佐藤千亜妃、多彩な“声”とこだわりが光る『かたちないもの』東京公演

2021年11月18日 @ 東京 Zepp Haneda
取材・文:田代 智衣里(Vocal Magazine Web)
撮影:Shun Komiyama

佐藤千亜妃が11月18日、Zepp Hanedaにて『佐藤千亜妃 “KOE” Release Tour 2021「かたちないもの」』東京公演を開催した。佐藤は約2年ぶりの2ndフル・アルバム『KOE』を今年9月にリリース。前作以前から構想を練っていた“声”をテーマに、フジテレビ系木曜劇場『レンアイ漫画家』のドラマ主題歌「カタワレ」や、映画タイトルと同名の主題歌『転がるビー玉』など、全12曲を収録している。

本作を引っ提げ開催された『佐藤千亜妃 “KOE” Release Tour 2021「かたちないもの」』は、真壁陽平(g)、木下哲 (g)、種子田健 (b)、柏倉隆史(d)、宗本康兵(k)とともに、楽曲によって編成を変えて行なわれた。

ブルーの照明が漂う暗がりのステージに、メンバーがひとりずつ登場。SEが鳴り止むと、深いブレス音と同時に佐藤がスポットライトに照らされ、アカペラで歌い出す。

《Adjustな世界を泳ぐ泳ぐ泳ぐ/あの日夢に見たような景色じゃなくとも/場違いな事態を繋ぐ繋ぐ繋ぐ/トキメキに似たような配分で良いでしょう/そうでしょう》

『KOE』1曲目に収録され、CD音源でもアカペラの歌い出しが強烈なインパクトを与える「Who Am I」である。ブレスのたびに聴こえる深い息づかいが生の歌声の迫力を教え、“声”だけが会場に響きわたった。佐藤が歌い終えると一瞬無音に……。そこに息を揃えたバンドが入り、東京公演の始まりを彩った。

「rainy rainy rainy blues」では観客の手拍子も加わり、明るく抱きしめるような温かい空間に。《rainy rainy rainy rainy blues/かたちあるもの 信じすぎていた/rainy rainy rainy rainy blues/かたちないもの たぐり寄せて生きる》という歌詞が、ツアーのテーマにもなっている。

“音楽ってかたちがないんですけど、最後までそのかたちないものを楽しんでもらえたら嬉しいなと思います”と語り、「甘い煙」へ。ミラーボールが回り、メロウな世界に誘なう。続けて「Summer Gate」、「You Make Me Happy」、「リナリア」を演奏した。

“音楽を介してお互いのエネルギーを交換しながら、明日からまた頑張ろう!と思えるような温かいライブにしていけたら”と観客へのメッセージを届けると、椅子に座り、ドラム、ベース、オケ出しで「Love her…」を歌唱。シルキーな高音と横幅のある低音の成分がより一層映える小編成は、さまざまな形態で歌を届ける佐藤のツアーの醍醐味でもある。アウトロで静かにマイクスタンドが置かれ、バンド・メンバーがひとりずつステージに戻ると、佐藤は立ち上がり、「棺」、「声」、「愛が通り過ぎて」を披露した。

“岩手の中学時代の同級生から「放課後の帰り道を思い出してグッときた」とDMが届いて嬉しかった”というエピソードを語ると、「橙ラプソディー」を弾き語りで演奏する。ファルセット多めの柔らかい歌唱に、観客はそれぞれの懐かしい風景を思い出すようだった。

“次の曲はキーボードの宗本さんと2人でお届けします。普段バンドでやっている曲をアコースティック・アレンジにして、しっとりとお届けしたいと思います”そう言って披露したのは、「空から落ちる星のように」。さらに、静かにバンド・メンバーがステージに戻ると、佐藤はギターを持ち、スタンドマイクで「転がるビー玉」を演奏する。

エレキ・ギターの歪んだ音が会場の空気を一変させると、観客が力強い手拍子で加わる。“盛り上がっていきたいと思います!”そう言ってハンドマイクに持ち替え、「STAR」を歌唱。《ひとつだけ たったひとつだけ》で佐藤が人差指を高く掲げれば、観客もそれに応える。続けて「ランドマーク」を演奏し、アウトロで改めてバンド・メンバーを紹介してから佐藤がフェイク。後方から光が差し、拳を上げた。

