マキタスポーツ、“笑い×音楽”の融合ライブ『オトネタ5』を開催。“歌怪獣・島津亜矢”とのスペシャルコラボも実現!

取材・文:藤井 徹(Vocal Magazine Web)写真:小原 泰広
『オトネタ5』マキタスポーツ 2022年3月18日(金)草月ホール

ミュージシャン、俳優としても活躍中のお笑い芸人・マキタスポーツが、3月18日(金)、19日(土)に、東京・草月ホールで単独ライブ『オトネタ5』を開催した。

『オトネタ』はマキタスポーツにとってライフワークとも呼べるライブで、今回の“5”は当初2020年に開催されるはずだったが、コロナ渦の影響で延期。およそ2年越しとなるリベンジ公演とあって、マキタも気合十分、観客も本当に楽しみにしていた公演だ。

さらに、初日である18日には島津亜矢がゲストで登場することが発表されていた。マキタが命名した「歌怪獣」のキャッチは今や島津の代名詞となり、2021年12月にはそれぞれの所属レーベルからデュエットソング『歌うまい歌』が配信シングルとしてリリースされている。

そんなスペシャルなコラボも実現した3月18日のライブの模様をお届けしていこう!

映像と舞台で交互に繰り広げられたマキタワールド!

上半身裸にド派手なジャケット、ピンクメガネのキテレツ芸人、Mr.とんちんかん(=マキタスポーツ)による、コレステロール高めな前説で会場がゆるく温まったところで、いよいよ『オトネタ5』の開演である。

半円形ステージで曲席のどこからも見やすい草月ホールの緞帳(どんちょう)が上がり、白シャツ&パンツ姿のマキタスポーツが登場。オープニングナンバー「だからこそ私は」に合わせて上部モニターに歌詞が流れる。軽やかな調子でメロディを歌い上げていくマキタ。しかし、次第にクスクスと会場に笑い声が広がっていき、その言葉は某若手閣僚がかつて発したポエム感あるコメントだとわかる構造だ。

続いてのオトネタは「情報量」というナンバー。大川栄策が放った大ヒット曲「さざんかの宿」について、1コーラスにつき50字強の文字量しか使われていないことを解説。平成の名曲、Mr.Children「Tomorrow never knows」の1コーラス間に「さざんかの宿」3コーラスまでの歌詞すべてブチ込んで歌い切ってしまおうという実験(?)に挑んだ。

アコースティックギターを弾きながら、メロディはミスチルのまま歌われる「さざんかの宿」。字余りを無理やり押し込む節回しは“桜井和寿”感。でも歌詞は演歌。ジャスト1コーラスで収めた名人芸に大きな拍手が送られた。マキタ曰く「魔改造」のマッシュアップ、実にスマートで見事である。

舞台が暗転しての転換中、モニターでは小泉純一郎、武田鉄矢、平野レミほかの語り口を「音楽記号」になぞらえた映像で楽しませる。クレッシェンドやリピード記号を使っておもしろおかしく表現してみせた。

次いでマキタが欅坂46ばりのスカート姿で踊った「僕は、イヤだ」。52歳のオジサンの全力ダンスは、いつの間にか吉幾三のヒット曲に変わってしまったのだが……。その後、映像ネタで「NijiU×おじさん」というネタで畳み掛ける。4人のダンサーを従えての縄跳びダンスは意外にも(?)キレキレ! 若い子から見ると得も言われぬ可笑しさだが、アラフォー、アラフィフ、アラ還世代が多いと見受けられる会場は「マキタさん、踊れるな〜」という素直すぎる感想が先に立ったのではないだろうか。

再びギターを手に登場したマキタが挑んだのは「替え歌」。嘉門達夫が得意とするオトネタの王道だ。元の曲になったのは「悪女」(中島みゆき)、「銀河鉄道999(THE GALAXY EXPRESS 999)」(ゴダイゴ)、「JAM」(THE YELLOW MONKEY)など。時事問題や芸能界の話題となった人物を次々と取り上げるが、いろいろ危なかったので、お楽しみは会場の方々だけで……(笑)。

ここまではスピーディにネタが続いてきたが、お次はミュージカル調の大作「朝食バイキング」を披露。タイトルどおりホテルの朝食バイキングがテーマ。多くのメニューに翻弄される主人公の脳内を描いた一人芝居なのだが、ミュージカルチックな踊りを伴った“セリフ歌い”がいちいち笑える。抑揚が効き過ぎた(?)ハリのある声で、さまざまな登場人物を演じ分けて聴衆の笑いを誘う。途中で入る名作のパロディも秀逸だ。カーテンコールでは女性ダンサーを引き連れて大団円。20分超の大熱演にスタンディングオベーションと拍手が何分も鳴り止まなかった(ちょっと盛りました)。

岡村靖幸の楽曲風パロディ「フロハイラナイカイ」の映像を挟み、白衣をまとってマキタが登場。“マキタnote「巷に溢れるJ-POP」”を漫談スタイルで紹介するのだが、ここでもテレビ番組『ザ・カセットテープ・ミュージック』などで培った、切れ味鋭い批評家精神が遺憾なく発揮されていた。

