【ライブレポート】Official髭男dism、ついに実現した初の全国アリーナツアー「ライブでまたみんなと再会するまで、前に進み続けます!」

2022年3月21日 @ さいたまスーパーアリーナ
取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)写真:TAKAHIRO TAKINAMI

Official髭男dismが、3月19日、20日、21日の3日間、さいたまスーパーアリーナで『Official髭男dism one – man tour 2021-2022 – Editorial -』の追加公演を開催した。
これは最新アルバム『Editorial』を引っ提げ、9月からスタートした自身初の全国アリーナツアーの追加公演である。2019年10月から2020年2月に行なわれた全国ホールツアー後、バンドは初のアリーナツアーを開催予定だったが、新型コロナウイルスの影響を受け、止むを得ず開催は見合わせに。そして今回、新たに発表されたアリーナツアーがついに開幕となった。今回のツアーは、さいたまスーパーアリーナ、横浜アリーナ、大阪城ホールなど全48公演で開催され、全公演の総動員数は約30万人に達した。彼らにとっても、ファンにとっても特別であったことは間違いない。バンド史上最大規模のツアーより、本稿ではバンド初となる、たまアリワンマン公演から3月21日の様子をレポートする。

開演直前、会場には恒例のBGMであるマイ・ケミカル・ロマンスの「Welcome To The Black Parade」が流れ、期待とともに大きな拍手に包まれる。曲が終わると、ステージ中央の巨大スクリーンにオープニングムービーが映し出された。主人公が部屋の中を見て回るという設定だが、視点が一人称になっていることで、グッと世界観へ引き込まれていく。

主人公がピアノを弾き始めたところで「Universe」のイントロへ大胆に突入し、バンドの演奏がスタート。巨大スクリーンが一気に白く光って上へと動き出し、奥から藤原聡(vo/p)、小笹大輔(g)、楢﨑誠(b/sax)、松浦匡希(d)のメンバー4人と、サポートの善岡慧一(p/tp)、アンディ・ウルフ(sax/fl)、湯本淳希(tp)、川島稔弘(tb)、宮田“レフティ”リョウ(k/b/g)、ぬましょう(perc)の計10人が演奏しながら登場した。前へ前へ歌声と音を届けようとする姿が圧倒的な音圧となり、さらにそれを美しく引き立てる壮大な視覚演出に、初っ端からド肝を抜かれてしまう。そのまま「HELLO」、「宿命」とパワフルな楽曲を続け、瞬く間に会場のボルテージを上げていく。

“今日はみんなでかけがのない音楽の時間を作りましょう! そのために1拍、1小節、ひと言、伝え漏れのないようしっかりやっていきます!”と藤原は力強く言い放つ。それを証明するかのように「115万キロのフィルム」では、メンバーの温かい演奏に乗せ、藤原の歌声はどこまでも強く美しく伸びていった。改めて、リアルな空間で音楽を届けられることへの喜びと、今日というステージに全力で臨む覚悟が伝わってくる。

藤原聡

今回のツアーで、彼らの楽曲における深度と振れ幅の広さを改めて体感した。例えば、アルバムから披露された「Shower」では座ってアコギを弾く藤原が新鮮だったり、小笹のギターがゆったりとしたグルーヴを生み出す「Bedroom Talk」が新しい風を連れてきたり。さらに「Laughter」では、その世界観を象徴するように白い光が立体的に折り重なる演出が披露された。そうかと思えば、1月14日にリリースされた新曲「Anarchy」で雰囲気は一変。楢﨑のベースがグイグイと牽引し、あっという間にダークな世界観を作りあげてしまう。楽曲ごとにまったく異なる表情で魅せていき、ヒゲダンが驚くべき速度で進化し続けていることをひしひしと感じさせた。

楢﨑誠

ライブの折り返し地点、“ここから先は、音楽のパワーをみんなと共有したいと思ってます!”と叫ぶ藤原の言葉を皮切りに、攻めのヒゲダンワールドが火蓋を切ることとなった。まずは「Stand By You」で会場の一体感を高め「ペンディング・マシーン」へ。サックスを構えた楢﨑がホーン隊と行進し、“踊ろうぜたまアリ!!”と松浦が煽れば、そこはもうダンスパラダイスだ。「ブラザーズ」のソロパートの掛け合いでは、スクリーンにアメコミ風ヒーローに模したメンバーが描かれ、会場を大いに沸かせた。スカアレンジの「ノーダウト」で最高潮の高揚感を叩き出した矢先、これでもかとハードロックナンバー「FIRE GROUND」を投下。火柱が上がるステージで小笹が掻き鳴らすギターと藤原のショルキーによる白熱の演奏バトルや、けたたましいコーラスで大迫力のステージとなった。

松浦匡希
小笹大輔

戦闘モードさながらの攻めっぷりだが、ここで終わらないのがヒゲダンだ。突如サイレンが鳴り響き、大量のスモークが立ち込めた不穏な雰囲気に一変。「Cry Baby」だ。メンバーの前に透過型の巨大スクリーンがそびえ立ち、稲妻の映像が突き刺さるように彼らに重なる。迫力満点の演出は転調を繰り返す同曲の激しさを一層際立たせる。藤原はマイクを強く握り締めながら《誓ったリベンジ》と力強く嘆き、メンバーの気迫みなぎる演奏でステージの緊張感は半端じゃなく、ただただ目と耳を奪われてしまう。ノンストップで続いた「Stand By You」から「Cry Baby」までの圧巻パフォーマンスは、ヒゲダンという現代の音楽シーンを牽引するバンドの貫禄を感じさせるものがあり、聴く者たちの記憶へ深い傷跡のようなものを鮮烈に刻み込んだ。

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