“熱いものを届けたいと思って歌ってここまで来ました。みなさんどうですか。去年から今年にかけてつらい場面もあったと思うんですけど、自分が音楽を作ることでちょっとだけ元気が出たり、人の歌を聴いて、諦めそうだったけどもう少し明日まで、明後日まで、来週まで、あと1ヵ月……ちょっとずつでもいいから日々を引き伸ばしていこうって思えたのは音楽のおかげだったと思っていて、そういう意味で音楽に救われた時期だったなと思います。そして自分が音楽を作って届けることで、みなさんが聴いてくれて、こうして会場に足を運んでくれるわけじゃないですか。一人ひとりの気持ちが嬉しくて、今日まで頑張ってこれたなと思います。本当にありがとうございました”

佐藤の言葉に、観客は拍手を贈る。

“私にとって音楽が人生の相棒というか、カタワレなんですけど、それを受け取ってくれるみなさん一人ひとりもかけがえのないカタワレだと思っています。そんな気持ちを込めて、最後の曲、大事に届けて帰りたいと思います”

そう言って「カタワレ」を披露すると、ポップチューンが空間を華やかに塗り替える。落ちサビではひとつひとつの言葉をそっと置くように繊細に歌い、一曲の中でも表現に沿ってマイクの距離や角度を変化させていく姿からも、“声”を届けることへの強い思いが感じ取れる。

“みんなありがとうー! 今日を忘れないからね! またどこかで会いましょう! ”感謝の気持ちを伝えると、佐藤は颯爽とステージをあとにした。

アンコールではグッズTシャツで登場し、ギターを抱えマイクスタンドの前に立った。“本当は10曲くらいやってもいいんですけど、1曲に100曲分込めて届けたいと思います。音楽の前ではいろんな気持ちを隠さないで表現してもいいんだよって気持ちを込めて、この曲を届けたいと思います”

そう言って最後に、「Bedtime Eyes」を披露した。空気を多く含んだ歌い方は柔らかな質感で、歌声にやさしく包まれるようである。最後まで、さまざまな表情を持った“声”を味わうライブとなった。メンバーと並んで挨拶をする場面では、マイクを通して“ありがとうございました”の声を届けた。彼女の“声”に対する姿勢を、これからも追っていきたいと思う。

公演情報

『佐藤千亜妃 “KOE” Release Tour 2021「かたちないもの」』
2021年11月18日(木)東京 Zepp Haneda
<セットリスト>
01. Who Am I
02. rainy rainy rainy blues
03. 甘い煙
04. Summer Gate
05. You Make Me Happy
06. リナリア
07. Love her…
08. 棺
09. 声
10. 愛が通り過ぎて
11. 橙ラプソディー
12. 空から落ちる星のように
13. 転がるビー玉
14. STAR
15. ランドマーク
16. カタワレ
EN. Bedtime Eyes

プレイリスト情報

『佐藤千亜妃 “KOE” Release Tour 2021「かたちないもの」』
Apple Music、Spotify、LINE MUSICのセットリストプレイリストはこちら

配信情報

佐藤千亜妃 “KOE” Release Tour 2021「かたちないもの」
11月18日(木)東京 Zepp Hanedaで行われた公演の模様を
エンタメサイト「uP!!!」にて独占配信決定

<配信期間>
2021年12月18日(土)12:00〜2022年1月16日(日)11:59まで

<視聴チケット販売期間>
2021年12月18日(土)12:00〜2022年1月16日(日)10:00まで
※チケット販売ページは後日オープン

<チケット代>
auスマートパスプレミアム会員:2,000円(税込)
一般:2,500円(税込)
詳細はこちら

リリース情報

2ndフル・アルバム『KOE』
2021年9月15日リリース
初回限定盤(CD + Blu-ray)
UPCH-29408 / 6,380円(税込)
※映像のみプレイパス(R)対応
<Blu-ray Disc 収録楽曲(初回限定盤のみ)>
01. PLANET
02. Summer Gate
03. Lovin’ You
04. You Make Me Happy
05. リナリア
06. 橙ラプソディー
07. 転がるビー玉
08. 面
09. Spangle
10. lak
11. 空から落ちる星のように
12. 大キライ
13. キスをする
14. 春と修羅
15. 夏の夜の街

通常盤(CDのみ)
PCH-20592 / 3,300円(税込)
<CD収録曲>
01. Who Am I
02. rainy rainy rainy blues
03. 声
04. カタワレ(フジテレビ系4月期木曜劇場『レンアイ漫画家』主題歌)
05. 甘い煙
06. 転がるビー玉(「NYLON JAPAN」創刊15周年プロジェクト映画『転がるビー玉』主題歌)
07. リナリア
08. 棺
09. Love her…
10. 愛が通り過ぎて
11. ランドマーク
12. 橙ラプソディー

関連リンク

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