2022年5月10日 @ Zepp Haneda
取材・文:島村 花
撮影:YU KUBO、Megumi Iritani
アルバム『慈愚挫愚 参 -夢幻-』を引っ提げ、3月からスタートした-真天地開闢集団-ジグザグの最新ツアー『全国悪霊退治 -夢幻-』が、5月31日のZepp Osaka Bayside公演でフィナーレを迎えた。全21公演すべてをソールドアウトさせ、勢いを増すばかりのジグザグは、禊(=ライブ)で参拝者(=観客)にどんな世界を見せてくれるのか。5月10日Zepp Haneda公演の様子をレポートしたい。
本ツアーでは一部会場はスタンド席も設けられており、コロナ禍以前の会場の姿を取り戻しつつあるように思えた。もちろんマスクの着用や発声の制限、一定の距離の確保など、安心して禊に参加できるよう感染対策はしっかりと取られているのだが、かつての禊の空気が徐々に戻ってきていることに心を躍らせた参拝者も多かったのではないだろうか。
そんな高揚した空気の中、SE「-夢幻-」が会場内へ流れ始める。そのまま「Aria」へとつながり、いよいよ禊が始まる。スモークの立ち込める舞台上で大きく腕を広げ歌い上げる命(vo、g)の姿は、まさに愚かな者に救いの手を差し伸べているよう。
神々しさをまとったステージングから一転。キラキラとした音の粒が光るポップチューン、「ラスデイ ラバー」へと続きミラーボールの輝きが会場全体を彩る。龍矢(b)が飛び跳ねながら身体全体で楽曲の楽しさを表現する姿が印象的だ。甘酸っぱい多幸感に満ちた空気を一刀両断するように、「タガタメ」、「コノハ」を続けて披露し、疾走感あふれるナンバーで一気に会場の温度を高めていく。禊開始早々、ジグザグの大きな武器である“ジャンルに囚われない楽曲の幅広さ”をまざまざと見せつけるようなステージングだった。
MCでは「破壊の祈祷師・命」、「鳴弦の陰陽師・龍矢」と自己紹介をし、「禁忌の大忍」……と続くかと思いきや「ぽんぽこ太鼓」と紹介された影丸(d)。どうやらWikipedia内に参拝者による書き込みがあったようで、“書いたの誰!? 笑ったわー”と命。命の術によってしゃべれるようになった影丸本人も“でも気に入ってる!”と嬉しそう。そんな和やかな雰囲気の中、最上級の甘やかしソング「いいこいいこして」を披露。MC中に行なわれたレクチャーの甲斐もあり、参拝者の完璧なフリに“素晴らしい!”と命も満足げだ。
「僕ノ旋律」、「忘却の彼方」と続き、ハイトーンからディープな低音まで自在にあやつる命の歌唱と、楽曲のパワーを底上げする影丸のテクニカルなドラムプレイ、演奏しながらとは思えないほど軽やかにステージを端から端まで煽る龍矢の姿から目が離せない。
誰もが先の見えない不安な思いを抱えたコロナ禍でこそ生まれた「燦然世界」では、命が《立ち上がれ》と鼓舞すると、その声に合わせて一斉に立ち上がった参拝者は《FIGHT》と応える。声を出せない今、思いを込めた拳を精一杯掲げる参拝者に“カッコよかったで羽田!”と告げると、間髪入れずに「死神」を披露。乱れ光るレーザービームの中、ビリビリと会場を震わせるデスヴォイスが轟く。龍矢のスラッププレイが見事な「Requiem」が続き、禊の前半戦を締めくくった「ええじゃないか」の冒頭では影丸も立ち上がり参拝者を煽る。めんどいことも、しんどいこともすべて忘れて会場がひとつになった瞬間だった。
めでたいことに5月10日は龍矢の誕生日当日。龍矢本人も薄々気づいていたとのことだが、ステージ上でサプライズパーティーが始まる。苺がたくさん乗ったケーキに“かわいい!”とテンションの上がる命だが、本物の火は使えないので(使用には1ヵ月前までに会場へ申請が必要だったそう)、ろうそくに扮した命と影丸を龍矢がふーっと吹いて消す、というなんともほっこりとした時間だった。
