【ライブレポート】UNISON SQUARE GARDEN『ROCK BAND is fun』

2004年7月24日に結成されたスリーピースバンド・UNISON SQUARE GARDENが20年のキャリアを経て、日本武道館にてコンセプトの異なる3日間のスペシャルライブを開催。メンバーにとっても、ファンにとっても大切な日である7月24日は『ROCK BAND is fun』というタイトルで、全26曲にも及ぶ濃いセトリを披露。さっそくレポートしていきたい。

取材・文:島村花、撮影:Viola Kam (V’z Twinkle)

結成20周年を迎えたUNISON SQUARE GARDENが武道館に立つ

 360°客席スタイルで披露される本日の公演。20年という節目をお祝いするために駆けつけたファンたちで客席は満員だ。またこの日はライブ配信もあり、画面越しに彼らの登場を心待ちにしているファンも多かっただろう。

 開演時刻の18:30を迎えると、会場は暗転しステージがブルーのライトに照らされる。割れんばかりの拍手の中、メンバーがひとりずつ姿を現しポジションへと着いていく。

UNISON SQUARE GARDEN『ROCK BAND is fun』2

《敬具、結んでくれ/僕たちが正しくなくても》斎藤宏介(g、vo)の歌声が会場へと響き、「Catch up, latency」で幕を開けた本公演。ステージ構成はいたってシンプルで、スクリーンや垂れ幕なども背負うことなく、文字通り3人だけの音でスタートした。“UNISON SQUARE GARDENです。ようこそ!”という斎藤の挨拶から、2曲目「サンポサキマイライフ」へとつづく。ステージ背中側のファンたちへも届くよう、しっかり目を合わせながら演奏をするメンバーの姿が印象的だ。田淵智也(b)が武道館直前のwebインタビューで“あれを超える作品はもう作れない”とも語っていた7枚目のアルバム「MODE MOOD MODE」より「Dizzy Trickster」を3曲目に披露。圧倒的な完成度で会場を一気に熱くさせる。UNISON SQUARE GARDENの得意とする疾走感やカオティックな勢いが詰まった1曲「fake town baby」、ここまで4曲を一気に駆け抜けた。

UNISON SQUARE GARDEN『ROCK BAND is fun』3

 “今日は長いよ!”と 、特別なライブごとにMCで口にしてきたワードがこの日も斎藤より伝えられると、会場からはひと際大きな歓声が。「恋する惑星」で一気に祝祭ムードに引き込んだかと思えば、「Hatch I need」は中毒性のあるロックサウンドに合わせて緑と紫のライトが不穏に会場を包み込み、そのまま雪崩れ込むように「マーメイドスキャンダラス」へとつづく。8thアルバム「Patrick Vegee」での畳み掛けるような曲順がライブへも落とし込まれている。ライブでの「Invisible Sensation」では、音源とは異なり、ポイントでがなるような歌い方を採用することが多い。こういった楽曲の違った一面を楽しめるのもライブの醍醐味だろう。

UNISON SQUARE GARDEN『ROCK BAND is fun』4

 星がきらめくようにミラーボールの光が会場を覆い、彼らの代表曲のひとつでもある「オリオンをなぞる」を披露。会場が熱気につつまれたあとは「もう君に会えない」「スカースデイル」とミドルバラードがつづき、センチメンタルな空気が満ちていく。6thアルバム「Dr.Izzy」がリリースされた8年前の当時の夏を思い起こさせるアップテンポな「オトノバ中間試験」はやはりライブ映えする1曲だ。オレンジとマゼンダに染まった空間に稲妻のようにスポットライトが光り、「世界はファンシー」へとつづく。ライブ折り返しとなる14曲目には「フルカラープログラム」が披露され、虹色の照明が会場を照らし客席からは“おめでとう!”の歓声と拍手が巻き起こった。

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 3人の少年の成長をユーモアを交えながら話した斎藤のMCにつづき、「いつかの少年」を披露。《間違ってないはず》と自分の気持ちを確かめるようなリリックが、20年の歩みを想起させ胸が熱くなる。「101回目のプロローグ」のラスサビ前、本来であれば《本当の気持ちを話すのは 4年ぐらいは後にするよ》という歌詞を《本当の気持ちを話すのは 今日ぐらいしかありえないだろう》と、この日のためにアレンジした歌詞で披露すると、メンバーの想いに応えるように会場からは大きな歓声が贈られた。

