客電が暗転し、青い光に包まれた。ゆったりとしたバンド・サウンドが奏でられ、宮沢和史、夏川りみ、大城クラウディアが登場。アルバム収録曲の「島々清しゃ」を夏川が透き通るクリアな声で歌い出し、宮沢がハモリで彩りを添え、主旋律のバトンは大城、宮沢へと繋がる。そのままメドレー・アレンジで「芭蕉布」まで披露すると、会場はじんわりと沖縄の温かい空気に包まれた。

“みなさんこんにちは。コロナでまだまだ気の抜けない中、こんなにたくさんの人が渋谷に来てくれて本当に嬉しく思います”と宮沢の挨拶から始まり、夏川、大城もそれぞれの想いを伝える。“（宮沢）今日は３人が主役というよりは沖縄から持ってきた曲たちが主役です。沖縄の民謡や、沖縄にまつわる曲たちを集めました”とコンサートのコンセプトが語られ、これから披露されるステージへの期待が高まっていく。“（宮沢）トップバッターはりみに任せます”とバトンを託し、舞台は夏川のソロ・ステージへ。

夏川が三線を構え「涙そうそう」のイントロを奏で始め、青い大空のように澄みわたる歌声が会場の天井に突き抜けていく。２番の歌詞はウチナーグチ（沖縄弁）で歌い上げ、歌唱にも一層力がこもるが、いったい彼女の高音の限界はどこにあるんだろうと不思議でならない。

“盛り上がっていこうね！”と可愛らしく呼びかけ「五穀豊穣」を披露。サンバ調の元気で豪華なバック・サウンドにも決して埋もれない夏川の確固たる歌声が印象的だった。

“トップバッターってイヤね、ふふふ”なんて冗談を言いながら再び三線を構え、「あがろーざ節」、「童神」と沖縄の子守唄を続けて披露。「あがろーざ節」は、夏川が生まれた石垣島の古典民謡。三線のシンプルな音色が夏川の吹き抜けるような爽やかで優しい歌声を際立たせる。スローテンポに“突吟”（沖縄民謡のこぶし）を入れながらブレスなしのロングトーンで歌い上げるさまは実に見事。赤ん坊をあやしているような、心地よい歌声の毛布に会場全体がくるまれる。

続いては大城のソロ・ステージ。アルゼンチン出身の沖縄県系２世で、幼い頃から沖縄音楽に触れてきたとの紹介が宮沢のナレーションにより添えられた。代表曲「美しい島」では細かいビブラート、儚さを感じさせるファルセットで、力強くも繊細な歌い回しを披露。続く宮古島の民謡「與那武岳金兄小（ユナンダキカニズザガマ）」は、大城が３拍子の三線を弾くとオーディエンスは手拍子を添え、細かく遷移するメロディに沖縄民謡の節回しを軽やかに乗せた巧みなヴォーカル表現で会場を楽しませた。爽快感あふれるサウンドの「ALAS」は、スペイン語で“翼”を意味するとの通り羽ばたくような伸びやかで美しい高音を響かせた。

そして青いギターを持った宮沢和史が登場。“沖縄愛にあふれたバンド・メンバーたちです”と、それぞれの沖縄との縁とともに紹介していく。続く「ダイナミック琉球」では宮沢のギターが静寂を切り開き、大城のヴォーカルがたたみかける。サビの宮沢と大城の力強いハモリが盛り上がりを加速させ、最後は“ヨイサー！”という沖縄らしい元気な掛け声で観客に光を届けた。

そのままソロ・バトンを受け継ぎ、“僕の今の音楽性は沖縄との出会いがあったからと自覚しています”と語る宮沢。 “今から30年前の葛藤していた時に生まれた曲“という「からたち野道」は、ピアノのどこか懐かしい旋律に乗せ、息をたっぷり込めた太い声と、緩急のある歌い回しが“宮沢節”を感じさせる。

続いて夏川を迎え、“太陽みたいな存在のりみに歌ってもらうのがいつも楽しみ”と彼女への提供曲「愛よ愛よ」をデュエットで披露。サビの《愛よ 愛よ 愛しい人よ》の２人のハーモニーは最高に美しく、会場に艶やかな音色の華を咲かせた。沖縄本島の曲という「南洋小唄」では宮沢が三線を構え、先ほどまでの“宮沢節”とはまったく異なる、ガツンと民謡こぶしを効かせた堂々たる“沖縄節”で歌唱表現の幅を魅せつけた。

「ちむぐり唄者」では夏川と交代で登場した大城が“セイッ！セイッ！”と沖縄ならではの合いの手を入れ、コンガの愉快なリズムに合わせオーディエンスもノリノリだ。続いて“20代の時に書いた曲を50代の今、歌うと心にくるものがある”と語ると雰囲気は一変し「あの海へ帰りたい」を丁寧に歌い始めた。サビで魅せる迫力のある声量と、心のこもったステージング表現は圧巻で、“THE BOOMの元ヴォーカリスト・宮沢和史”をはっきりと想起させた。

コンサートも終盤に差しかかり、ステージには宮沢、夏川、大城全員が登場。三板の音色がアクセントとなった「ハリクヤマク」、ロック×沖縄民謡のアップチューン「南へ」を立て続けに披露し、一気に会場を盛り上げる。

“（夏川）あっという間に最後の曲です。ここで、スペシャル・ゲストを紹介します。琉球國祭り太鼓の皆さんです！”と６人の太鼓メンバーが登場。沖縄エイサーといえば祭り太鼓。“琉球國祭り太鼓”は世界中に支部があり、大城はアルゼンチン支部の初期立ち上げメンバーだという。“（宮沢）この２年間で、皆の心には傷ができて、いつ光が見えるかもわからないけど、でも願うこと祈ることがきっと大切です。この先もずっと幸せであるように、この曲をお届けしたいと思います”。

