倖田來未、念願のフルオーケストラ公演で魅せた新しい姿。「幸せすぎて、本当にありがとうございました!」

2022.05.24

2022年5月19日 @ Bunkamuraオーチャードホール
取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)ライブ写真:釘野孝宏

今年デビュー22年目を迎えた倖田來未が、5月19日と20日に東京Bunkamuraオーチャードホールで『billboard classics KODA KUMI Premium Symphonic Concert 2022』を開催した。
今回のコンサートは、自身初となるフルオーケストラ公演で、東京と大阪の2箇所で開催。指揮/オーケストラ編曲は、ピアニスト/指揮者/作編曲家として幅広く活動する藤原いくろうが、そして管弦楽は、東京公演ではパシフィックフィルハーモニア東京が、大阪公演では日本センチュリー交響楽団が務める。倖田來未チームからコーラスにTIGER、ピアニストに櫻井大介を迎え、さらにラテンパーカッショニストの小野かほりを招いての豪華な顔ぶれとなった。
本稿では5月19日の様子をお届けしたい。

開演時刻を少し過ぎた頃、パシフィックフィルハーモニア東京の面々が舞台に現われ、小野、櫻井、TIGERが続いて登場。そして最後に藤原が指揮者のポジションへ。藤原の手振りを合図にティンパニロールが鳴り響くと、流麗なストリングスの音色に導かれるように、漆黒のドレスを身に纏った倖田が姿を見せた。

最新アルバムの「Bow Wow」は、HIPHOPナンバーが大胆かつエキゾチックなオーケストラアレンジで届けられ、いきなり迫力満点の音像に圧倒される。倖田の奥行きと厚みのある歌声は、ホール全体に広がり、包むように聴衆の心を満たしていく。

オーチャードホールは天井がとても高く、豊潤な響きを生み出すシューボックス型の空間が印象的だ。落ち着いた客席空間は、華やかで温かな雰囲気を感じさせ、会場は熱気に包まれつつも、各々がそのひとときをゆったりと楽しんでいるようだった。

倖田は“まさかこんな日が来るとは”とオーケストラとの共演の嬉しさを噛み締めつつ、藤原から「Bow Wow」をオーケストラで届けたいと聞いたときは、その意外性に驚いたと吐露。“素晴らしい曲がたくさん出てくるので、どうぞ最後まで楽しんでいってください!”と自信たっぷりに伝えると、 エレキ弦楽器とのコラボレーションで“エロカッコいい”倖田來未を魅せた「Bassline」や、儚くもエモーショナルに歌い上げた「100のコドク達へ」と続けて、観客を大いに魅力していった。

感動的だったのは「愛のうた」だ。櫻井のピアノの旋律に、瑞々しいオーケストレーションが彩りを添え、倖田の歌声は一層深く存在感を放つ。《ひとつずつ光をつないで/遠くの君のもとへと届けよう》と切々と歌う姿はあまりにも美しく、ステージにキラキラと光が降り注ぐように神々しい。

約20分の休憩ののち、倖田は白菫色のドレスに身を包み、美しい髪を下ろしたプリンセスとなって登場。「恋のつぼみ」ではワルツのように優雅なアレンジが施され、原曲のキュートさとエレガントさを両立したとても華やかな世界観を表現した。一方で、“昔からこの楽曲が大好きだと言ってくれる方がたくさんいます”という「1000の言葉」は、優美なフルートやピアノの調べから、徐々に壮大なオーケストラへとドラマティックに展開していく。倖田のヴォーカルとTIGERのコーラスとのハーモニーは素晴らしく、思わず息を呑んで聴き入った。

MCでは、“オーチャードホールは本当に音が良い場所として有名なのですが……寝てる方はいませんでしたか?! 大丈夫でした?!”と笑いを誘う。こんな倖田節炸裂のトークも、もちろん公演の楽しみのひとつだ。

公演では、倖田が“コンサートで一度も歌ったことのない曲”という、「Alive」も初披露。温かなハープの音色に寄り添うように、倖田は優しく歌う。《諦めない心をもち/夜が開ければ歩き出す/振り向かず歩いていく》という言葉は、コロナ禍におけるエールにも重なり、聴く者の背中をそっと押すのだった。

味わい深い演奏が続く中、観客との一体感を最高潮に高めたのは「Butterfly」。オーケストラの重厚な響きが曲のアグレッシブさを加速させ、客席からは手拍子が湧き上がった。倖田は力強く歌い上げ、演奏の終わりには万雷の拍手が倖田と演奏者たちに贈られた。

すべての曲を歌い切り、“幸せすぎて……本当に、みなさま、ありがとうございました!”と伝える倖田の表情はとても晴れやかだった。

今回のコンサートの実現には、倖田自身、相当な覚悟と勇気が必要だったのではないだろうか。リハでは一度もうまく歌えず迷惑をかけしまったと吐露し、歌唱中に感極まって涙する場面も。並々ならぬ努力と苦労の果てに掴んだ成功であり、真摯に音楽に向き合い続けたからこそ見えた景色なのだと思う。

6月27日、28日に開催される大阪フェスティバルホールでの公演では、この公演をより育て上げたステージが披露されるのだろう。新たな境地が予感される倖田のこれからに、より一層注目したい。

公演情報

billboard classics KODA KUMI Premium Symphonic Concert 2022
2022年5月19日(木)、20日(金) 東京・Bunkamuraオーチャードホール ※終演
2022年6月27日(月)、28日(火) 大阪・フェスティバルホール
開演日時:OPEN 17:30 / START 18:30
チケット:12,000円(特典付・全席指定・税込)

出演:倖田來未
指揮:藤原いくろう
ピアノ:櫻井大介
コーラス:TIGER
ラテンパーカッション:小野かほり
管弦楽:パシフィック フィルハーモニア東京(東京)、日本センチュリー交響楽団(大阪)

演奏曲はオフィシャルサイトにて公開中
https://rhythmzone.net/koda/news/detail.php?id=1099715

公演の詳細はオフィシャルサイトにて
https://rhythmzone.net/koda/news/

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