取材・文:藤井 徹(『アカペラスタイル』)
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好評発売中の『アカペラスタイルvol.3』でも取り上げた、舞台『アオペラ』が11月8日(金)より東京・シアターHにて初日を迎えた。オフィシャル会見、ゲネプロに参加したので、その様子をお届けしていこう。
会見に出席したのは、長江崚行(鈴宮 壱 役)、手島章斗(丹波 燐 役)、宮島優心(雁屋園 道貴 役)、畠山理温(四方 ルカ 役)、磯野 亨(宗円寺 雨夜 役)というリルハピの5人。さらにFYA’M’を代表して佐奈宏紀(是沢 舞斗 役)、そして舞台オリジナルキャラクター、辻堂 颯太を演じる眞嶋秀斗の全7名。司会者からの質問を受ける形で会見は進行していった。
左から佐奈宏紀、畠山理温、手島章斗、長江崚行、宮島優心、磯野 亨、眞嶋秀斗
オフィシャル会見
──まずは「長期間にわたる稽古を積んで、開幕を迎える今の気持ちは?」という問いに全員が心境を順に語っていった。
長江崚行 アカペラは本当に難しいので、今年の初めから本格的に歌唱稽古を組んでくださったスタッフの皆さんには頭が上がらないですし、元吉(庸泰)さん、(桑原)まこさん含め、本当に天才的なスタッフさんたちが集まってこの作品を創ってくれたので、あとはもう舞台上で楽しむだけかなと。そこまで緊張せずやれるかなという心境ですね。
手島章斗 リルハピ、FYA’M’かかわらず、キャスト同士すごく仲良くて居心地の良い空間ができています。男子校ノリや青春をお届けできればと思っていて、青春の真っ最中の人は共感してもらえたら嬉しいですし、大人の方は懐かしいなとか、何かを新しく始めるきっかけになったらいいなと。
個人的にはグループのときにアカペラもやっていたので、この作品に携われることをすごく嬉しく思います。アカペラは難しいですけど、声だけで感動を届けられる。その感動の先にあるものを皆さんに届けられたらと思っております。
宮島優心 僕たちも長い時間をかけて苦しさや楽しさを越えてきましたが、リルハピのメンバーたちも、こんなふうに難しいことにぶつかってアカペラを楽しんでいたんだろうなって感じます。だから難しいことはあっても、アカペラの楽しさを忘れないように15公演向き合っていきたい。観ている皆さんも同じ学校の生徒だと思って、一体感溢れる素敵な舞台にできたらいいなと思っています。
畠山理温 僕はコロナ禍の影響で思い描くような高校生活が送れなかったので、この作品を通して青春を取り戻させてもらっています。心の底からアカペラが楽しい、みんなのことが大好きだって言えます。
今回が初舞台で、お芝居や歌でいろんな壁に当たってきたんですけど、そのたびにスタッフさんもみんなも手を差し伸べてくれました。今は自信を持って早くみんなにお披露目したいなって思っています。
磯野 亨 今まで携わってきた作品のなかで一番と言っても過言ではないくらい難しくて、悩む瞬間がたくさんあって。みんなに支えてもらいながら、一個一個課題をクリアしてきました。稽古を通して、アカペラってすごく楽しいんだなってひしひしと感じていて。僕たちが本当に楽しんでいる姿をそのまま劇場で見せることができれば、ご来場いただく皆さまにも楽しんでいただけるかなと思っているので、今日から頑張ります。
佐奈宏紀 今年の頭からアカペラを練習していく中で、それぞれ壁にぶち当たって乗り越えて、乗り越えたらまた新しい壁があって。たくさんの苦労をしてきたんですけど、ここまで前向きにやってきたのは、楽しいから、歌が好きだからっていう真っ直ぐな思いがあったから。それが今回の作品とリンクしていて、リルハピやFYA’M’のメンバーが歌うときの気持ちとすごく似てるんじゃないかなと。だからこそ等身大の真っ直ぐな舞台になると思っていますので、そういうキラキラした姿を見てもらいたいです。
眞嶋秀斗 全編に渡ってアカペラで物語が紡がれていく舞台なので、本当にみんなずっとアカペラの練習をしてるんですよ。稽古の時もオフの時も必死にずっと音合わせをしていて、息をあわせて。