UNISON SQUARE GARDEN『ROCK BAND is fun』6

 普段のライブではあまりMCをすることのない鈴木(/貴雄(d))と田淵も、この日はそれぞれ言葉を述べた。鈴木は自身の中に燃え続けるドラム、そしてバンドに対する熱についてを落ち着いた声色ながら熱く語り、スタッフへの感謝やメンバーへの信頼の言葉を紡いでいく。“このバンドが格好いいのは俺のおかげと、自然と本気で思えるようになった”と気持ちの変化をまっすぐ伝える姿に胸が打たれる。つづく田淵のMCでは、どこか恥ずかしそうに“奇跡みたいな20年間”だとメンバーを称える言葉が印象的だ。誰よりもお互いの才能を認めあう姿には、3人にしかない確かな絆が感じられ、会場からは自然と拍手が巻き起こった。祝祭ムードの中、後半戦は「kaleido proud fiesta」から華やかに開幕していく。「スロウカーヴは打てない(that made me crazy)」のラストでは“ジョークってことにしときます”と次曲への遊び心ある歌詞を歌い、「Phantom Joke」の疾走感あるイントロへと繋いだ。ここまで20曲近くをこなしてきたとは思えないパワフルさで、高難易度曲を披露して見せた。

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 UNISON SQUARE GARDENのライブ恒例の鈴木のドラムソロは一段と熱がこもっていた。武道館の中心でただひとりスポットライトに照らされ、渾身の雄叫びと共に叩ききる姿に会場からは大きな拍手と歓声が贈られた。そしてそんな鈴木の迫真のプレイをステージの端から見守る斎藤と田淵の眼差しには、信頼と尊敬の思いが込もっているように感じられた。ツアーごとに用意されるセッションパートにつづき、「天国と地獄」「君の瞳に恋してない」「カオスが極まる」と、ライブでも人気のキラーチューンが連続で放たれ、会場のボルテージは最高潮に達する。そして彼らの人気を確固たるものへと導いた「シュガーソングとビターステップ」が披露され、この日いちばんの歓声と拍手が響き渡った。

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 残された時間もあと少し。ここで田淵が、バンドの歩んできた道は決して楽なものではなかったことを訥々と口にした。静寂が満ちるなか、“君が好きなロックバンドは、君がずっと好きでいてくれたからここまで来れた。ロックバンドをあきらめなくてよかった”という彼の言葉に、涙を流したファンも多かっただろう。アカペラによるエモーショナルな始まりで「春が来てぼくら」が披露され、つづく25曲目は「シャンデリア・ワルツ」。間違いなく3人とファンの架け橋になってきた大切な1曲だ。そしてフィナーレはメジャーデビューシングル「センチメンタルピリオド」で華やかに締めくくられた。照明が点灯し明るくなった武道館にはメンバーと観客の笑顔が輝いていた。

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 盛大な歓声と拍手のなか、開場と同様に田淵、鈴木は順にステージを去っていく。そして最後ひとり残った斎藤はあらためてこの20年間の思いと感謝を観客に伝えた。“本日はUNISON SQUARE GARDEN20周年記念日、おめでとうございます!”とメンバーとしてはもちろん、このバンドを愛するひとりとして、バンドへの祝福の言葉を最後に武道館をあとにした。

 つづくオーケストラ編成の2日目、クリープハイプとの対バンとなる3日目への高まる期待を胸に、長く熱い一夜は幕を閉じた。

UNISON SQUARE GARDEN『ROCK BAND is fun』10

「UNISON SQUARE GARDEN 20th Anniversary LIVE “ROCK BAND is fun”」

2024年7月24日 日本武道館

SET LIST

01. Catch up, latency
02. サンポサキマイライフ
03. Dizzy Trickster
04. fake town baby
05. 恋する惑星
06. Hatch I need
07. マーメイドスキャンダラス
08. Invisible Sensation
09. オリオンをなぞる
10. もう君に会えない
11. スカースデイル
12. オトノバ中間試験
13. 世界はファンシー
14. フルカラープログラム
15. いつかの少年
16. 101回目のプロローグ
17. kaleido proud fiesta
18. スロウカーヴは打てない(that made me crazy)
19. Phantom Joke
20. 天国と地獄
21. 君の瞳に恋してない
22. カオスが極まる
23. シュガーソングとビターステップ
24. 春が来てぼくら
25. シャンデリア・ワルツ
26. センチメンタルピリオド

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