2022年1月9日 @ 日本武道館
取材・文:鈴木 瑞穂(Vocal Magazine Web) 撮影:上溝恭香
2022年1月9日(日)、和楽器バンドが日本武道館にて『和楽器バンド 大新年会2022 日本武道館 ~八奏見聞録~』を開催。大新年会は毎年恒例のベストヒット・エンタテイメントライブであり、2021年に続き2年連続で日本武道館での開催となった。
2022年4月にデビュー満8周年を迎える和楽器バンド。タイトルの“八奏見聞録”にあるように、全国ツアー『和楽器バンド 8th Anniversary Japan Tour ∞ – Infinity – 』で感じてきたエネルギーを届けたいという想い、そしてメンバー8人、和楽器バンドの”今’’の集大成を余すことなく表現した百花繚乱なステージとなった。
本記事では大盛況のうちに幕を閉じた大新年会の様子をレポートする。
“今年一年の祈願をしながら、最高のライブを一緒に作っていきましょう!”(鈴華)
紫色のペンライトに包まれた会場は静かに暗転。SEに「Overture~八奏見聞録~」が流れ、奥深いサウンドがベールに包まれた幕開け前の興奮を助長させる。中央のスクリーンに本公演のタイトルが映し出されると、8人のシルエットがステージ奥のふすまに浮かび上がった。大きな拍手の中、ふすまが開き登場した8人はそれぞれの演奏ポジションへ。
黒流(和太鼓)が“和楽器バンド大新年会!武道館、行くぞ!!”と吠えると同時に「戦-ikusa-」がスタート。神永大輔(尺八)が美しい音色を奏で、そのまま鈴華ゆう子(vo)が艶やかで力強い歌唱で会場を一気に引き込むと、黒流の威勢のよい掛け声も相まって会場の熱が急上昇。町屋(g,vo)がエレキギターで重低音を唸らせ「白斑」へと続き、すさまじい轟音の上でいぶくろ聖志(箏)が凛とした響きを奏でる。《この夜が明けるまで》のフレーズを手を高く挙げながら挑発的な視線で歌う鈴華にはすっかり目を奪われてしまう。
会場に手拍子を呼びかけ、メンバーの力強いコーラスが印象的な「情景エフェクター」、和太鼓とドラムによる三本締めリズムが唸る「起死回生」を続けて披露し、会場はひとつに団結していく。
“新年明けましておめでとうございます。今年一年の祈願をしながら、最高のライブを一緒に作っていきましょう!” と鈴華が伝えると空気は一変、黒流の和太鼓、町屋のアコースティックギターによる温かい音色から和バラード「オキノタユウ」が始まる。ふすまが開いて煌びやかな和柄衣装を身に纏う鈴華が登場し、リフターで上へ掲げられていく。鈴華が優しい歌声で歌い出すと、スモークが立ちこめるステージでは蜷川べに(津軽三味線)、いぶくろ、神永を筆頭にバンド全体で和の音色を作り上げていく。鈴華がサビの高音を力強く歌いあげる。なだらかなビブラートを織り交ぜる完璧な歌い回しは、もはや神秘的な域に達していた。
ジャジーな「シンクロニシティ」ではイントロで鈴華がピアノを披露。ネオンライトに包まれた空間で、鈴華と町屋がツインヴォーカルによる洒落た掛け合いで観客を魅了する。続くミドルテンポの「Starlight」(フジテレビ月9ドラマ『イチケイのカラス』主題歌)では、いぶくろが流れ星のように美しい箏を奏でる上で、鈴華の伸びやかな歌声が武道館の夜空に届きそうなほど高く響きわたった。
和楽器バンドの「今」が凝縮された迫力のステージ
中盤のMCでは、今年の大新年会のカウントを武道館での実施回数と勘違いした亜沙(b)が“3回目になりますね”と答えると“9回目です(笑)。新年早々ボケたのかと思いました。”と鈴華からツッコまれたり、初出しという和楽器バンドカラーの紫が入った今回の衣装をお披露目したりと賑やかな雰囲気に。
結成当時から開催してきた大新年会について“最初は300人が集まらなかった”と語る町屋、2021年に過去最多となる30公演を廻った『8th Anniversary Japan Tour -Infinity-』について“あっという間に終わってしまったんですけど、やってる最中は一生のような感覚だった”と亜沙が語るなど、結成時から現在に至るまでをそれぞれが振り返った。
さらに、『日本伝統芸能文化支援“たる募金”プロジェクト』の第三弾・岐阜和傘への支援について、目録を贈呈したことを報告、改めて募金活動に参加した方々へ感謝の意を伝えていた。
吹雪が舞い刹那な世界観が演出された「細雪」から「Eclipse」へ。冒頭のアカペラでは、鈴華の大きな揺れ幅を持ったビブラートの歌声が、ゆっくりと会場を包み込む。オーケストラの音像の中、真っ直ぐ歌い上げるさまはダークな雰囲気と切なさを感じさせ、静かに胸に突き刺さる。
