしたらぜひ!

VT Artist Development

■スクール名   
VT Artist Development

■スタジオ  
東京スタジオhttp://www.voicetrainers.jp/tokyo)  
所在地:東京都品川区上大崎 3-9-17  
インストラクター:桜田ヒロキ/平岡由香/金子恭平/田栗ななえ/三浦優子

名古屋スタジオhttps://www.voicetrainers.jp/nagoya/)  
所在地:愛知県名古屋市中区新栄 2-1-4 アソルティ新栄 6C(6階)  
インストラクター:鈴木陽香/塚本奈加

大阪スタジオhttps://www.voicetrainers.jp/osaka/)  
所在地:大阪府大阪市中央区西心斎橋 1丁目16−7 サザンウェストビル 8B  
インストラクター:長谷川拓輝

■ホームページ   
https://www.voicetrainers.jp/

■ブログ  
https://www.vocallesson.info/blog

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\「先生に習いたい!」とご興味を持った方へ/


講師インタビュー

影響を受けたのは、X JAPANのToshiさんなんですよ。

──桜田先生が音楽、歌を始めたきっかけは?

桜田 うちは親父がハワイアンの楽曲を歌うシンガーでバンドをやってたんですよ。だから、子供の頃から家の中ではカラオケを歌っている朗らかな家族でしたね(笑)。親父がウクレレで弾いて歌わせてもらったりとか。たぶん5〜6歳のときは「氷雨」とかを歌ってましたね。歌謡曲を歌ってたのかなあ。

──その後、自分で好きな音楽を追いかけていた頃は?

桜田 たぶん最初に買ったCDがBAKUっていうバンドでした。あれでロックサウンドが好きになっていって小学校4〜5年生のときにはX JAPANのCDを買い出して……。声変わりの始まる前だったから、全然「低い」っていう感じで歌ってましたね(笑)。声変わりを迎えてからはやっぱ大変ですし……今も大変ですけどね、X JAPANの楽曲を歌うって。

──それはバンドを組んで歌っていたとかではなくて?

桜田 中学校のときに先輩のバンドの中に混ぜてもらって歌い出して、高校生ぐらいからは自分でバンドを組み出しましたね。

──バンドでコピーしていたのは?

桜田 あの当時GLAYさん、LUNA SEAさん、L’Arc-en-Cielさんらが、ちょうどブレイクした頃だったのかな。だから、そのあたりのバンドはみんなでコピーしたりしてましたね。

──バンドでは全部ピンのヴォーカリストでした?

桜田 ギターをちょっと親父に触らされたことがあるけど、結局飽きてすぐやめちゃいましたね(笑)。

──当時真似していたりして、影響を受けたヴォーカリストって誰ですか?

桜田 一番影響を受けたのは、X JAPANのToshiさんなんですよ。ただ、若いときの影響って面白いなと思うのが、当時はやっぱり必死にコピーするじゃないですか。でも20代、30代って練習していく中で、あの歌い方を(自分から)取っていくという作業もやりましたね。

──取っていく作業というと?

桜田 自分がボイストレーナーとしてのトレーニング、シンガーのトレーニングとかで、「歌ってみなさい」という楽曲がソウルとかR&Bが多かったので、やっぱ、あの当時のToshiさんの歌い方では全然対応できないんですよね。だから(影響を)外していかなきゃいけないっていうことはありますけど。でも今歌っているのを聴き返すと、ちゃんと(Toshiさんの)影響が出ているなと思うことはありますよ。

──トレーナーとしての目線では、Toshiさんの凄さってどこだと思いますか?

桜田 今の僕から見た目線ですか? 今、Toshiさんは、たぶん50歳を過ぎてますよね。僕が決定的に言えるのは、ずっと進化し続けているということなんじゃないかなと。そもそも50歳以上であの音域を歌い続けること自体、ちょっと生理学的に難しいんですよ。男性も女性も一般的には低音化していくものなので、音域は上から下に下がっていくようなイメージなんですよね。だからまず音域をキープしてるっていうことでも凄いです。あと、一時期X JAPANが活動停止中に、ソロで営業回りみたいなことをやってたんですよね。一度僕も観に行ったことがあるんですけど、全然音域を変えてX JAPANみたいな音域ではない音域で歌っていたんです。恐らく、そこで自由に声をコントロールするっていうことを覚えたんだと思うんですよね。自分のギリギリの音域で、“コントロールもままならない”みたいな音域ばかりで、おそらく当時のX JAPANで歌っていたので。自分の快適な音域で歌うということをやって、その後にの再始動したときに、かなりコントロールが良くなって、表情も表現も良くなった状態でX JAPANのキーに戻っているんですよ。だから長い目線で見たら、低下していくのではなくて、ずっと進化し続けているということは、今でもやっぱり凄いなって思います。

──さすがの目線ですね。そして、桜田さん自身の音楽活動はその後、どういう動きでした?

