関取花

【インタビュー】関取 花 自主レーベルを設立後、初のアルバム『わるくない』に刻んだ想いと、張らない声の説得力。

取材・文:藤井 徹(Vocal Magazine Web) 写真:高田 梓

ギターを持った状態で全部歌入れしてるんですよ

──そして「二十歳の君よ」ですね。今年の「成人の集い」に招かれて、会場のさいたまスーパーアリーナで弾き語りもされました。原曲はちょっと前にあったんですよね。

関取 1番だけは2023年ぐらいにあって。テレビ番組で成人の日に書き下ろすみたいな企画だったんですけど、そこから足していってっていう感じです。

関取 花「二十歳の君よ」MUSIC VIDEO

──もちろん新成人に届けるメッセージと同時に、20歳のときの自身に向けて贈る歌のように聴けますね。

関取 やっぱり20歳の頃の自分に、今の自分だったらなんて言ってあげられるかなとは思いながら書きましたね。

──この曲は弾き語りの完全一発録りということですね。歌と歌の間のブレスがすべて繋がっていて、とても生々しい仕上がりです。

関取 はい。一番リラックスしているけど、一番仕上がってるっていう状態で録りたかったので、ライブのリハーサルの時間にエンジニアさんに来てもらって、そのままマイク置いて録りました。ギターと歌を一緒に録ってるので直せないし、クリックも聞いてない、本当にライブに一番近い……というかライブ音源ですね。

──最初からこの曲はこう録ると決めていましたか?

関取 そうですね。私は弾き語りでクリックを聴かないで歌うのと、クリックを聴きながら歌うのでは、けっこうニュアンスが変わってきちゃうタイプなんです。バンドでのレコーディングはメンバーがクリックを聴いているので歌とギターは別録りなんですけど、私はギターを持った状態で全部歌入れしてるんですよ、どの曲も(笑)。それぐらい弾き語りの状態がベストパフォーマンスっていうのは、最近よく思うとこではあって。そのきっかけは、この曲がくれたんです。一発録りでクリック聴かないで自分の間(ま)でいけるほうが、一番伝えたい余韻みたいなものが出るなと思っていて。

──ヴォーカルブースにギターを持って入るということは、気をつけないといけないことも増えますよね(笑)。

関取 そうですね。だから絶対ギターが鳴らないように、サウンドホールにタオルをぐるんぐるんにして入れてます。しかもネックを握ってるだけでなくストロークの振りをすると、もっといいんですよ。クリック聴きながら合わせて歌ってる感が減って、自分の歌い方になるんで、袖を噛ませて当たらないようにしたりして腕を振りながら録ってました(笑)。

──良いものを録るためだったら妥協できないですよね。そしてラストが再びバンドが戻ってきての「会いたくて」です。SNSが生んでしまう、どうしようもなく強大な影響というか、虚しさというか。その中で関取さんが言えること、歌えることを絞り出されているのかなと。

関取 特に1番はそこら辺を思い浮かべてというか、思うところはあったりもして。

──自分と社会と世界が地続きであって、そこを歌うのがシンガーソングライターだよな、っていう……。

関取 すごくそこは一直線になった感じはしました。今まで社会に対するアティチュードみたいなものは、あんまり出すタイプではなかったんです。まあ、この曲もすごくやんわりではあるんですけど、フォークというか、そういう意味では自分の中で伝えたいことがあるというか。「ちょっとその先に目を向けないかい?」っていうことだと思うんですけど。そういう意味でシンガーソングライター的かなと思いますね。

──そうですね。今後もこういうスタイルで、自分が率直に感じたこと、社会とのことを書いていきそうですか?

関取 今までに比べたら書いていくんじゃないかなとは思いますね。ただ、私自身のものの考え方が「何を作るかより誰と作るか」っていうところで見るタイプなんです。「大きい社会問題提起の前に、まず自分の身の回りを、まず自分の幸福をちゃんと考えよう」みたいな。大きい問題に目を向けて「ヤバいかも、終わるかもこの世界」って思う前に、「一旦自分の身の回りをめっちゃ幸せにする方法を考えよう」とか、「嫌なもの一個一個の違和感と向き合って除いていこう」とか、そういうものがすごくテーマによりなってくると思います。

──すごく関取さんらしい考え方ですよね。それでは、今回のアルバムの制作を通して、自身で感じた一番の変化は?

