『風街オデッセイ2021』松本隆の作詞活動50周年を祝った2日間をレポート

2021.12.22

2021年11月5日、6日 @ 日本武道館
取材・文:田代 智衣里(Vocal Magazine Web)
撮影:CYANDO

松本隆の作詞活動50周年を記念したオフィシャル・プロジェクト『風街オデッセイ2021』が11月5日(金)、6日(土)、日本武道館にて開催された。これまでにもプレミアム・イベント『風街レジェンド2015』、『風街ガーデンであひませう2017』が開催されてきたが、今回は“50周年”を記念し「はっぴいえんど」として松本隆、細野晴臣、鈴木茂が36年ぶりに生演奏を行なった。この奇蹟の2日間をレポートする。

40組以上のゲスト・ヴォーカルを迎えるホスト“風街バンド”は、井上 鑑(音楽監督・k)、中西康晴(k)、土方隆行(g)今 剛(g)吉川忠英(A.g)髙水健司(b)、山木秀夫(d)、三沢またろう(perc)、高尾直樹・佐々木久美・藤田真由美(Cho)、中野勇介(tp)、村田陽一(tb)、竹野昌邦(sax)、金原千恵子(violin)、栄田嘉彦(violin)、古川原裕仁(viola)、笠原あやの(cello)の編成だ。

開演時刻になり消灯すると、秒針の音とともに松本隆作詞の楽曲タイトルがスクリーンに次々と映し出される。鐘の音とともにステージが照らされ、鈴木茂と林立夫が登場。「砂の女」で『風街オデッセイ2021』は幕を開けた。

「微熱少年」を演奏し、鈴木茂と林立夫がステージをあとにすると、次に登場するアーティストの名前がスクリーンに映し出される。曽我部恵一だ。暗転したステージにスポットライトで照らされた曽我部が登場すると、松本隆の作詞家デビュー作であるチューリップの「夏色のおもいで」を披露。温もりのある歌声が会場に広がり、言葉ひとつひとつが映えわたる。

続いて、ピンク色に染められたステージに真っ白なドレスを着たアグネス・チャンが登場。「想い出の散歩道」を披露すると、愛らしい歌声で空間を華やかに染め上げた。“話によると、松本先生が初めて書いた歌謡曲は私の曲だったんです。歌詞の頭文字だけを言うと「ア・グ・ネ・ス」なんですよ。初めて書いた曲でそんなことする?(笑)粋ですよね”と話し、「ポケットいっぱいの秘密」を歌唱。手拍子を誘い、ダンスも披露した。

次に登場した太田裕美は、ピアノの弾き語りで「雨だれ」を演奏する。“松本先生は太田裕美でいろんな実験をしたと言ってましたけど、最初に大きな成果を出したのはこの曲です”そう言って「木綿のハンカチーフ」をハンドマイクで披露。手拍子で会場を盛り上げると、小走りでステージをあとにした。

続く森口博子は三木聖子の「三枚の写真」をカバー。“4歳から歌手になりたくて、小1からボイトレしてた。レッスンで歌っていた曲なので、あの時やっていたのはこの日歌うためだったのかなと思います”。そう言って、桜田淳子の「リップスティック」を歌唱する。

次に両手を挙げて登場したのは大橋純子。「シンプル・ラブ」のイントロで拍手が湧き上がり、“さあ、もっと行きますか!”と会場のボルテージを上げる。ソウルフルな歌唱とグルーヴィなリズムに、観客も身体を揺らす。“いまだに私は歌の中の女性に憧れています。年上の、いい女です”。そう言って、「ペイパー・ムーン」を披露。突き抜ける芯のあるヴォーカルが、観客の心をさらっていく。

大橋が颯爽とステージをあとにすると、佐藤竹善(SING LIKE TALKING)が登場。左ポケットに手を入れて、ハンドマイクで原田真二の「タイム・トラベル」を歌唱。ブルーのスポットライトが踊り、竹善を囲む。《時間旅行のツアーはいかが いかがなもの?》豊かな倍音とフェイクに惹き込まれ、どこまでもついて行きたくなる。