桜田 高校のときに組んでいたバンドの子たちとオリジナルの楽曲を書いたり、レコーディングしたりライブやったりしていたんですけれども、ギターの子が「ボストンで短期留学みたいなことをしたい」と言い出しまして。僕もその当時ヴォイストレーニングもいろいろ当たったりしてたんですけれども、なかなかピンとくるものがないなと思っている時で。じゃあもう、「この際、行っちゃえ」と思ってカナダに1年間留学しようと。カナダには行ったことなかったんですけど、いきなり行って住むということをやったんですよね。

──それは、おいくつくらいの時ですか?

桜田 24歳くらいで行きましたね。

──自分では理想が見えていたけど、そこへ辿り着く方法がまだないなっていう感じだったんですか?

桜田 もちろん、日本にも良い先生がいらっしゃったんですけども、「(海外には)何かもっとあるんだろうな」みたいなイメージだったのかなあ。日本で最後に習ってた先生がニューヨークに何年か住まれていた人だったので、「向こうの世界を見てみるのはいいことだよ、ボイストレーニングも含めて」っていう話をうっすらされてて。それもあったと思います。後押しされたのは。

──海外のヴォーカルのレッスンを受けてみて、どうでしたか?

桜田 カナダ、アメリカとかは先進国、特にアメリカなんかはトップがめちゃくちゃGDPを支えてるみたいな国ですよね。だから、そうでもない人は本当にそうでもない。一般の生活をしている中では平均値ってたぶん日本って高い。もう、それを垣間見ましたね。ダメな先生は本当に日本のダメじゃないレベル……もっと悪い、とにかく適当です(笑)。勉強する気もそんなにないしレッスン自体も適当だし、みたいな感じでしたね。

──そうだったんですね。

桜田 ただ、やはり良い先生は本当にずば抜けて良いです。で、適当さは微塵もないです。もうびっくりするぐらい細かいところまで直されるし。それがリットーミュージックさんの著書も出されてる高田三郎さんが師事されていた、セス・リッグスのお弟子さんだったんですよ。そこで「この方法論は面白いな、いいな」と思って。でも、その時はもうひたすら自分がシンガーとして課題曲を渡されて練習して、ヴォイストレーニングのメニューを渡されて練習して、みたいなことを繰り返したっていう1年間でしたね。

──ハリウッド式と呼ばれるレッスンを自身で体感したわけですね。自分が教える側に回ろうと思ったのは?

桜田 けっこう習って数ヵ月で、「こんなものなかったから、日本に持っていったら面白いだろうな」という思いはありましたね。日本に帰ってきて、すぐにヴォイストレーナーになるわけにもいかないので(笑)。じゃあどういうシステムで、どういう勉強をしていけばいいんだろうというので、そこはすでにインストラクターを育成していくという団体のひとつとして確立していたので、どういうトレーニングをしていけばいいのかということを自分で勉強しながら。その当時、僕はある企業で音声認識、Siriみたいなミドルウェアって言うか、あとはカーナビの音声認識だったりとか、それらを開発をしているチームの中で、普通にオフィスワークしてたんですよ。単純に雇われた理由が、英語がまあまあしゃべれるからで、そこの部署は20ヵ国ぐらいから、いろんな人たちが日本に来てて、いろんな言語での音声認識っていうのを開発してました。その中で日本に初めて来た19歳の厚切りジェイソンと友達になっているんですよ。

──そこに彼もいたんですね。

桜田 彼もその中にいたんですよ。その音声認識の、今で言うスペクトラルグラムとかいう、波形を見ていくソフトだとかを勉強させてもらったりとかしつつ、最初の頃は国際電話でレッスンを受けたりしてたんですよ。で、数ヵ月やったあとにSkypeが使われるようになってからSkypeでレッスンを始めて。オフィスワーク週5回やりながら、毎週末はアメリカとかカナダとレッスンをオンラインでやってるような状態でした。だから僕は2006年か2007年ぐらいからオンラインレッスンを受けてたんですね。今はパンデミックになってからオンラインレッスンになっていってたけど、ここのスタジオのインストラクターたちも含めてなんですけれども、もう全然15年前ぐらいからオンラインレッスンはやってたんですよ。

──それはインストラクターを育てるレッスンメニューですか?

