【レポート】記念の10回目を迎えた『GANKE FES』。大宮エリー作『アイヌの神々の崖』を前に、キヨサク(MONGOL800)がウクレレで熱唱。
2026.07.15
取材・文:Vocal Magazine Web編集部


地方創生とアミューズメントを両立させたユニークなフェス
日本の音楽シーンにフェスという文化が誕生してから二十余年。今では全国各地で個性的なフェスが独自の進化を遂げ、その土地のカルチャーとして根付いているものも多い。そうした中で、地域の伝統を継承しながら地方創生とアミューズメントを両立させているユニークなフェスとして知られるのが、GANKE FES(ガンケフェス)だ。
北海道上川郡新得町のくったり湖畔で開催されるGANKE FESは、2014年に産声を上げ、コロナ禍を経て今年で10回目を迎えた。アイヌ神話が宿る絶景の崖「ガンケ」(アイヌ語でカムイロキ=神の座)を背景に、音楽はもちろん、キャンプ、サウナ、カヌーやミニラフティング、ボルダリング、キャンプファイヤーなど、多彩なアクティビティが楽しめるのも魅力である。
今年はHY、GOING UNDER GROUNDといった人気バンドに加え、Maynard & Blaise(MONKEY MAJIK)、そしてUKULELE GYPSY(キヨサク from MONGOL800)など豪華なラインナップが揃い、チケットは完売。その注目度と人気の高さを改めて示した。2026年7月4日(土)に開催された記念すべき第10回の模様を、Vocal Magazine Webがレポートする。



会場はKAMUIROKI STAGEとITADORI STAGEの2ステージ構成。両ステージの距離は徒歩数分ほどで、行き来しながらどちらも楽しめるのが嬉しい。ふと音楽の合間に視線を上げれば、美しい湖と、その傍らに凛と佇む荘厳なガンケの姿が広がる。自然と音楽が溶け合う瞬間を、身体で実感できる最高のロケーションだ。




大宮エリーとキヨサクの共作とも言える作品『アイヌの神々の崖』
今回Vocal Magazine Webが特に注目したのは、「ガンケツムギ」と呼ばれるセレモニーである。これは、くったり湖畔に伝わるアイヌ神話をモチーフに、白い衣装をまとった子どもたちが、かつてガンケに住んでいたとされる伝説の鳥「フレウ」に扮し、楽器を鳴らしながら会場を練り歩くパフォーマンスだ。
今年のガンケツムギでは、かつてこのフェスで大宮エリーによって描かれた『アイヌの神々の崖』が、子どもたちの手によってガンケの地へと“還される”という特別な演出が行なわれた。この作品は、2015年7月のGANKE FESのステージ上で制作されたもので、UKULELE GYPSY(キヨサク from MONGOL800)の演奏にインスパイアされながら、大宮エリーが観客の前で行なった自身初のライブペインティングである。言わば、大宮エリーとキヨサクの共作とも言える作品だ。




大宮エリーは2025年4月に逝去したが、この作品は11年の時を経て、キヨサクとともに再びくったり湖畔へと戻ってきた。本企画はフェスの発表と同時にクラウドファンディングも実施され、大宮エリーに思いを寄せる人々やガンケツムギを応援する多くの支援者によって目標を達成。返礼品のひとつとして、『アイヌの神々の崖』を収録した絵本『歌詞の本棚/あなたに』(絵:大宮エリー/歌詞:キヨサク)も用意された。
伝説の鳥フレウに扮した子どもたちによって運ばれた『アイヌの神々の崖』を背に、UKULELE GYPSY(キヨサク from MONGOL800)のステージがスタート。1曲目は、絵本のテーマにもなった「あなたに」。11年前、この場所で生まれたひとつの表現が、アイヌの神々に見守られながら新たな形で昇華していくかのような、特別な時間となった。「ヨロコビノウタ」、「涙そうそう」、「想うた〜親を想う〜」、「琉球愛歌」、「小さな恋のうた」などの人気曲が次々と披露され、沖縄の柔らかな風を感じさせる音色が、くったり湖畔の風景に静かに寄り添う。多くの観客がその世界観に引き込まれていった。


その後、メインステージのバトンは同じく沖縄出身のバンドHYへ。大ヒット曲「366日」や「三月の陽炎」などを中心に、唯一無二のロックサウンドを北の大地に響かせ、祝祭と鎮魂が交差する特別な一日を美しく締めくくった。

夜半には「くったり宵市」が開かれ、キャンプファイヤーを囲みながらDJの音楽とともに酒を楽しむ時間が続く。ガンケに見守られながら、祝祭は夜へと静かに深まっていく。
人と自然が調和し、伝統と文化を大切に受け継いでいくGANKE FES。この荘厳なランドスケープとともに、その精神が次世代へと丁寧に引き継がれていくことを願わずにはいられない。


なお、『アイヌの神々の崖』の原画は、会場に隣接する「湯宿くったり温泉レイク・イン」にて継続展示される予定だ。GANKE FESの記憶として、そしてこの土地に刻まれた物語として、大宮エリーの魂はこれからもここに息づいていく。

書籍情報
歌詞の本棚『あなたに』
キヨサク(歌詞)/大宮エリー(絵)
https://www.rittor-music.co.jp/product/detail/3126317107/
定価2,200円(税込)
発行:リットーミュージック








