【インタビュー】松本千夏、アニメ主題歌「となりあわせ」を始め、各曲で示したそれぞれの“自分らしさ”と歌表現を語る

2023.05.25

取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)

ちょっと曲を作ったらまた原作を読んで……を何回も繰り返した

──ここからは新曲について聞かせてください。TVアニメ『おとなりに銀河』オープニングテーマとして書き下ろした楽曲「となりあわせ」は、主人公ふたりの恋模様を歌うキュンとするリリックと心温まるサウンドが印象的な1曲です。アコギを始めとした温かいアレンジで原曲の弾き語りの姿も浮かんできますが、もともとそういったイメージを残そうと考えていましたか?

松本 いつも曲を作るときは、アレンジャーさんの感じたままにやってほしいというのもあって、結構まるっとお任せすることが多いです。今回はチームの方がお薦めしてくださったアレンジャーさんにお願いしていて。今までやってきたアコギや弾き語りでの“らしさ”はそのままに、だけどアニメのオープニングにも合うような爽やか系にしたいとお願いしました。

なんか自分の曲ってかわいい曲があまりないと思ってるんですけど、この原作(の世界観)はとにかくかわいいから「かわいくしてください!!」って伝えましたね(笑)。

──ハモリの柔らかい音の厚みも印象的ですが、松本さんからオーダーしたことはありましたか?

松本 曲を作っている段階ではまったく考えてなくて、レコーディングのときにヴォーカルディレクションの方と相談しながら、(メインの)歌を録ったあとに付けていく感じなんです。私からハモリを入れたいですって言うところは、曲を作るときにボイスメモで録りながら聴いたりするんですけど、ときどき“なんかハモりたくなる”って自然と思っちゃう箇所があるんですよ。そういう部分は「ここちょっとハモリたくなるんで入れさせてください」って言ってます。今回で言うと、《急に花を買ったり キッチン無駄に立ったり》のところは(上に入るハモリが)絶対あったほうが良いなって思ってましたね。

──初の書き下ろしということで、作曲はどんなふうに進めていきましたか?

松本 原作を読んで曲を作るっていうこと自体も初めてで、いつもは自分のことを歌うけど、今回は主役のふたりを想って書いたので最初は難しいかなと思ったんです。でも曲を作る中で、自然とふたりの恋している気持ちに対して、自分もそういう体験あったなぁと思い出してきて。(Aメロの)《気〜づかずに 始まってた〜みたいで〜♪》を歌いながら作り始めたら、(Bメロの)《急に花を買ったり》あたりはノリノリで作っていて(笑)。

今回、自分が一番キーポイントだと思っているのが、《明日も今日みたいがいい》っていう歌詞の部分なんです。自分がすごくハッピーなときって、今日がずっと続けばいいのにと思うことがあって。そういう気持ちをサビに持っていこうと決めたり、わりとスムーズに作っていくことができました。

──いつもの曲作りと違った感覚はありましたか?

松本 いつもは曲を書いていると話が連なって、“あのときのことも書こう、あのときのことも書こう”って、軸として書こうとしてたモノから良い意味でどんどん離れていっちゃうこともあるんですよ。でも今回はなるべくそうならないように、ちょっと曲を作ったらまた原作を読んで……を何回も繰り返しました。自分の主観が強すぎないように、とにかく原作に寄り添うようにと思いながら書きました。

──わりとスムーズにと作れたとのことでしたが、苦戦したポイントはありましたか?

松本 もともと歌詞が違っていた部分があって、サビ前の《あたし 新しいな》の部分が《なんか変になってる》っていう歌詞だったんです。こんな急に花を買ったり、無駄にキッチン立ったりしてる自分が“変になってる”みたいな意味だったんですけど、この曲ではちょっとマイナスに聴こえちゃうかなとも思ったんです。できるだけポジティブなニュアンスのほうが良いなっていう意見もあったので、ちょっとこの1行だけは悩みましたね。

舞台を観て鳥肌が立って泣いちゃうような感覚を、RECや音源でも伝えたい

──歌い方はデモの弾き語りの段階と、オケができあがってからとで変えましたか?

松本 デモは自分の好きなように歌ってるだけなんですけど、レコーディングではできるだけかわいく歌うように心がけました。《明日も今日みたいがいい》というサビも普通に歌うとやっぱり気持ちいい音なので、声を入れすぎちゃうというか。よく「応援団みたい」みたいなことを言われるんですよ(笑)。今回ヴォーカルディレクションをしてくれたのがルンヒャンさんというシンガーソングライターの方で、私の師匠でもあるんですけど、「特に子供に語りかけてるように歌って」って言われて。その意識で歌ってみたら声色ももっと明るくなって優しい感じになりました。

──レコーディングはツルッと録っていきましたか? それとも部分部分で?

松本 ホント曲によるんですけど、この曲はわりとツルっと早く録りました。もともとレコーディングが早くて、何回も歌って良いのを出すタイプではなく、なるべく一発でやりたいので、集中して気持ちを入れてバンッと録っちゃうのが自分のスタイルだと思います。

──歌い方は緻密に考えていきますか? それともレコーディング中は感覚を大事に歌いますか?

松本 テクニック側のことはヴォーカルディレクションの方にお任せしているんですが、基本的にいつも感覚を大事にしています。自分が歌っているときの感情をとにかく届けたいので、気持ちが入るように、曲によっては「電気を暗くしてください」ってお願いすることもあります。逆にどれだけ良いテイクと言われても「いま感情が入らなかったのでもう一回やらしてください」とお願いしてやり直したりしますね。

──歌で感情を届けることを大事にしているんですね。

松本 はい、そこが一番自分で大事にしているポイントなんです。ミュージカルや舞台出身なので、舞台を観て鳥肌が立って泣いちゃうような感覚をRECや音源でも伝えたいなって思っていて。その“ナマ感”を出すには、やっぱり人の感情が動いた瞬間に聴いている人の心も動くと思うんです。

──きれいに録れたテイクよりも、ちょっと揺らいでいるけど感情が伝わるテイクをあえて選ぶこともあるんですか?

松本 感情が伝わるものとテイクとして良いものと、どっちも録るんですよ。それでどっちが良いかは任せるんです。最終的に聴く人(の感じ方)が大事なので、自分のやりたいこともやったうえで良いほうを選んでもらうって感じです。感情的なほうがココは良いっていうときもあれば、ちょっときれいに歌ったほうが逆に良いっていうときもあるので、そこはお任せしています。

──今回マイクはどれを選びましたか?

松本 『BRAUNER(ブラウナー) / VM1』です。3曲ぐらい前まではほぼお任せしてたんですけど、「ふがいない」という曲を録ったときに全然思ったようにうまく録れなくて、ちょっとマイクを変えてみようという話になったんです。そしたら変えた途端にめちゃめちゃ良くなったんですよ。そこでマイクの重要さを知りました。

──自分で選ぶ際は何本か試してピックするんですか?

松本 そうですね。マンレイかブラウナーがあればそれらを使うんですが、ないときは何本かやって選ぶこともありました。3本並べて録ってみて好きなのを選ぶみたいな。

──マイクによって相性も違う感じがしますか?

松本 全然違いますね。何が違うのかは説明できないんですけど、マンレイはキラキラ感があって。あとブラウナーというマイクもすごく……自分はできるだけそのままの音がマイクに入ったほうが好きなんですけど、特に違和感がないのがそのふたつかなと思っていて、お気に入りなんです。

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