関取 う〜ん、なんでしょう……。変わってないんだと思います、たぶん(笑)。ひとりでやればやるほど、それこそ環境が整った状態にいて、仕組みを知らない、中身を知らなかったからこそ出てきてた不満があったんだなってわかって。だから誰も悪くなかったなって本当に思うし、私も悪くないし……。今の選択も悪くないなって。

──まさしく「わるくない」ですね。

関取 そう、いろんな「わるくない」がありますね。

──関取さんが作成したアルバム資料の挨拶文に、「まだまだ売れる気満々ですので」って言葉が記されていて、これもすごく大事なことですよね。

関取 そんなにガッツキはできないんですけど、自分の中で「この作品がちゃんと評価される世の中だったら、それこそ良い世の中だな」とは思ってはいて。すごくお金が欲しいとか有名になりたいっていう「売れたい」よりは、これを誰かがプッシュしてくれるなら、そしてそれが誰かに届いて、ちゃんと響く世の中なら、けっこう現実と向き合ってる、戦ってることに誇りを持てている人たちかな、そういう世の中だったら意外といいかもな、わるくないかなって(笑)。そう思っての「売れたい」って言葉だというのはすごくありますね。うん、あとカッコ良いですよね、ここから行けたら。「あいつ、ひとりになったら身軽になって、すごい遠くまで行っちゃったぞ」みたいな。それは、なんかカッコいいなと思います。

──このアルバムを引っ提げた弾き語りツアーが5月24日から始まります。15周年ということで新旧織り交ぜたセットリストになりそうとのことで、今回のツアーの見どころ聴きどころを聞かせてください。

関取 冒頭でも話したように、自分が音楽活動を始めて15年で得たこと、考え抜いたことが今回のアルバムには入っています。だけど、そこに付随するそれまでの物語の楽曲たち、もっともっと苦しかった頃の自分が作った曲をセットリストに入れることで、また次のフェーズに行けるんじゃないかなと思っていて。ライブって自分と向き合う作業の場だとも思っているんで、そういう意味で、聴きながら皆さんも何かを感じていただけたらなと思っています。


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リリース情報

ニューアルバム『わるくない』関取 花
2025年5月7日(水)リリース

NKT-10001/2,500円(税込)
CD配信リンク:https://lnk.to/warukunai

<収録曲>
01. わるくない
02. VRぼく
03. いつかね
04. 空飛ぶリリー
05. 安心したい
06. 二十歳の君よ
07. 会いたくて

「VRぼく」関取 花(アルバム先行配信曲)
2025年4月16日(水)リリース
先行シングル配信リンク:https://PCI.lnk.to/Vrboku

ライブ情報

弾き語りツアー「ひとりぼっちもわるくない」

5月24日(土)京都・京都someno kyoto
5月25日(日)愛知・名古屋TOKUZO 
6月7日(土) 香川・高松SUMUS café 
6月8日(日)愛媛・松山MONK 
6月14日(土) 福島・福島フォーク酒場6575 
6月15日(日) 宮城・仙台カフェモーツァルトアトリエ 
6月28日(土) 石川・金沢もっきりや 
7月5日(土) 北海道・札幌musica hall café 
7月19日(土) 広島・広島Live Juke
7月20日(日) 岡山・岡山城下公会堂 in KOTYAE
8月2日(土)兵庫・神戸グッゲンハイム邸 
8月3日(日) 大阪・大阪Soap opera classics 
8月9日(土) 福岡・福岡ROOMS 
8月23日(土) 東京・東京 雷5656会館 

【チケット一般販売中】
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プロフィール

関取 花

1990年生まれ、神奈川県出身のシンガーソングライター。幼少期はドイツで過ごす。2017年にリリースした楽曲「もしも僕に」は、現在MV再生数850万回を超え、今なお伸び続けている。愛嬌たっぷりの人柄、独特の感性とおしゃべりからエッセイの執筆やラジオ、テレビ出演など活動は多岐に渡る。2025年、メジャーレーベルと事務所をはなれ、デビュー15周年という節目を迎え独立を発表。自主レーベル「NOKOTTA RECORDS」(ノコッタレコーズ)を設立。5月7日、最新アルバム『わるくない』リリース。ちなみに関取 花は本名だが、先祖はお相撲さんではない。


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