「FACT音頭」は黄色い着物姿で演歌歌手(?)に扮し、会場のリクエストにこたえながら、即興で“真実(FACT)”を語るというもの。“クローズドな空間だから”と言いながら「FACTです!」を決めゼリフに、絶対に書けないブラックジョークを連発するのであった。

そうかと思えばラッパースタイルで、さまざまな事象を斬り込む「ヒエラルキー」へと変化。“やめられないもの”、“人生で大切なもの”などを題材に軽快なライムを叩き込む。ちなみに、“人生で大切なもの”の頂点に君臨するのは「歯と膝(ひざ)」だそうです。

キーボードを前に熱唱したナンバーは「一歩前へ」。男子トイレで朝顔と呼ばれる小便器の前に書いてある標語、アレだ。これを含むトイレの標語をネタにOfficial髭男dismばりの壮大なメロディとアレンジで彩られたJ-POPを歌い上げて、感動の本編は幕を閉じた。

歌怪獣・島津亜矢との壮絶バトル!

鳴り止まぬアンコールにこたえて登場すると、ステージに大物ゲストを迎え入れる。それが演歌歌手・島津亜矢との豪華コラボだ。現在、島津のキャッチフレーズとなっている「歌怪獣」は、彼女が『紅白歌合戦』に出演した際の圧倒的な歌唱力に感銘を受けてマキタが発した言葉から生まれている。そんな縁で昨年12月にはコラボ曲「歌うまい歌」を配信リリースするに至った。島津はトークで“マキタさんのおかげで新しい扉を開いた”と語るなど、しばし馴れ初め話に花が咲く。

そしてついに、マキタの“負けねーぞ、やるからな!”の掛け声で「歌うまい歌」のデュエットが実現! 《私は歌がうまい》と連呼するシンプル極まりない歌詞を、本当に歌のうまい島津とマキタが向き合ってバトル! どうだ!とばかりに声を張るマキタを、軽々と飲み込む声量で叩き潰す歌怪獣。最後はオフマイクで超高音ヨーデルの必殺技をくり出した島津の声でトドメを刺し、令和の名勝負は終了した。この様子に立ち上がるファンも現われるなど、まさにオトネタを象徴するシーンとなったと言えよう。

島津がステージを降りたあとは、売れるまで大体10年かかったこと、大きなライブが震災翌日にあって中止になったことなどが語られ、“それでもなんとか今回ライブができて、皆さんに会えて嬉しかった”とマキタ。そんな彼の自伝的小説『雌伏三十年』の刊行報告も行なわれた。

オーラスはビッグバンド風のサウンドをバックにスウィングして届けられた「オトネタのテーマ」でお別れ。稀代のエンタテイナーであり、自ら“越境芸人”と称し、さまざまなジャンルを行き来するマキタスポーツの、音楽とお笑いに対する真摯さをこれでもかと感じさせるライブだった。


リリース情報

マキタスポーツ

『雌伏三十年』著者:マキタスポーツ

2022年3月23日(水)発売
1,870円(税込)/432ページ
ISBN 9784163915197
発行:文藝春秋

芸⼈、ミュージシャン、俳優、コラムニストと⼋⾯六臂の活躍をするマキタスポーツが、今度は⾃伝的⼩説で作家デビュー! 1988 年、⼭梨から野望を抱いて上京した⾅井圭次郎は、紆余曲折の末に仲間とバンドを結成する。しかしなかなか売れず、結局バンドは空中分解。おまけに⼥性関係や家族との間にもトラブル頻出──⼋⽅ふさがりの圭次郎に未来はあるのか⁉ 1980 年代から 2000 年代にかけての懐かしのヒット曲もふんだんに盛り込まれ、ビートたけしはじめとする実在の⼈物も出てくる、サブカル⻘春漂流記。

島津亜矢

「花として 人として」島津亜矢

2022年3月16日(水)リリース
1,350円(税込)/TECA-22018

<収録曲>
01. 花として 人として
作詞:たかたかし 作曲:杉本眞人 編曲:川村栄二
02. 錦秋譜(読み・きんしゅうふ)
作詞:森坂とも 作曲:杉本眞人 編曲:川村栄二

コラボ作品

「歌うまい歌」マキタスポーツ×島津亜矢
2021年12月15日 配信リリース
発売:日本コロムビア
https://lnk.to/UTAUMAIUTA

「歌うまい歌 歌怪獣ver.」島津亜矢×マキタスポーツ
2021年12月15日 配信リリース
発売:テイチクエンタテインメント
https://lnk.to/shimazu_D251

マキタスポーツ×島津亜矢「歌うまい歌」スペシャル映像/日本コロムビア
島津亜矢×マキタスポーツ「歌うまい歌 歌怪獣Ver.」スペシャル映像

関連リンク

【マキタスポーツ】
オフィシャルホームページ

【島津亜矢】
公式ホームページ

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