【インタビュー】カバーアルバム第2弾リリースのMs.OOJA、歌唱のこだわりと歌謡曲の魅力を語る。

2022.09.24

取材・文:後藤寛子

こんなにいい曲がもずっと昔からあるんだよって伝えたい

──次の歌謡曲ゾーンで行くと、村下孝蔵さんの「初恋」は唯一男性の曲ですね。

Ms.OOJA 『流しのOOJA』の時は女性曲というしばりを作っていたんですけど、今回は男女関係なく選曲していって、結果的に「初恋」だけになりました。ずっと入れたいと思っていた曲でしたし、リクエストもたくさんあったんです。この曲は母に教えてもらって、実際に村下さんの映像を見たらめちゃくちゃ歌がうまくて、いい声で、衝撃を受けた記憶がありますね。今までも男性曲のカバーをいくつかして歌ってきてますけど、男性曲ならではの楽しさがあるんですよ。キーを変えて変化を出しやすかったりして。

──「初恋」もですが、やっぱり歌謡曲といえば情熱的なラブソングのイメージが強くて。さきほど時代背景を感じる歌詞がおもしろいという話もありましたが、歌う時に歌詞からの影響もありますか?

Ms.OOJA ありますね。たとえば「木綿のハンカチーフ」は、今回のカバーで初めて最後まで歌詞を知ったんですけど、遠距離恋愛という普遍的な物語でありつつ、携帯とかもないからこそお手紙のやり取りだったのかなあとか、「草にねころぶあなたが好きだったの」とか、当時の恋愛観がおもしろいなと思いました。あと、「恋におちて –Fall in love−」とか「時の流れに身をまかせ」は、ちょっとワケありな恋愛の歌詞で、当時けっこう多いんですよね。「恋におちて~」は、ドラマ『金曜日の妻たちへ』の主題歌で、ドラマを観ていた世代にはそのイメージが未だに強いみたいですし。だって、サビの一番いいところで《ダイヤル回して手を止めた》ですよ?(笑) すごくいいなと思って。若い世代はダイヤルの電話を実際に使ったことはないかもしれないけど、レトロな小道具として使ってるアーティストもいますし、逆に新鮮に映るのかもしれないですよね。

──ちなみに、ラブソングを歌う時は曲の世界観に入り込むほうですか?

Ms.OOJA 私はけっこう入り込んでしまうほうですね。レコーディングの時はそうでもないんですけど、ライブで「恋に落ちて~」とか「恋人よ」とかを歌うと、泣きそうになります。普段は歌ってて泣きそうになることはあんまりないんですけど、キネマ倶楽部でのライブでもすごくグッときました。

──もう生きるか死ぬかみたいな恋愛が描かれてますもんね。

Ms.OOJA そうなんですよ。今と重みが違うのは、やっぱり気軽にコミュニケーションが取れる時代ではなかっただろうし、禁断の恋とかだと余計にそうじゃないですか。インスタで相手の現状がわかるとかはないし(笑)。相手が何をしてるのかも、話をするまでわからないような状態で。恋愛でもきっとすごく切ない思いをしてたのかなって、いろいろ想像させられますよね。

──カバーを歌うことで引き出されるものや、新しい発見はありますか?

Ms.OOJA あります。そもそもその当時の世界観や原曲を歌っている方のイメージがありますし、曲によってすごくセクシーだったり、可愛かったり、そこに憑依していくような感覚があるんですよ。歌ってみて初めて“私はこの曲をこういう声で歌うんだ”みたいな発見が毎回あります。特に歌謡曲ではーー今は多様性が求められる時代ですけど、当時は女性は女性らしく、男性は男性らしくみたいな世界観を歌で表現することが多かったんじゃないかなと思っていて。私はその世界観がすごく好きなんです。 色っぽくてかっこいいような、ちょっと含みを持たせたような表現を皆さん歌声でもやられてるんですよね。

──では、歌謡曲をカバーする時のアドバイスや、おもしろさを伝えるとすると?

Ms.OOJA いやいや、アドバイスなんてそんな……(笑)。でも、歌えば歌うほど、名曲たる所以というか、曲のすごさがきっとわかると思うので、若い世代の方にもたくさん歌ってほしいし、聴いてほしいなと思いますね。今はリリースされた時代を問わずいろんな音楽を聴けるじゃないですか。The Weekndがサンプリングした件もそうですし、だからこそ垣根なくジャンルレスに音楽を聴いているんだろうなと思うんですよね。もちろん、どんどん新しくて素晴らしい曲が生まれていますけど、こんなにいい曲がもずっと昔からあるんだよってことを伝えたいです。ずっと歌い継いでいきたい、ベースになる音楽がこんなにたくさんあるということを、ささやかではありますが、私が歌うことで発見や喜びにつながっていけばいいなと思います。まだまだいい曲があるから、もう全部歌い尽くしたいなと思ってます。(笑)。

──カバーシリーズはこれからもずっと続けていくと。

Ms.OOJA ずっとやりたいなと思います。今回選曲していても、まだ私が歌うのは早いと思う曲があったんですよね。やっぱり歌う人によって伝わり方は全然違うと思っていて、歌謡曲は特に大人の人が歌ったほうが伝わる感じがあるんです。だから、私の今の年齢がちょうどいいんじゃないかなと思う曲を選んだし、これからたぶんもっと合う曲も出てくるだろうし。40代、50代になったらどういう曲を歌いたいかも変わってくると思うので、常にトライして行きたいですね。

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