いぶくろ聖志(箏)/神永大輔(尺八)/黒流(和太鼓)による「Nine Gates」、鈴華ゆう子(舞)/山葵(d)による「嶺上開花」、蜷川べに(津軽三味線)/町屋(エレクトリックシタール)による「河底撈魚」と、スペシャルなセッションを披露したのち、撮影OKのコーナーで披露したのは人気曲「吉原ラメント」。岐阜和傘を持ち、優雅に舞って魅せる鈴華を筆頭に、現在SNSにはメンバーたちの色とりどりの演奏シーンが溢れている。
恒例の「ドラム和太鼓バトル 月打〜GACHIUCHI〜」では、特大の大太鼓が登場し、黒流と“初めて大太鼓を叩く”という山葵が大太鼓とともに“月打”のタイトルの如くリフターで高く掲げられていく。上半身裸で鍛え上げられた肉体を披露しながら、双方から膜を連打する迫力のパフォーマンスに会場は感動と興奮の熱い炎に包まれた。
公演も終盤に差し掛かり、事前に配布されたハリセンを使ったリズムゲームで楽しませた「名作ジャーニー」(NHK Eテレ『あはれ!名作くん』主題歌)、グッズタオルをぶん回し一体感を高めた「セツナトリップ」と続き、さらに会場は熱気を帯びていく。
ラストは津軽三味線の速弾きでスタートした「千本桜」。コブシの効いた光線銃のような鈴華の声は会場を撃ち抜き、津軽三味線、尺八、ギターのソロまわしで勢いが加速していく。山葵の銅羅を合図に転調したラストサビでは、鈴華がパワフルな高音で歌いあげる。銀色のテープが噴射し、音玉が爆発するド派手な演出も相まって、最高潮の盛り上がりが本編のラストを締めくくった。
エンターテインメントを止めずに届け続ける
鳴り止まないアンコールの中、グッズTシャツを着たメンバーが再登場。和太鼓バトルを振り返り、自身の筋肉美を“もう見せないです!(笑)”と照れる黒流や、“リハーサルの時にバチをポーン!と飛ばしまって”と暴露する山葵に“ドン!ドン!ぱすってなってましたよ(笑)”と蜷川がツッコみ、会場は温かいムードに。
“私たちの未来は今の連続で、今この瞬間が最高に幸せであると思えたら、それが積み重なって結果、大きな幸せになるんじゃないかと思ってます。ストレスが大きいこんな時代ですが、私たちがエンターテインメントを止めずに届け続けるので、今を最高のものにするため、今を楽しく、生き抜いていきましょう。今日は満員のお客様の光景が見られて今この瞬間、とっても幸せです。本当にありがとうございます!”
と鈴華が決意と感謝の想いを告げると、会場からは大きな拍手が届けられた。
そして “8人集まって最初に音にした”というボカロカバー「六兆年と一夜物語」を披露。箏と和太鼓によるゆったりとした和のハーモニーから一気に速くなるビート。早口の歌詞と一気に駆け上がる音階を軽々と歌い上げる鈴華。メンバーがステージを駆け巡り観客と心を紡いでいく。
本公演のラスト「暁ノ糸」ではステージから勢いよく炎が吹き出し、黒流、山葵、亜沙、町屋を中心に生み出す重低音で和ロックの世界観に包まれる。サビでは舞扇子をひらひらとさばきながら力強く歌う鈴華に町屋のハモリが迫力を添える。8人8色の音が、それぞれの芯で共鳴し合い壮大なスケールとなって会場へ届けられた。
なお、本公演の様子は、2月27日(日)にWOWOWプラスでテレビ初独占放送される。こちらもぜひチェックしてほしい。
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セットリスト
『和楽器バンド 大新年会2022 日本武道館 ~八奏見聞録~』2022年1月9日(日)東京・日本武道館
00. Overture〜八奏見聞録〜
01. 戦-ikusa-
02. 白斑
03. 情景エフェクター
04. 起死回生
05. オキノタユウ
06. シンクロニシティ
07. Starlight
08. 細雪
09. Eclipse
10. Nine Gates
11. 嶺上開花
12. 河底撈魚
13. 吉原ラメント
14. ドラム和太鼓バトル 月打〜GACHIUCHI〜
15. 名作ジャーニー
16. セツナトリップ
17. 千本桜
<ENCORE>
18. 六兆年と一夜物語
19. 暁ノ糸
番組情報
『和楽器バンド 大新年会2022 日本武道館 ~八奏見聞録~』
2022年2月27日(日)19:00~
https://www.wowowplus.jp/program/episode.php?prg_cd=CIIDM21066
収録日:2022年1月9日
収録場所:東京 日本武道館