桜田 いろいろ見方があるんですけど、自分の声をちゃんとトレーニングして改善していくっていうプロセスもちゃんと評価されているので、それは「自分がレッスンとして受けろ」と。あとは「自分が初めて会った生徒を教えているところ」を動画に撮るなり、アメリカへ行ったら「アメリカ人の初対面の人に対してレッスンをしろ」と。それで評価すると。あとは「自分の生徒を偉い先生に見せる」っていうのものありましたね。ちゃんとトレーニングされているかどうか。まあ、だいたい間違ったことを教えていると、その生徒の声に表われちゃうので、それも見られているっていう。

──めちゃくちゃ厳しそう(笑)。

桜田 レベル制度だったので、レベル1からレベル5まであるんですけれど、レベル1に上がるテストはそこまで厳しくはないですね。ただ、やっぱりレベル1はレベル1、レベル2はレベル2っていう見方はされるので、まあ厳しくはなってきますよ。いきなり怒られるようになったり(笑)。

──「お前はもうレベル3の人間なんだから」みたいな?

桜田 そうそう。そういう僕はレベル3で、日本人の最高位なんですよ。

──発声法では、何が一番大事だという考えですか?

桜田 セス・リッグスが言っていたのが、発声法の技術なので【すべての行為が音程に拘らず行なわれること】。高い音だから苦しそうな声が出るわけではなくて、「高い声であってもこの声が出る、低い声であってもこの声が出る」っていうのが、どの音域でも「自分が歌唱音域って認識してる音域というのはコントロールできるようにしろ」っていう。「高い音はこの音色じゃなきゃ出ません」というのは、基本的にダメだっていう考え方ですね。だから、そこはあまり自分の歌唱音域として数えちゃダメだよっていう考えです。

──飛び道具として使うぐらいならいいけど、違う声色でしかコントロールできない声なら、それは歌唱音域に入れるなと。

桜田 そうそう。それこそレコーディングしていて変な発声になったり、1音だけ変な声になったりとかすると……。やっぱり突き詰めていくと本当にそういうことなんですよね。「この音色じゃ使えないね、もう一回録り直し」とかってなる。

──桜田先生の指導の基本方針は?

桜田 セス・リッグスの元々の考え方というのが、「直し方を口で説明して直すんじゃなくて、お前(先生)が直せ」って。「エクササイズの出し方で直せ」なんです。だから(僕は)直せるようにトレーニングされてるんですよ。僕らがいろんなアーティストさんの(ライブ)現場に行ってるんですけど、現場でボイトレって何かイメージにないでしょう?

──確かにそうですね。

桜田 現場でボイトレする理由って、僕らは(アーティストの)その日の声の出し方を見極めて、出しやすいほうに持っていくんです。その場でその日のチューニングをしてあげるんですよ。だから、「その日の一番出しやすい声を作れる」っていうことがわかっているから、わざわざ高いお金を払って1日分拘束して、僕らを現場に連れて行ったりするんですよね。だから、直せるは直せるんだけれども、それも諸刃の刃で、生徒さんが無自覚な部分で直せちゃう違う部分というのもあるんですよ。

──なんで直ったかがわからない?

桜田 そう。勝手に良くなって帰っていくみたいな。それができることはヴォイストレーナーとしては本当にすごいことなんですけど、そんなことができるヴォイストレーナーはあんまりいないんです。ただ僕はその方法でやっていて、でもやっぱり生徒にちゃんと自覚させなきゃダメだっていうか……。そのときは良くなって帰った人が、やっぱりダメになって帰ってくるんですよね。だから「あなたのできてないことはこれだから、この意識を持ってちゃんと練習してください」だったり、「この意識を持って歌ってください」ということをきちんと伝えて、生徒が自覚した状態で練習しているのが重要だと思うんですよね。