ここでもフリのレクチャーを行ない、「ナニモシタクナイ」で禊後半戦がスタート。開始早々、地団駄を踏む参拝者でフロアが埋め尽くされ、命は《ヤダ ヤダ ヤダヤダヤダヤダ!!!!》とステージに寝そべり駄々をこねるカオスな空間へと突入する。次は何が来るのかと身構えていると、ここへ来てまさかの『夢幻』唯一のバラード曲「昴」が披露されるという急展開っぷり。
壮大に「昴」を歌い上げたあとは、要塞のようにぐるりと影丸を囲むドラムセットをフルに使ったダイナミックなドラムソロを披露。力強くバスドラを踏み鳴らす足元とは対照的にスティックトリックを軽やかに決め、ラストは背後にそびえ立つ銅鑼をパワフルに響かせソロパートを締めくくった。
圧巻のパフォーマンスに興奮冷めやらぬまま「夢に出てきた島田」へとなだれ込む。声が出せないもどかしさを抱えながらも、心の中で全力の《島田》コールで応える。禊の定番曲「顔が好き」、ファーストシングルのカップリングである「わた殖」、そして5/10=メイドの日にぴったりな「メイドカフェに行きたくて」と、これでもかとキラーチューンが続き参拝者のボルテージは上昇していく。
疲労を一切感じさせることなく、名曲「復讐は正義」へと突入し命のギターソロが炸裂。 “拳ついてんだろーが!”と極限まで参拝者を煽り「愛シ貴女狂怪性」ではデスヴォイスとハイトーンを巧みに歌いこなし、禊終盤とは思えないタフさでヴォーカリストとしてもギタリストとしても圧倒的な存在感を見せつけた。
残すところあと2曲。待ちに待った「Promise」が披露される。禊でこその生のサウンドと夜明けを告げる一筋の光のように差し込む照明が、「Promise」の持つ希望の世界観を開花させた瞬間は、間違いなくこの禊のハイライトのひとつだった。
あと1曲を残し、本日最後のMC。なんの前触れもなく命が“11月15日、日本武道館やります”と言い放った。突然の発表に一気に会場の空気が揺れたのを肌で感じる。「武道館をゴールにしているわけではないから、あくまで会場のひとつとして」というニュアンスでサラリとした発表ではあったが、さらに大きなステージで暴れるジグザグを見られるというのはあまりにも嬉しい知らせだ。
爆弾級の告知のあと、“それではいきましょう。コココンコンココン!”という命の掛け声で始まったラストの1曲は、もちろん「きちゅねのよめいり」。レインボーカラーのレーザービームが飛び交う中、参拝者の興奮は最高潮を迎える。お決まりのきつねをかたどったフリはもはやレクチャー不要だろう。愚かな者に救いの手を差し伸べるべく届けられた全21曲に惜しみない拍手が送られ、今回の禊は幕を閉じた。さらなるスケールで迎える『日本武道館単独禊 慈愚挫愚』が今から待ち遠しい。
公演情報
『全国悪霊退治 -夢幻-』
2022年5月10日(火)Zepp Haneda
<セットリスト>
01. Aria
02. ラスデイ ラバー
03. タガタメ
04. コノハ
05. いいこいいこして
06. 僕ノ旋律
07. 忘却の彼方
08. 燦然世界
09. 死神
10. Requiem
11. ええじゃないか
12. ナニモシタクナイ
13. 昴
14. 夢に出てきた島田
15. 顔が好き
16. わた殖
17. メイドカフェに行きたくて
18. 復讐は正義
19. 愛シ貴女狂怪性
20. Promise
21. きちゅねのよめいり
ライブ情報
単独禊『慈愚挫愚』
11月15日(木)日本武道館
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公式サイト:https://zigzag.asia/
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