取材・文:藤井 徹(Vocal Magazine Web)
写真:松井 伴実
秋田弁っぽく言うほうがちょっとハネて歌えたりとか、気持ちよかったりするんですよね
──全曲を通してヴォーカルに関するレコーディングでの思い出はありますか?
高橋 ヴォーカルは歌いづらいし難しい曲ばっかりですね。その中では「I LIVE YOU」は簡単だと思います。そんなに音程が高くもないし低すぎもせず。メロディもわりと単調で歌いやすいんじゃないかなと思います。
──難しいのは?
高橋 難しいのは、「STAND BY ME!!!!」、「あいのうた」、「ever since」、「Piece」、「氷の世界」も難しいです。
──歌唱法などで新しいチャレンジはありましたか?
高橋 前よりはもうちょっと自由になったような気がしますけどね、喉とか。最近、曲の作り方として、“自分の出しやすい声のところで曲を書こう”みたいなことはちょっとナンセンスだなと思い始めていて。曲作り自体が楽しいので、そこでできちゃったものを、“これ誰が作ったんだ?”とか言いながら歌ってるぐらいのほうが面白いんじゃないかなって思えてきてますね。だからさっきおっしゃったみたいに、メチャクチャ低いキーの曲も臆することなく低くして……。声の出し方もすごく自由ですし、今までで一番自由に歌ったんじゃないかなと思います。
──高橋さんは自身の声についてはどういう自己分析をしてるんですか?
高橋 お聞き苦しい声だなと。
──いやいや。ときに丸く、ときにエッジィにという印象があります。そのときに自分の中で喉の使い方でちょっと変えていることはありますか? 感覚でいいんですけど。
高橋 メッチャ変えてますね。単純に筋力というか、同じ大きい声でも、超音波みたいに声帯の上のほうを当てて高くて大きい音を出すのと、単純にがなって大きい音を出すのがあるんです。ライブのMCとかだと、わざとがなるぐらいのほうが盛り上がる感じになったりして、良かったりとかするし。逆に小さい声で歌うときも、わざとしゃべるみたいに出すときと、しっかりちゃんと音符に乗せて小さく出すのとでけっこう変えてますね。
──口の中から意識的にコントロールをされているということですか?
高橋 自分なりの発声練習をいくつかやるので、そこでも意識しますね。喉のストレッチをする段階で。
──歌詞においても子音とか母音とか濁音とか、その辺の分け方も意識されてますか?
高橋 全部じゃないですけど、ここは絶対こうであってほしいというところを意識します。
──絶対に濁音が欲しいとか?
高橋 うん。リズムになりそうな音とか、特に破裂音とか、パッとか。秋田弁って《が》が、《んが》ってなりがちなんですよ。それでいいときもあれば、それじゃ《が》に聞こえないこともあって。そこだけ何回も録り直したりしますけど。さっき「ever since」で《つ》が印象的って言ったとき、“秋田弁だからかな?”とかいろいろ考えちゃいましたね。
──秋田弁ってたくさん小さい《っ》が入ってたりするから、リズミカルになりますよね。
高橋 心地よく鳴ってるんですよ。だからリズム的に捉えちゃってるときがあって、秋田弁っぽく言うほうがちょっとハネて歌えたりとか、気持ちよかったりするんですよね。エンジニアの方とかにたまに突っ込まれます。“これ正解なんですかね?”って(笑)。『秋田CARAVAN MUSIC FES』のテーマソングで書かせてもらった「秋田の行事」は全編秋田弁なんですが、歌詞で《へば》とか書いてるんですね。レコーディングの現場でこの発音の正解は僕しかわからないんです。みんなちんぷんかんぷんだったと思いますよ(笑)。