竹善がステージをあとにすると、スクリーンには「風街に連れてって!」のテロップが。さらにトリビュート・アルバム『風街に連れてって!』の製作総指揮「亀田誠治」の名前が表示される。BGMがしばらく流れると……「featuring B’z」の文字が映し出された。割れんばかりの拍手が湧き上がり、そのまま熱い手拍子へ。「セクシャルバイオレットNo.1」を、亀田誠治 feat. B’zで演奏。放たれるオーラがギラギラと輝き、ステージ一面を赤く染める。鋭く尖るヴォーカルの響きが胸に刺さった。稲葉と亀田は向かい合い、互いの楽器をかき鳴らす。ラストのハイトーン・ヴォイスは武道館の天井を突き抜けていき、目が覚めるようである。放心状態の観客を前に、B’zは嵐のように去っていった。

続いて『風街に連れてって!』参加アーティストの横山剣が「ルビーの指環」を、川崎鷹也が「君は天然色」を披露。亀田がステージをあとにすると、スクリーンには数々のアーティスト名が行き交う。ステージ中央にドラムセットが置かれ、C-C-Bが登場すると、「Romanticが止まらない」、「Lucky Chanceをもう一度」を披露した。

“お客さん、今トイレタイムですよ!”そう言って笑いを誘ったイモ欽トリオは、「ハイスクールララバイ」で会場を賑やかに。続いて山下久美子が「赤道小町ドキッ」、早見優が「誘惑光線・クラッ!」、武藤彩末が飯島真里の「夢色のスプーン」を歌唱した。

次に白のワンピースで登場したのは安田成美。ハンドマイクで「風の谷のナウシカ」を歌唱する。ワンコーラスを歌い終えると、会場から拍手が湧いた。繊細な歌声を聴き逃すまいと、観客はステージに熱い視線を送る。安田はやさしい笑顔を見せ、静かにステージをあとにした。

鈴木瑛美子が登場すると、ステージ背景は星空に染まる。披露したのは「Woman”Wの悲劇”より」。ものがたりを伝える表現力で圧倒し、スムースな裏声が会場を包み込んだ。続けて松田聖子の「瞳はダイヤモンド」を歌唱。鈴木がステージをあとにすると、金原千恵子ストリングスが登場し、本日のバンド・メンバーがスクリーンに映し出された。

そして、斉藤由貴が登場。「初戀」を歌い出すと、会場の空気は一変する。繊細な揺れまで鮮やかに聴こえてくるヴォーカルで、観客を魅了した。“どこかで聴いている松本隆さん、やっぱり俺ってすごいって言ってる気がします。ちょっと悔しいけど、あなたの作品世界の船に乗って、ここまで来てしまいました。ありがとう。聴いてください「卒業」”。そう言って、「卒業」を披露した。歌い終えると、静かな笑顔で小さく手を振った。

最後にもう一度太田裕美が登場し、大滝詠一作曲の「さらばシベリア鉄道」を披露。“あちらにも拍手を”とバンド・メンバーに手を向けると大きな拍手が湧き上がり、本編の幕を閉じた。

この日演奏された楽曲タイトルがスクリーンに1曲ずつ映し出されると、アンコールを求める手拍子が強くなっていく。秒針の音とともに、少しずつはっぴいえんどのアルバム写真が見えてくる。繰り返し“はっぴいえんど”を呼ぶ声が大きくなると、スクリーンに遂に「はっぴいえんど」の文字が。すると松本隆、細野晴臣、鈴木茂が登場し、歓喜の拍手が湧き上がった。「花いちもんめ」を披露すると、細野がゲスト・ヴォーカルに曽我部恵一を呼び「12月の雨の日」を演奏。最後に鈴木がベース、細野がヴォーカルで「風をあつめて」を届けた。

演奏を終えると、この日の出演者がステージに集結。“僕が高校2年の時ビートルズが武道館に来て、バンドっていうのがカッコいいからやってみたいなと思って。細野さんと知り合って、はっぴいえんどを作って。あそこからここまで歩くのに50年かかった。リンゴ・スターと同じドラムでちょっと感慨深いです”と松本が語ると、観客は熱い拍手を贈り、1日目を締めくくった。

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