2021年12月22日 @ 日本武道館
取材・文:田代 智衣里(Vocal Magazine Web)
撮影:岩佐篤樹
先月ニュー・アルバム『Hot Milk』と『Bitter Coffee』を2枚同時リリースしたスキマスイッチが12月22日(水)、日本武道館で1日限りの『スキマスイッチ “Soundtrack” 』を開催。その模様は「TBSチャンネル1」でも生中継された。今回は、この公演のためだけに描き下ろされたオリジナル漫画がTwitterにて先行公開され、その物語をスキマスイッチの楽曲たちが“Soundtrack”として彩るという、斬新で挑戦的なライブとなった。
真っ暗なステージにぼんやり灯る照明。ビジョンには『スキマスイッチ “Soundtrack” 』の文字。ステージ左端に大橋卓弥(vo)と常田真太郎(pf)が肩を並べて登場すると、2人がスポットライトに照らされた。まずは大橋が今回の公演について解説する。
“今回はいつものライブとはちょっと違った試みをしてみようと思っています。先に言っておきますと、音楽がメインではありません。『Soundtrack』というタイトルの通り、音楽はBGMと思っていただいたほうがいいかもしれません。今回はこちらに大きなビジョンを用意しました。このビジョンが今日はメインになるわけですけれども、SNSで先に発信しました漫画がこちらに映し出されます。ちょっと不思議な感覚になるかもしれませんが、僕らのライブを観るというよりは、漫画の世界観を味わっていただけたら、浸っていただけたらいいなと思っております”。
続いて常田がバンド・メンバーの村石雅行(dr)、種子田健(ba)、浦清英(key)、石成正人(gt)、松本智也(per)、本間将人(sax)、田中充(tp)を紹介した。
大橋が繋ぎ、“鍵盤は常田真太郎。さあ、どうなるんでしょうか。言ってみれば新しい音楽体験、新しい漫画体験みたいなものを今日は味わっていただけたら嬉しいなと思っています。席に座ったままで、今日はゆっくり楽しんでください。ヴォーカルは大橋卓弥です。よろしくお願いします”。と前置きしてお辞儀すると、マイクスタンドが立つステージ中央まで歩いていった。
常田がピアノを弾き始めると、鳥のさえずりが聴こえてくる。ビジョンには漫画『<episode1>瞳に映るのは過去』が映し出された。そのままスキマスイッチは楽曲「未来花」を演奏する。
《僕は死ぬまで いったい何回/隣に居るあなたの 名前を呼べるのだろう》
主人公が話をするように、漫画と歌声が融合する。常田のピアノ一本で大橋が「未来花」を歌い終えると、「1017小節のラブソング」でバンド・イン、続いて「ラストシーン」を演奏した。
大橋がギターを持つとビジョンは鮮やかなグリーンに染まり、『<episode2>とっておきの場所』が始まる。インストゥルメンタルを経過し「月見ヶ丘」を演奏。“少年”の無邪気さと愛らしさが歌声で表現され、ストーリーが彩られていく。
続けて「いろは」を演奏すると、“少年”が自分の姿に気付く切なさと《終わったんだよな》の歌声が重なった。《季節がこのまま変わったとしても》で楽器隊がミュートし、声の余韻が会場に響きわたる。ビジョンに映し出される物語と交わり、多くの観客が涙を流していた。
蝉の鳴き声とともに映し出されたのは、野球場。エピソードは『<episode3>未来が引く糸』だ。大橋は弾き語りで「アイスクリーム シンドローム」を歌い出し、そこにバンドも加わる。転調後、地声の《あぁ そう ファインダーを覗いたら》が爽やかに響きわたった。《君とならどんな一瞬だって煌めいてみえる》でピタッと演奏を終えると、続けて「ミスターカイト」へ。
聴こえてくる人混みの声に、息を潜める会場。すると、《フワリ 恋が積もっていく》エレキ・ギターをバックにゆったりと大橋が歌い出したのは「青春」だ。“ワン・ツー”の掛け声とともに、印象的なイントロへ。オレンジの照明がささやかに2人を照らす。
次にビジョンに映し出された『<episode4>大切なもの』には、楽曲「藍」が寄り添った。続けて「全力少年」を演奏すると、観客も手拍子を添える。大橋はビジョンのほうを振り返り、漫画が終わるタイミングに合わせてバンド・メンバーと呼吸を合わせていく。
オルガンの音色が空気を一変させると、大橋がスポットライトに照らされ「サウンドオブ」を歌い出す。《迷いのない/自分のスタイルで/奏でよう》でバンド・イン。アウトロでは大橋のフェイクで圧倒し、後方から光が差す中、シルエットだけが見えていた。続く「ユリーカ」では4つの物語を回想。常田がスポットライトに照らされピアノを弾き終えると、ビジョンはキラリと光って消えた。ここで「パラボラヴァ」のイントロが流れ、客席から大きな手拍子が湧き上がる。《降り注ぐ喜びの色を集めよう》では大橋の笑った声が煌めいた。イエローの照明が会場を明るく照らし、《精一杯両手を横に広げ》で観客は大きく両手を広げる。
ビジョンが赤・緑・黄などの輝きで埋め尽くされると、聴こえてくる喧騒。すると常田のピアノをバックに『<episode5>改札の前』が映し出され、「奏(かなで)」でクライマックスを迎えた。そして「未来花 for Anniversary」の演奏とともにエンドロールが流れ、一枚絵のアルバム写真を背景に「スキマスイッチ、SUPPORT MUSICIANS、CONCERT STAFF、RECORDING STAFF、MOVIE STAFF、PRODUCTION STAFF、Manga “Soundtrack”」の名前が列挙された。エンドロールまでも生演奏で聴くという、ぜいたくな体験となった。
エンドロールを終えると、大橋と常田は深くお辞儀。ビジョンには漫画の登場人物が集合した。大橋がこの日会場に来ていた原作・蒼井アオ、作画・歩に声をかけると、客席の2人がスポットライトで照らされる。“この2人がいなかったら僕たちはできなかったんですよ。本当にありがとうございました”。と観客の前で感謝を伝えたのだった。
最後に“お土産”があることが発表され、観客は帰りに会場配布の本を受け取る。そこにはこの日上映された漫画と、幻の『<episode6>東京は今頃』が掲載されていた。なお、描き下ろし漫画は「ピッコマ」、「ebookjapan」、「Renta!」などのWEB漫画サイトにも掲載されている。
MCなしのノンストップ・ライブとなった本公演。終演後の会場には、「スカーレット」が流れていた。
公演情報
『スキマスイッチ “Soundtrack” 』@東京 日本武道館
2021年12月22日(水)
セットリスト
01. 未来花
02. 1017小節のラブソング
03. ラストシーン
04. 月見ヶ丘
05. いろは
06. アイスクリーム シンドローム
07. ミスターカイト
08. 青春
09. 藍
10. 全力少年
11. サウンドオブ
12. ユリーカ
13. パラボラヴァ
14. 奏(かなで)
15. 未来花 for Anniversary
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