──生徒に練習だと意識をさせるんですね。

桜田 僕は生徒さんに「楽しんで歌う……楽器で言うとプレイしている状態とプラクティスしてる状態。これは完全に分けろ」って言ってるんですよ。プラクティスしてる状態というのは、とにかく自分に対してジャッジしなきゃいけないし、直さなきゃいけないし、ずっと意識し続ける必要があるんですよね。で、プレイというのはそれを駆使して演奏するだけだから、もう楽しめばいいんですよ。だからふたつのレイヤーで考える必要があるなと思っていて。プレイにプラクティスを持ち込んじゃうと、結果的にずっと自分をジャッジすることになるからステージ上で全然楽しめないですし、そういう歌になっちゃうと思うんで、それはダメですと。逆にプラクティスルームにプレイを持ってきちゃうと、「それってそもそも練習じゃないよね」って。自分が気持ちよく歌っちゃってるだけだから。また、これは僕がここ何年か習っている、また別の先生が言うのが、「声が疲れて練習室を出るな」と。「頭が疲れて練習室を出ろ」と。だから「声が終わっちゃうよりも先にメンタル的に疲れて終われ」と。それを僕は実践するようにしてますね。生徒にちゃんと考えてもらうように。

──なるほど。再現性を持って帰ってもらうには、生徒さん自身が、「今この状態は良い状態だ」と頭で理解できた状態にしないといけないわけですね。

桜田 基本的に自分ができていないことに対して無自覚であってはいけない。できるようにするために攻略する、それをお手伝いするっていうのがトレーナーだと思うので。

──桜田さんのトレーナー歴はどのくらいになりましたか?

桜田 VT Artist Development(以下VT)自体は2009年くらいから、ちっちゃく発足しているんですよ。その前に僕が個人的に細々と教え始めたのが3年ぐらい前だから、2006年ぐらいからかな。けっこう長いですよね。この前、少しだけ数えてみたら3万5000くらいレッスンをやってるんですよ。たぶん普通のトレーナーさんと一桁違ってますね。

──VTを始められてからは、どういう動きでしたか?

桜田 元々は恵比寿の雑居ビルでやっていたんですが、古い建物だったので2011年の震災の時にひび割れとか見えてきて。それで目黒に移動してきてから10年以上ですね。

──桜田先生以外のVTの先生はどんな方たちですか?

桜田 VTの先生はみんなもともと僕の弟子です。通常のスクールだと、現地でのミュージシャンを雇うから教え方が基本的にないんですよ。その学校のメソッドというものは。でも、VTでは基本的に僕が皆さんを研修して教えているので、まったく違うことを言うことはないです。基本的に目指す声はこういうものであって、そこに対してこういうアプローチがあるよというのをトレーニングして教えていってるので。

──しっかりしたメソッドを共有している先生方で、加えてそれぞれの得意分野がある感じですか?

桜田 そうですね。もちろんそれぞれにミュージシャンとしてのバックグラウンドがあるわけだから、そこの特色はもう全然入れてもらって構わないし、それを否定することもない……もちろんしたところで、できるわけないので。ジャズが強い先生だったら、もちろんジャズの生徒さんを渡すし、生徒さんにも「ミュージカルに強い先生がいるから行ってみな」と言ったりする。それぞれの強みが生かせてるんじゃないかなと。

──生徒さんの年齢層とかジャンルで特徴的なものはありますか?

桜田 年齢層は20代から40代くらいまでが多いのかな。でも、僕のクライアントさんは半数くらいがプロなので。

声に対して理解してくれる人が隣にいるってのは、たぶん心強いんだと思いますね。

──桜田先生は、倖田來未さんのパーソナルトレーナーも務めていらっしゃいますね。倖田さんの現場はいつ頃からですか?

桜田 ここ4〜5年くらいじゃないですかね(注:取材は2022年)。

──具体的にツアーのときなどは、どんな動きをされるんですか?

桜田 ライブ前のスタジオリハーサルから聴いていて、ダメ出しするところをチェックしておいて、長文のLINEを本人に送るんですよ。「ここをもう一回チェックしておいて」とか、「ここの出し方はこうしてみて」とか、「ここの発音の仕方、こっちにしてみて」とか、そういうオーダーをしておく。それを見て本人は練習すると。それでリハーサルを何度か重ねて、本番になるわけです。

──ライブ当日はどうでしょうか?