僕も高校時代にアカペラをやっていたので、その気持ちはすごくわかるんです。このアカペラを早く、とにかく皆さんに劇場で浴びていただきたいなと思う初日です。
──続いて、グループの強み、好きなシーンや注目してもらいたいことは?との質問。
長江 僕らリルハピの5人は(実年齢が)上と下で少し離れているんですけど、その年齢感をあまり感じないことがすごいなと思います。「高校生らしくあろう、若くあろう」みたいなものを5人がまったく考えてなくて、それで自然とリルハピになれているのは、この5人だったからこそなのかなと思いますし、取り組んだ時間がここに連れてきてくれたって感じがします。
手島 誰かが困っているときや、うまくハモれない人がいたり、つまずくタイミングがあったら、各々のやり方で助けられるところがリルハピの良いところかなと思います。個人的に好きな箇所は、リルハピのメンバーが中庭で初めて人前でアカペラを披露するシーンで、そこがたまらなく好きですね。
宮島 リルハピの強みはやっぱり仲の良さかなと思います。本稽古が始まる前、一緒にご飯やカラオケに行きました。きっとリルハピの5人もそうしていただろうなっていう生活を僕たちも同じように送ってきたんです。
それがそのまま舞台に出ているから、仲の良さが伝わると思いますし、アカペラをやってるときの5人が良い顔をしてるんですよ。すごいキラキラした笑顔でみんな歌ってて。それを見ながら僕ももっともっと楽しくなっていった。そういう自然なリルハピの笑顔が僕はすごい好きですし、そこに注目していただければと思います。
畠山 ファミレスで人狼ゲームをしたりして。「リルハピも絶対これと同じことやってるよ!」みたいな。
長江 いっさい芝居の話をしなくてね(笑)。
畠山 反対に、稽古場の裏で「もっとこういう風にやっていこうよ」ってお互い真面目に話し合っている時も、「リルハピだな」という感じがする。本当にリルハピと同じ道を辿っていて、彼らの人生を生で体験できているなと思っております。
磯野 僕はずっと、リルハピに限らず、こんなに歌のうまい人たちが集まったことは本当に純粋にすごいなと思って。みんなそれぞれ個性があって、良さがあって。自分の武器を知ってて、素敵だなって思います。
ぼく個人としては、今回初めてのベースの挑戦で、オープニング曲でのソロパートや、ライブ曲でのベースにぜひ注目していただけたらなと思います。
是沢 FYA’M’の強みは、作中でも話されるとおり「スタンドプレー」がとにかくしっかりしています。例えば全体の歌稽古で出た各々の課題を、次に集まったときに全員がきちんと修正してきているんですよ。そういうのがわかっているからこそ、もうひとつの強み「信頼関係」がすごくある。たくさん言葉を交わさなくても「やってくるでしょ、絶対大丈夫でしょ」っていう安心感がメンバー同士であるんですよ。
あとは “楽思考(たのしこう)”っていう造語がFYA’M’では流行っていて。楽しむ思考で楽思考です。みんな真面目なんで稽古中に固くなっちゃうこともあるんですが、そこで“楽思考、楽思考!”って言うと「あ、そうだ、楽しく楽しく」みたいな。その一言だけで、次にやるときにガラっと変わったりするんです。
あとは個人的にシューティー(眞嶋秀斗)と共演するのが10年ぶりぐらいなんですよね。同じステージに立てるのが個人的にすごく嬉しくて。辻堂くんの決意のシーンがあるんですけど、そこがとにかくバコーンと心にくるので。オリジナルキャラクターですけど、本当にこの舞台を代表するようなキャラクターを演じ切っているので、ぜひそこを注目してほしいなと思います。
眞嶋 僕は、みんなでワチャワチャする部員勧誘のシーンがあるのですが、そこがこの舞台『アオペラ』らしさが出ていて好きですね。
リルハピとFYA’M’をずっと稽古場から見ていると、若干空気感が違うんですよね。甘口と辛口のカレーみたいな。リルハピが甘口でFYA’M’がちょっと辛口のスパイスの効いたカレー。
さらに別の例えをすると、さきほど、(佐奈が)FYA’M’はスタンドプレーと言っていたじゃないですか。FYA’M’はメンバーそれぞれが灯台として立っていて、いろんなところに光を照らして演出する、みたいな。対して、リルハピはメンバーそれぞれが船で海の上を旅していて、それが出会うんです!