ピアノと三線がゆっくりと「島唄」のイントロを奏でる。宮沢の歌い出しに大地を這うような太鼓の音色が迫力を冗長させる。続いて夏川がメロディを1オクターブ高く歌い上げ彩りを加えると、大城の力強い歌声へと繋がった。３人の歌声、ギターのリフ、太鼓の音頭、“イーヤーサーサー！”という掛け声、すべて掛け合わさり壮大なスケールの響きとなってオーディエンスへ真っ直ぐ届けられた。

アンコール１曲目は、このバンド・メンバーのレコーディングで作ったというニュー・アルバムから、リード曲の「沖縄からの風」。オーディエンスの手拍子に乗り、３人３種の歌声から生まれる色鮮やかなハーモニーが会場全体に響きわたる。

“（宮沢）りみはいろいろなところで島唄を歌ってくれて、クラウディアはアルゼンチンで（島唄を）歌った時にコーラスで参加してくれて今までずっと応援してきました”と、「島唄」が素敵な出会いと沖縄の繋がりをもたらしたことが語られた。もう一曲いきますか！と言うと、再び太鼓メンバーを迎えた。“（宮沢）沖縄はウチナーンチュ（沖縄人）の結束が強い。でも、僕みたいな他県の人やさまざまな出身の方も含め沖縄を愛する人全員、これをひとつの言葉にしたかった。聴いてください、「シンカヌチャー」”

銅鑼の音色が高らかに鳴り響く。宮沢、夏川、大城全員が三線を構えた様子から強いエネルギーと気迫が伝わってくる。スポットライトの下、宮沢が力強く歌い出した。太鼓が彩りを加え、バンド・メンバーも一緒に“スィッ！スィッ！スィッ！スィッ！”と合いの手を入れる。太鼓に負けじと腹から発せられる３人の歌声が、熱く結束したひとつの“歌魂”としてオーディエンスの胸に突き刺さる。会場全体のボルテージも上昇し続け、最後は全員高らかにこぶしを挙げてフィナーレ。会場からはあふれんばかりの拍手が送られた。

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セットリスト

『沖縄からの風コンサート2021 〜宮沢和史、夏川りみ、大城クラウディアによるスペシャルコンサート〜』
2021年11月24日（水）＠LINE CUBE SHIBUYA（渋谷公会堂）
01. 島々清しゃ〜芭蕉布 メドレー ／ 宮沢和史、夏川りみ、大城クラウディア
02. 涙そうそう ／ 夏川りみ
03. 五穀豊穣 ／ 夏川りみ
04. あがろーざ節 ／ 夏川りみ
05. 童神 ／ 夏川りみ
06. 美しい島 ／ 大城クラウディア
07. 與那武岳金兄小（ユナンダキカニズザガマ）／ 大城クラウディア
08. ALAS ／ 大城クラウディア
09. ダイナミック琉球 ／ 大城クラウディア、宮沢和史
10. からたち野道 ／ 宮沢和史
11. 愛よ愛よ ／ 宮沢和史、夏川りみ
12. 南洋小唄 ／ 宮沢和史、大城クラウディア
13. ちむぐり唄者 ／ 宮沢和史、大城クラウディア
14. あの海へ帰りたい ／ 宮沢和史、大城クラウディア
15. ハリクヤマク ／ 宮沢和史、夏川りみ、大城クラウディア
16. 南へ ／ 宮沢和史、夏川りみ、大城クラウディア
17. 島唄 ／ 宮沢和史、夏川りみ、大城クラウディア
EN1. 沖縄からの風 ／ 宮沢和史、夏川りみ、大城クラウディア
EN2. シンカヌチャー ／ 宮沢和史、夏川りみ、大城クラウディア

リリース情報

＜収録曲＞　
01. 島々清しゃ ／ 宮沢和史、夏川りみ、大城クラウディア
02. 沖縄からの風（新曲） ／ 宮沢和史、夏川りみ、大城クラウディア
03. ダイナミック琉球 ／ 大城クラウディア
04. スーキカンナー（沖縄民謡） ／ 宮沢和史 全演奏（インスト)
05. 島唄 ／ 宮沢和史、夏川りみ、大城クラウディア
06. 鷲ぬ鳥節（八重山民謡） ／ 夏川りみ、大城クラウディア
07. 月ぬ美しゃ（八重山民謡) ／ 宮沢和史 全演奏（インスト）
08. 愛よ愛よ 〜子守唄バージョン〜 ／ 夏川りみ with 宮沢和史
09. 與那武岳金兄小（宮古島民謡） ／ 大城クラウディア
10. 伊良部トーガニー（宮古島民謡） ／ 宮沢和史 全演奏（インスト）
11. 美しい島 ／ 大城クラウディア
12. 南洋小唄（沖縄民謡） ／ 宮沢和史
13. シンカヌチャー ／ 宮沢和史、夏川りみ、大城クラウディア
14. 芭蕉布 ／ 宮沢和史、夏川りみ、大城クラウディア

＜予約・購入特典＞
・対象店舗限定特典：ポストカード
・Amazon限定特典：メガジャケット
・楽天ブックス限定特典：クリアファイル（A4サイズ）
・よしもとネットショップ限定特典：アクリルキーホルダー

関連リンク

宮沢和史　OFFICIAL SITE
夏川りみ　OFFICIAL SITE
大城クラウディア　OFFICIAL SITE