桜田 モニターチェックをするときに声がちゃんと立ち上がっていることが重要なので、本人が会場に入ってきたら30分から45分間くらいは声出しをして、ステージに一回送り出して、モニターチェックで声の出しやすい、出しにくいをチェックします。それで本人と音響さんとモニターさんと僕とで話し合って、コミュニケーション取りながら、「本人はこう言っているから、この帯域を持ち上げていただけたら、たぶん聴きやすくなると思いますよ」とかっていうのを中に入ってあげたりとかして、リハをやります。で、リハが終わって本番前の本当にステージに上がる5分ぐらい前まで、10分、15分間ぐらい声出しして最後のチューニングをしていく、という流れですね。

──本番中は?

桜田 送り出したら、僕のiPadに歌詞カードが入ってるので、そこをずっとチェックしておいて、またダメ出しをしていく……。

──先生はライブ中も楽しんでないんですね……。

桜田 ライブ中は、ずーっとチェックしてますよ。で、また長文のLINEを送る(笑)。

──こうやってプロのエンタメ現場を支えていらっしゃるんですね。

桜田 彼女はプロ意識がすごく高いので、声に対して理解してくれる人が隣にいるってのは、たぶん心強いんだと思いますね。

──日本のミュージシャンにはまだ少ないかもしれませんが、アメリカではわりと前からそういう人がいるんでしょうね。

桜田 セス・リッグスはマイケル・ジャクソンのワールドツアーについて回ったっていうので、わりと有名だった先生ですもんね。

──今後、日本でもトップクラスだけではなく、同じようになっていくべきだなっていう考えはありますか?

桜田 そこまで密着しなくても、生徒さんによっては「この日のリハがこの時間帯なんで」と言って、ホテルから音をFREESTYLEとかのオンラインで声の調整をしてあげたりしていますよ。毎回はできないので、当日の朝ホテルからとか、当日の朝の楽屋からとか。そんなに規模の大きくないバンドであったら、普通にFACETIMEでやりとりして、リハ前だとか本番前とかに良い声にしてあげて「行ってらっしゃい」っていうのは、東京と北海道でやったり、というのはありますよ。

──オンラインでも声が把握できているんですね。

桜田 お互いの声がわかっていれば、わりとオンラインだけでもいけるようにはなってますね。ちょこちょこ帳尻合わせみたいに対面もできるとありがたいですけど。

桜田ヒロキ_04
▲プロ・アーティストからの信頼も厚い。

日本で経験できないようなトレーニング方法をやっている。

──こういう人が来てくれると自分には向いてるんじゃないか、みたいなものはありますか?

桜田 日本のヴォイストレーナーというと、基本的に皆さんの認識っていうのは「歌の先生」じゃないですか。皆さんの認識がそうだから、なんとなく歌い方を教えたりとか、なんとなくピッチトレーニングをやってるとか、なんとなくリズムトレーニングをやったり……。でもこれって過去の経験なんですね、僕がミュージシャンとしてやっていた頃のトレーニングの。僕は「声を出しやすくする」だったり、「音域を広げる」だったり、「声色の改善」だったり、「声そのものをどうしていくのか」っていう、歌声にしていく、歌声として育てていくということが一番強いので、逆に「全然音程が取れないから何とかしてください」だったら、ちょっと僕のコスパは悪いかもしれないです。専門の音感のトレーニングの先生にやっていただいて、音感がある程度できた状態で「声の出し方を教えてほしい」だったら、僕は特に向いていると思います。

──なるほど。では、ある程度のレッスンは受けていて、音程とかの心配もないんだけど、もうひとつ上に行きたいみたいな方が向いていそうですね。

桜田 これ、みんな先生は同意するんじゃないかな……上級者は簡単ですよ、つかむのが早いから。まあでも、渡せる引き出しはそれなりにあると思うので。本当に上級者の方だったら、たぶん数レッスン受けて「ああ、なるほどね」という感じで終わっていただいても、僕は良いかなと思うし。中級者くらいだったら多少長いお付き合いになれる形でもいいかなとは思います。

──ありがとうございます。最後にメッセージをお願いします。

桜田 僕の特色って、おそらくさっき言った発声に特化している部分が強いっていうのと、あとは日本で経験できないようなヴォイストレーニングの方法を僕はやっているので、面白いんじゃないかなとは思います。


\「先生に習いたい!」とご興味を持った方へ/


講師動画紹介

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