辻堂自身も小説を書きたいという夢に向かって青春を一緒に過ごす中で、彼らに多大な影響を受けて進んでいく。シーン的には彼らとは別空間に存在することが多いですが、みんなで一緒に舞台を作っています。毎日彼らの歌に元気をもらいながら舞台に立てています。
──最後に、長江によるメッセージで会見は締められた。
長江 キャスト全員の声と、ボイスパーカッションと、それを支えてくれるシンセサイザーとマニピュレーター。オープニングを見てもらえるだけで「あ、本当に声だけで挑戦しているんだ。声を重ねることだけで、ここまで迫力を作れるのか」という驚きは、たぶん皆さんに感じてもらえると思います。そのぶん僕らは必死に頑張らなきゃいけないんだけれども、観てもらえたら必ず忘れられない経験を一緒に作れると思います。まだ迷っていたり、時間に余裕がある方は、一回でいいのでぜひ劇場で見ていただけたら。本日から開幕します。最後まで頑張りますので、応援よろしくお願いいたします。
舞台『アオペラ』ゲネプロ・レポート
人の声だけで感動的なハーモニーを奏でるアカペラ。都立音和高校2年生の鈴宮 壱は、幼馴染が出ているという理由で観たFYA’M’のステージに魅了され、自身もアカペラ部を創設して活動を始める。
『アカペラスタイル』の読者であるアカペラーたちも、例えば1万人いれば1万人の「アカペラを始めるきっかけ」が存在しているはず。この舞台『アオペラ』を観劇して一番に感じたのは、声を合わせるアカペラの楽しさを演者が全身で表現していること。その素晴らしさに尽きるのではないだろうか。
経験を積んでいくことで、アカペラに限らず技術に目が行きがちになるのは致し方ない。ただ、まずは各々いろんな思いを抱える仲間と声を合わせ、聴く人に届けたいという初期衝動こそが原点であり、それを失ってしまっては良いハーモニーを得ることはできない。劇中でリルハピの5人が“響き合えない”期間を迎えてしまったように……。
舞台『アオペラ』は、とにかく歌っている、とにかくハモっている。楽曲を披露するシーンだけでなく、ステージ全体がアカペラで満ちあふれているのだ。現役アカペラーたちがこの舞台を観て刺激を受けないなんて嘘だろう。しかも、アカペラ監修をしたのは、Rabbit Catでも活躍するアカペラクリエイターのとおるす氏である。ハーモニーの緻密さは言うまでもない。この難曲を演技しながら、高い歌唱力を保って歌いこなす役者たち。そのスキルの高さは、同じステージに立つ者として感じてほしいところだ。
『アカペラスタイルvol.3』では主演の長江崚行との対談を収録しているが、これだけの時間をかけて稽古することは異例だと語られていた。それだけ完成度にこだわったアカペラを、ぜひとも劇場でたっぷりと浴びてほしい。
舞台『アオペラ』公演概要
2024年11月17日(日)まで上演中!
公式HPをチェック!
https://www.marv.jp/special/aoppella-stage
公演スケジュール
長江崚行、とおるす対談も掲載! 『アカペラスタイルvol.3』が発売中!
『アカペラスタイルvol.3』発売中!
著:baratti(Nagie Lane)、かくたあおい
定価:2,530円(本体2,300円+税10%)
仕様:A4判 / 128ページ
ISBN:9784845641376
商品詳細はこちら!
https://www.rittor-music.co.jp/product/detail/3124217108/
舞台『アオペラ』についても、長江崚行(鈴宮 壱 役)と、とおるす(アカペラ監修)の対談を3ページにわたって掲載しています!